第189話
【SeekerNet 掲示板】
スレッドタイトル:【祝・神ドロップ】雷帝・神宮寺猛、マジで神だった【F~C級全員救済へ】 Part.5
1: 名無しのF級スライムハンター
うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!
見たか、お前ら!さっきのギルド公式の緊急速報!
俺、信じられなくて5回くらい見直しちまったよ!
雷帝・神宮寺猛がドロップしたあの【星霜の道標】の売却益…!
全世界の俺たちみたいなF級からC級までの、全ての冒険者の支援に使われるってよ!
マジかよ!夢じゃねえよな!?
2: 名無しのE級ゴブリンスレイヤー
1
俺も今、手が震えてる…。
マジで神だろ、あの人…。
さす猛!さす猛!
3: 名無しのD級スケルトンナイト
1
落ち着け、新人。だが、気持ちは分かる。
俺も、思わず酒場で叫んじまった。
とんでもねえニュースだ、これは。
4: 名無しのF級ゴブリンの耳コレクター
ええっと、すみません…。
それって、具体的にどういうことなんですか…?
俺、さっきまでダンジョンに潜ってて、まだニュース見れてなくて…。
5: 名無しのC級ヒーラー
4
新人ちゃん、おいで。優しく教えてあげるわ。
いい?まず、雷帝様がとんでもないお宝を拾いました。
それをオークションにかけたら、40兆円っていうもはや意味の分からない金額で売れる予定。
そして雷帝様は、その売却益の大部分を使って一つの巨大な基金を設立することを、ギルドを通じて発表したの。
その基金の目的は、ただ一つ。
「F級からC級までの全ての若手、中堅冒険者の活動支援」。
つまり、私達全員がその恩恵を受けられるってことよ!
6: 名無しのF級ゴブリンの耳コレクター
5
よ、40兆円…!?
そ、それで俺たちも何か貰えるんですか…!?
7: 名無しのC級ヒーラー
6
ええ。まだ正式な発表じゃないけど、すでに具体的な支援案もいくつか出てるみたい。
その中でも一番有力なのが、
「返済義務あり、ただし期間は無制限、利子なし。最低一口100万円からの大規模な活動支援ローン」
よ!
8: 名無しのF級ゴブリンの耳コレクター
7
ひゃ、ひゃくまんえん!?!?!?
9: 名無しのE級ゴブリンスレイヤー
8
やべええええええええええ!!!!!!
100万!?マジで!?
俺、今月の家賃払ったら財布の中身3000円だぞ!?
100万あったら、人生変わる!
10: 名無しのF級スライムハンター
俺もだ!
100万あったら、ジェムのクオリティ上げて効率と火力アップ出来るじゃん!やったー!
今まで、クオリティ0%のヘビーストライクでポカポカ殴ってた俺の時代が、ついに来るのか!
Q20のヘビーストライクとか、夢のまた夢だと思ってたのに!
11: 名無しのD級スケルトンナイト
10
分かる!分かるぞ、その気持ち!
俺は、装備を一新するぜ!
今のD級ダンジョンで拾ったガラクタレアじゃなくて、A級探索者がお古で流してくれたちゃんとしたレア装備一式!
武器、盾、頭、胴、手、足、指輪、首輪、ベルト!
全部揃えたって、100万ならお釣りがくるだろ!
これなら、B級まで一気にいける時代が来るんじゃないか!?
12: 名無しのC級魔術師
11
いや、マジでそれな。
俺、ずっと欲しかったユニークワンドがあるんだよ。
マーケットで80万くらいするやつ。
手が出なくて、ずっと指くわえて見てるだけだったんだが…。
これなら、買える…!
ついに俺のファイアボールが、本物のメテオになる時が来た…!
13: 名無しのF級冒険者
祭りだ…!これは、祭りだ!
雷帝!ありがとう!
一生ついて行きます!
14: 名無しのC級ヒーラー
ふふっ、みんな本当に嬉しそうね。
私も、嬉しいわ。
これで、パーティの装備も少しはマシになるかもしれないし。
いつも、タンクさんがボロボロになってるの見てて辛かったから…。
15: 名無しのB級タンク
14
…聞いてるぜ。
だが、まあ、感謝しかねえな。
これで俺も、あの忌々しい出血対策の指輪、買えるかもしれん。
いつも、ヒーラーちゃんに迷惑かけて申し訳なかったからな。
16: 名無しのC級ヒーラー
15
そんなことないですよ!
でも、本当に良かった…!
スレッドは、そんなそれぞれの階級の、それぞれの立場の探索者たちによる喜びと感謝、そして未来への希望に満ちた言葉で溢れかえっていた。
それはまさに、「祭り」。
一人の英雄がもたらした、奇跡の夜だった。
だが、その浮かれたお祭りムードに冷や水を浴びせる、冷静な声があった。
投稿主は、いつものようにこの世界の酸いも甘いも噛み分けた、百戦錬磨のベテランたちだった。
155: 元ギルドマン@戦士一筋
…まあ、落ち着けお前ら。
気持ちは分かる。俺も若い頃にこんなことがあったら、浮かれて三日三晩、酒を飲んでいただろう。
だがな、一つだけ忘れるな。
これは施しではない。「投資」であり、「貸付」だ。
そこには、**「返済の義務がある」**という厳然たる事実が存在する。
そのあまりにも現実的な指摘。
それに、スレッドの空気がわずかに引き締まる。
156: 名無しのD級スケルトンナイト
155
で、でも、無利子で無期限なんですよね?
