第246話
【物語は10年前ダンジョンが現れる当日に戻る】
【ダンジョンが現れて2時間経過】
スレッドタイトル:【祝】クラス実装!俺たちの冒険が今始まる!【職業:無職】 Part.2
1: 名無しの最初の戦士
スレ立て、乙。
いやー、マジでヤバいな、この世界。
さっきまで、ただのフリーターだった俺が、今や「戦士」だぜ?
しかも、レベル2。
なんかもう、無敵な気がしてきた。
2: 名無しの最初の魔術師
1
分かる。
俺も、さっきまでただの大学生だったのに、今じゃ【火の矢】を操る魔術師だ。
人生、何が起こるか分からんな。
3: 名無しの最初の盗賊
1 >>2
お前ら、浮かれてるところ悪いが、油断はするなよ。
さっき、調子に乗ってゴブリン3体に突っ込んだら、死にかけた。
確かに、動きは速くなった。だが、HPは紙みてえにペラペラだ。
盗賊は、ヒット&アウェイが基本だな、これ。
4: 名無しのゲーマー
うおお、もうビルド考察始まってるのかよ!
仕事早すぎだろ、お前らwww
俺も、早く会社サボってゲートに突入してえ!
5: 名無しの社畜
4
やめとけ。絶対に、やめとけ。
明日、部長に殺されるぞ。
そのあまりにも平和な、しかしどこまでもこの世界の黎明期を象徴するかのような会話。
それが、唐突に一つのあまりにも異質な書き込みによって断ち切られた。
投稿主は、あの最初の戦士だった。
121: 名無しの最初の戦士
…おい、お前ら。
ちょっと、ヤバいもんを見つけちまったかもしれん。
123: 名無しのゲーマー
121
なんだ、どうした?
また、レベルアップしたのか?
125: 名無しの最初の戦士
123
いや、違う。
なんか、さっきから目を閉じると、頭の中に変なのが見えるんだよ。
128: 名無しのニート(28)
125
ついに、頭イカれたかwww
まあ、無理もねえよな。こんな非現実的なことばっか起きてりゃよwww
131: 名無しの最初の戦士
128
うるせえな。
マジなんだよ。
なんて言うか…星空みてえなのが見えるんだ。
それも、ただの星空じゃねえ。
無数の星々が、光の線で結ばれて、なんか巨大な星座みてえなのをいくつも作ってる。
すげー、綺麗なんだが…。
これ、幻覚じゃねえよな…?
そのあまりにも詩的な、そしてどこまでも不可解な報告。
それに、スレッドがざわめいた。
『星空?』『なんだ、それ?』『電波か?』
だが、そのざわめきを肯定するかのように。
他のプレイヤーたちからも、同じような報告が上がり始めた。
142: 名無しの最初の魔術師
…おい、俺も見えるぞ、それ。
なんだこれ…。
集中して、その星の一つを見つめてみると、なんか細かい文字が浮かび上がってくる…。
『最大MP上昇5%』…?
148: 名無しの最初の盗賊
こっちもだ!
『近接ダメージ上昇16%』って書いてある!
なんだよ、これ!もしかして、これを自由に取れるってことか!?
そのあまりにも衝撃的な仮説。
それに、スレッドの全ての住人が息を呑んだ。
そして、あの最初の戦士が、その仮説を裏付けるかのような一つの重要な情報を投下した。
165: 名無しの最初の戦士
…ああ、そうかもしれん。
思い出してみろ。
俺たち、レベルアップした時、なんか貰っただろ。
『パッシブポイントが1ポイント貰えた』って、俺、言ったよな?
もしかして、そのポイントを使って、この星座の星を解放していくんじゃねえか…?
そのあまりにも的確な、そしてどこまでもゲーム的な推理。
それに、スレッドは爆発した。
『うおおおおおお!マジかよ!』
『パッシブスキルツリーだ!間違いねえ!』
『やべえ!やべえよ、この世界!どこまで俺たちを楽しませてくれるんだ!』
熱狂。
興奮。
そして、無限に広がる未来への期待感。
だが、その熱狂の中で。
一人の冷静なユーザーが、一つの本質的な疑問を投げかけた。
188: 名無しの現実主義者
…待て。
もし、そうだとしたら。
そのポイントは、どうやって手に入れるんだ?
レベルが上がったら貰えたってことは…。
もしかして、100レベルまで1ポイントずつ貰えるってことか?
