表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
157/491

第155話

【SeekerNet 掲示板】

 スレッドタイトル:【雑談】最近のトップランカーの動向を語るスレ Part. 255


 851: 名無しのA級(情報屋)

 おい、お前ら、ちょっとしたネタを仕入れてきたぞ。

 信じるか信じないかは、お前ら次第だがな。

 アメリカのあの『ヴァルキリー・キャピタル』のギルドマスター。

 エヴリン・リードが、今、日本に来てるらしい。


 852: 名無しのB級タンク

 は!?マジかよ!

 あの『絶対領域』が!?

 なんでまた、こんな極東の島国に?目的は、何だ?


 853: 名無しのC級ヒーラー

 ええっと、すみません…。

 そのエヴリン・リードって、誰ですか…?

 最近、C級に上がったばかりで、海外のトップランカーには疎くて…。


 854: 名無しのF級冒険者


 853

 俺も知らねえや。有名な人なのか?


 855: 名無しのA級


 853 >>854

 お前ら、マジか…。B級までならともかく、C級にもなって彼女を知らないのは、流石にモグリだぞ。

 少しは、世界のトップにも興味を持て。


 856: 名無しのB級

 まあまあ、そう言ってやるなよ。

 俺たちが、当たり前のように知ってるだけで、彼女はメディアへの露出が極端に少ないからな。

 知らなくても、無理はない。


 860: 元ギルドマン@戦士一筋


 853 >>854

 知らなくて当然だ。無理もない。

 彼女は、我々が普段戦っているテーブルとは、全く違う次元の住人だからな。

 だが、覚えておけ。この世界で頂点を目指すというのなら、その名は、いずれ必ずお前たちの前に、壁として立ちはだかることになるだろう。


 エヴリン・リード。

 彼女は、アメリカにその本拠を置く、SSS級の冒険者だ。

 その歳は、まだ17歳。

 だが、彼女のキャリアは、すでに10年を超える。

 ダンジョンが出現したあの日。彼女は、まだ7歳の子供でありながら、その才能を開花させ、それ以来ずっと、アメリカの最前線で戦い続けている、生ける伝説だ。


 861: 名無しのC級


 860

 じゅ、17歳!?

 SSS級!?嘘だろ!?


 862: 名無しのD級


 860

 10年間戦い続けてるって…7歳の頃から、ダンジョンに潜ってたってことかよ…!

 俺が、小学校でドッジボールしてた頃に…?

 化け物か…!


 863: 元ギルドマン@戦士一筋


 862

 ああ、化け物だ。

 そして彼女は、ただ強いだけではない。

 アメリカ最強のギルドの一つ、**『ヴァルキリー・キャピタル』を、その若さで率いる絶対的な元締め(ギルドマスター)**でもある。

 彼女の知略と資産力は、もはや国家レベルだ。


 864: ハクスラ廃人

 お前ら、まだ彼女の本当のヤバさを理解してねえな。

 いいか、よく聞けよ。

 最近、この日本のオークションで、一つの剣がとんでもない値段で落札されたのを覚えてるか?

 そう、**JOKERが作り出した、あの1億9000万円の【泡沫の刃(RT付き)】**だ。

 あの、必中だけどクリティカルが出なくなるっていう、狂ったビルド。

 あれはな…


 865: ハクスラ廃人

 ――あのビルドの基礎を考案したのは、何を隠そう、このエヴリン・リード本人なんだよ。


 866: 名無しのA級

 …マジかよ。

 あのビルドのオリジナルが、彼女…?


 867: ハクスラ廃人

 そうだ。

 彼女は、何年も前に、誰もが見向きもしなかったあの「使えない」武器と「死にパッシブ」の、完璧なシナジーを見つけ出した。

 そして、自らのギルドの資産を惜しげもなく注ぎ込み、その理論を、現実のものとして完成させた。

 今、世界中のトップランカーたちが、血眼になって彼女のビルドを模倣しようとしている。

 JOKERのあのクラフトが、あれほどの価値を持ったのも、全ては彼女がその「基礎」を築き上げていたからだ。

 彼は、ただその頂に、たまたま触れることができたに過ぎない。


 868: 名無しのB級タンク

 待て待て。

 じゃあ、なんだ?