だったら、実質貰えるのと変わらないんじゃ…
157: 元ギルドマン@戦士一筋
156
甘えるな、新人。
確かに、条件は破格だ。雷帝とギルドの温情に、感謝するべきだろう。
だがな、考えてみろ。
この100万円をどう使うか。
その「使い方」こそが、お前たちの未来を天国と地獄へと分けることになる。
158: ハクスラ廃人
157
ギルドの旦那の言う通りだぜ。
お前ら、その100万で何を買う?
さっきD級の骨野郎が言ってたみてえに、B級に挑戦するための装備一式か?
はっ、笑わせるな。
装備だけB級になったところで、中身がD級のままなら、B級の雑魚の一撃でお前はミンチだ。
159: ベテランシーカ―
158
ええ。ハクスラ廃人さんの言う通り、あまりにも危険な賭けですね。
私が、お勧めするのはもっと堅実な未来への投資です。
例えば、F級の彼が言っていたように、スキルジェムの「クオリティ」を上げること。
Q20の主力スキル。
それは、お前たちがB級、A級とステージを上がっていっても、決して腐ることのない一生モノの「資産」となります。
あるいは、パッシブスキルポイントをギルドから購入するという手もある。
目先の装備にその貴重な100万円を使うのは、あまりにも愚かな選択と言えるでしょう。
そのあまりにも正しく、そして説得力のあるアドバイス。
それに、スレッドの若者たちはぐうの音も出なかった。
『うっ…』『確かに、その通りだ…』『危うくB級に特攻して死ぬところだった…』
そんな反省の声が、並び始める。
165: 名無しのA級(通りすがり)
まあ、そういうことだ。
雷帝がお前たちに与えてくれたのは、ただの金じゃない。
「成長するための時間と機会」だ。
その本当の意味を、理解しろ。
その100万をどう使い、どう成長し、そしてどうやって自らの力でその借りを返すのか。
それが、お前たち一人一人に課せられた「宿題」だ。
まあ俺は、傍から高みの見物をさせてもらうがな。
その突き放したような、しかしどこか愛のある言葉。
それに、スレッドの若者たちは深く、そして静かに頷いていた。
お祭り騒ぎは、終わった。
だが、彼らの心の中には、新たな、そしてより力強い炎が灯っていた。
172: 名無しのC級ヒーラー
…なんだか、身が引き締まる思いだわ。
そうよね。私達、ただ浮かれてるだけじゃダメよね。
このチャンスを、絶対に無駄にしちゃいけない。
175: 名無しのD級スケルトンナイト
172
ああ、その通りだ。
俺、決めた。
まずは、B級への挑戦は保留する。
この100万で、俺のメインスキルである【サイクロン】のクオリティを20まで上げる。
そして、残った金で少しだけマシな盾を買う。
地道に、だが確実に強くなってみせる。
180: 名無しのF級スライムハンター
175
俺もだ!
B級なんて、まだ早い!
まずは、E級ダンジョンを安定して周回できるようになる!
そのために、この100万を使うぜ!
その前向きな決意の連鎖。
それに、スレッドの空気は再び温かいもので満たされていった。
だが、その和やかな空気の中で、一人のユーザーがぽつりと一つの疑問を投下した。
191: 名無しのビルド考察好き
しかし、こうなってくると一つの疑問が湧いてくるな。
雷帝・神宮寺猛は、もはや言うまでもなく最強の英雄だ。
だがもし、俺たちのもう一人のヒーロー…JOKERさんがこの100万円を手にしたら、一体どうするんだろうな。
そのあまりにも興味深い問いかけ。
それに、スレッドが再び色めき立つ。
193: 名無しのハクスラ廃人
191
決まってんだろ。
あいつは、絶対にジェムのクオリティ上げなんざしねえよ。
あいつは、ギャンブラーだ。
その100万を元手に、さらにデカいギャンブルに挑むに決まってる。
195: 名無しのA級(通りすがり)
193
ああ、目に浮かぶようだ。
アメ横の一番奥にあるあの怪しげなクラフト屋で、全ての財産を一つのぶっ壊れMODが付くかどうかの、確率の低いギャンブルに全額ベットするだろうな。
そして、何食わぬ顔でそれを成功させやがる。
198: 名無しのC級ヒーラー
195
ふふっ、目に浮かぶようですわね。
そして、そのクラフトで数億円の価値を持つアイテムを生み出して、「まあ、今日の稼ぎはこんなもんか」とか平然と言うんですよ、あの人は。
そのあまりにも解像度の高いJOKERの模倣。
それに、スレッドはこの日一番の笑いに包まれた。
『wwwwwwwww』
『JOKERさん、やりそうwww』
『てか、絶対やるだろあの人ならwww』
その熱狂の中で、一人のF級の若者が羨望と、そして少しの嫉妬を込めて呟いた。
211: 名無しのF級ゴブリンの耳コレクター
はぁ…。
雷帝は、俺たちに夢と現実的な資産をくれる光の英雄。
JOKERさんは、俺たちに夢と非現実的な絶望(格の違い)を見せつけてくる闇の英雄か。
どっちもカッコいいけど、俺はどっちを目指せばいいんだ…。
そのあまりにも本質的な悩み。
それに、スレッドは再び温かい笑いに包まれた。
この日、この瞬間。
日本の若手、中堅探索者たちの心は、確かに一つになっていた。
一人の英雄がもたらした、巨大な希望。
そして、もう一人の異端児がもたらした、歪な、しかし強烈な憧れ。
その二つの光に、導かれるように。
彼らの新たな冒練が、始まろうとしていた。