いや、まだ分からないぞ。2レベルごとかもしれないし、あるいはもう貰えないのかもしれない。
気軽に振るのは、よせ。
後で、後悔することになるかもしれんぞ。
そのあまりにも冷静で、そしてどこまでも正しい指摘。
それに、浮かれていたスレッドの空気が、少しだけ引き締まった。
そうだ。
まだ、何も分かっていないのだ。
この世界の、本当のルールを。
その張り詰めた空気。
それを断ち切ったのは、一つの全く別の角度からの衝撃的な報告だった。
投稿主は、鑑定スキルに目覚めたあの男だった。
255: 名無しの選ばれし者
お、前ら…!
ヤバい!ヤバいぞ!
さっき、機動隊がゴブリンからドロップした、あの紫色の石。
あれを、鑑定してみたんだが…。
とんでもねえもんだった…。
テキスト、そのまま書くぞ。
震えんなよ。
そのあまりにも思わせぶりな前置き。
それに、スレッドの全ての視線が集中した。
そして彼は、その世界の理を初めて言語化した、その神のテキストを投下した。
256: 名無しの選ばれし者
名前: F級魔石
レアリティ: コモン
種別: 素材 / エネルギー源
効果テキスト:
この石は、術者の「意志」に呼応し、その内に秘められた純粋な魔力エネルギーを、様々な現象へと変換する奇跡のエネルギー源である。
熱変換: 術者の意志に応じて、熱を発生させることができる。
例:約1リットルの水を、瞬時に沸騰させる程度の熱量。
電力変換: 術者の意志に応じて、電力を発生させることができる。
例:スマートフォンのバッテリーを、一瞬で満充電にする程度の電力。
物理干渉: 術者の意志の強さに応じて、軽い物体を宙に浮かせたり、動かしたりすることができる。
ただし、内包する魔力は有限であり、一度その力を使い果たした魔石は、ただの石ころと化す。
フレーバーテキスト:
神が天から火を盗んだプロメテウスを、罰したように
我々もまた、この地底から盗み出した新たな『火』によって、罰せられるのだろうか。
いや、違う。
これは、罰ではない。
次なる時代へと進むための、祝福だ。
静寂。
数秒間の、絶対的な沈黙。
スレッドの全ての動きが、ぴたりと止まった。
誰もが、そのあまりにも荘厳で、そしてどこまでも詩的なテキストを、ただ呆然と見つめていた。
そして、次の瞬間。
スレッドは、これまでのどの熱狂とも比較にならない、本当の「爆発」を起こした。
『なんだこれ…』
『なんだこれ…なんだこれ…』
『魔石って…ただの換金アイテムじゃなかったのかよ…!』
『エネルギー源…?スマホが充電できる…?水を沸かせる…?』
『おい、これマジなら、世界のエネルギー問題、全部解決するんじゃねえか…!?』
『やべえ…。やべえよ…。俺たち、とんでもねえ時代に生きてる…!』
そのあまりにも巨大な、そしてどこまでも希望に満ちた発見。
それに、スレッドはもはや制御不能の熱狂の坩堝と化していた。
だが、その熱狂の中で。
いくつかの冷静な、そしてどこかズレたツッコミが投下された。
351: 名無しの文学青年
…いや、それもそうなんだが。
俺が気になってるのは、そこじゃねえ。
このフレーバーテキスト。
オサレすぎんだろ…。
355: 名無しのラノベ主人公志望
351
分かる。
めちゃくちゃ、分かるぞ。
『神が天から火を盗んだプロメテウスを罰したように』だと?
なんだ、この中二心を的確に抉ってくるセンスは。
誰が考えてるんだよ、この文。
最高かよ。
362: 名無しの現実主義者
351 >>355
お前ら、そこかよwwwwwwwwwwwwwwww
世界のエネルギー革命が起ころうとしてるその瞬間に、お前らが気にしてるのは、そこなのかよwwwwwwwwwwwwwwww
そのあまりにも平和な、そしてどこまでもオタク的なやり取り。
それに、スレッドはこの日一番の温かい笑いに包まれた。
恐怖と、混沌と、そして無限の可能性。
その全てがごちゃ混ぜになった、この奇跡の一日。
祭りは、まだ始まったばかりだった。
その輝かしい未来の始まりを、誰もが祝福していた。