 彼女の強さってのは、あのRT泡沫の超火力ってことか?

 それなら、分かる。確かに、強い。だが、それだけなら、ただのグラスキャノンだろ。

 俺たちタンク職が、パーティでしっかり守ってやれば、あるいは…


 869: ハクスラ廃人


 868

 だから、お前はB級なんだよ。

 全く、話が見えてねえ。

 彼女の本当の狂気は、その火力じゃねえ。

 **「その超火力を持ちながら、この世界の誰よりも硬い」**ってことにあるんだよ。


 870: ベテランシーカ―


 869

 ハクスラ廃人さんの、おっしゃる通りです。

 皆さん、落ち着いて聞いてください。これが、エヴリン・リードという存在の本質です。

 彼女のビルドは、矛盾しています。

 まず、防御能力。

 ・彼女の物理カット率は、88%に達します。これは、【決意のオーラ】と【堅牢化】を極めた専門のタンク職に匹敵、いえ、それ以上の数値です。

 ・彼女のエナジーシールドは13000を超え、さらに、彼女の盾【イージス・オーロラ】の効果により、攻撃をブロックするたびに、アーマー値の2%…つまり、1220以上のESが、瞬時に回復します。敵に殴られれば殴られるほど、硬くなる。

 ・彼女は、CIカオス・イノキュレーションにより、混沌ダメージを完全に無効化します。

 ・そして彼女は、【スペルダメージ抑制確率】を装備とパッシブで、**100%**まで積み上げています。つまり、全ての魔法は、問答無用で威力が半減する。


 結論を、言います。

 S級ボスの全力の攻撃ですら、彼女に意味のあるダメージを与えることは、ほぼ不可能です。


 871: 名無しのC級

 …は?

 じゃあ、なんだよ、それ。

 ただの、絶対に倒せない亀じゃねえか。

 それなら、別に怖くは…


 872: ハクスラ廃人


 871

 だから、話は最後まで聞けってんだよ、この三流が!

 彼女の狂気は、その**「絶対に倒せない亀」が、「冬月祈の倍のDPSを叩き出す」**ってことにあるんだよ!


 873: 元ギルドマン@戦士一筋

 その通りだ。

 彼女のRT付き【泡沫の刃】は、彼女の13000という膨大なESを、そのまま雷ダメージへと変換する。

【嵐の叫び】による「幸運」の効果で、ダメージは常に上振れし続ける。

 そして、その必中かつ安定した超火力を、凄まじい手数で叩き込み続ける。

 我々が、ようやく彼女のESを1割削るか、削らないかという間に。

 こちらのHPは、とっくに蒸発している。


 874: 名無しのA級

 …待て。

 整理させてくれ。

 つまり、彼女は…

 ・物理ダメージが、ほぼ効かない。

 ・魔法ダメージも半減の上、ほとんどブロックされる。

 ・混沌ダメージは、無効。

 ・攻撃されるたびに、回復する。

 ・その上で、冬月祈の倍近い超火力を、必中で叩き込んでくる。

 …そういうことか…?


 875: ベテランシーカ―


 874

 ええ。

 ご理解いただけたようで、何よりです。


 876: 名無しのB級タンク

 …どうやって、戦うんだよ、それ…。


 877: 元ギルドマン@戦士一筋


 876

 答えは、簡単だ。

「戦えない」。

 彼女は、もはや我々が戦うべき「敵」ではない。

 天災や神のような、ただそこにあるだけの「理」だ。

 我々にできるのは、ただ彼女の機嫌を損ねないように、祈ることだけだ。


 そのあまりにも絶望的で、そして完璧な結論。

 それに、スレッドはしばらくの間、言葉にならない畏敬の念と、沈黙に支配されるのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