第155話
【SeekerNet 掲示板】
スレッドタイトル:【雑談】最近のトップランカーの動向を語るスレ Part. 255
851: 名無しのA級(情報屋)
おい、お前ら、ちょっとしたネタを仕入れてきたぞ。
信じるか信じないかは、お前ら次第だがな。
アメリカのあの『ヴァルキリー・キャピタル』のギルドマスター。
エヴリン・リードが、今、日本に来てるらしい。
852: 名無しのB級タンク
は!?マジかよ!
あの『絶対領域』が!?
なんでまた、こんな極東の島国に?目的は、何だ?
853: 名無しのC級ヒーラー
ええっと、すみません…。
そのエヴリン・リードって、誰ですか…?
最近、C級に上がったばかりで、海外のトップランカーには疎くて…。
854: 名無しのF級冒険者
853
俺も知らねえや。有名な人なのか?
855: 名無しのA級
853 >>854
お前ら、マジか…。B級までならともかく、C級にもなって彼女を知らないのは、流石にモグリだぞ。
少しは、世界のトップにも興味を持て。
856: 名無しのB級
まあまあ、そう言ってやるなよ。
俺たちが、当たり前のように知ってるだけで、彼女はメディアへの露出が極端に少ないからな。
知らなくても、無理はない。
860: 元ギルドマン@戦士一筋
853 >>854
知らなくて当然だ。無理もない。
彼女は、我々が普段戦っているテーブルとは、全く違う次元の住人だからな。
だが、覚えておけ。この世界で頂点を目指すというのなら、その名は、いずれ必ずお前たちの前に、壁として立ちはだかることになるだろう。
エヴリン・リード。
彼女は、アメリカにその本拠を置く、SSS級の冒険者だ。
その歳は、まだ17歳。
だが、彼女のキャリアは、すでに10年を超える。
ダンジョンが出現したあの日。彼女は、まだ7歳の子供でありながら、その才能を開花させ、それ以来ずっと、アメリカの最前線で戦い続けている、生ける伝説だ。
861: 名無しのC級
860
じゅ、17歳!?
SSS級!?嘘だろ!?
862: 名無しのD級
860
10年間戦い続けてるって…7歳の頃から、ダンジョンに潜ってたってことかよ…!
俺が、小学校でドッジボールしてた頃に…?
化け物か…!
863: 元ギルドマン@戦士一筋
862
ああ、化け物だ。
そして彼女は、ただ強いだけではない。
アメリカ最強のギルドの一つ、**『ヴァルキリー・キャピタル』を、その若さで率いる絶対的な元締め(ギルドマスター)**でもある。
彼女の知略と資産力は、もはや国家レベルだ。
864: ハクスラ廃人
お前ら、まだ彼女の本当のヤバさを理解してねえな。
いいか、よく聞けよ。
最近、この日本のオークションで、一つの剣がとんでもない値段で落札されたのを覚えてるか?
そう、**JOKERが作り出した、あの1億9000万円の【泡沫の刃(RT付き)】**だ。
あの、必中だけどクリティカルが出なくなるっていう、狂ったビルド。
あれはな…
865: ハクスラ廃人
――あのビルドの基礎を考案したのは、何を隠そう、このエヴリン・リード本人なんだよ。
866: 名無しのA級
…マジかよ。
あのビルドのオリジナルが、彼女…?
867: ハクスラ廃人
そうだ。
彼女は、何年も前に、誰もが見向きもしなかったあの「使えない」武器と「死にパッシブ」の、完璧なシナジーを見つけ出した。
そして、自らのギルドの資産を惜しげもなく注ぎ込み、その理論を、現実のものとして完成させた。
今、世界中のトップランカーたちが、血眼になって彼女のビルドを模倣しようとしている。
JOKERのあのクラフトが、あれほどの価値を持ったのも、全ては彼女がその「基礎」を築き上げていたからだ。
彼は、ただその頂に、たまたま触れることができたに過ぎない。
868: 名無しのB級タンク
待て待て。
じゃあ、なんだ?
彼女の強さってのは、あのRT泡沫の超火力ってことか?
それなら、分かる。確かに、強い。だが、それだけなら、ただのグラスキャノンだろ。
俺たちタンク職が、パーティでしっかり守ってやれば、あるいは…
869: ハクスラ廃人
868
だから、お前はB級なんだよ。
全く、話が見えてねえ。
彼女の本当の狂気は、その火力じゃねえ。
**「その超火力を持ちながら、この世界の誰よりも硬い」**ってことにあるんだよ。
870: ベテランシーカ―
869
ハクスラ廃人さんの、おっしゃる通りです。
皆さん、落ち着いて聞いてください。これが、エヴリン・リードという存在の本質です。
彼女のビルドは、矛盾しています。
まず、防御能力。
・彼女の物理カット率は、88%に達します。これは、【決意のオーラ】と【堅牢化】を極めた専門のタンク職に匹敵、いえ、それ以上の数値です。
・彼女のエナジーシールドは13000を超え、さらに、彼女の盾【イージス・オーロラ】の効果により、攻撃をブロックするたびに、アーマー値の2%…つまり、1220以上のESが、瞬時に回復します。敵に殴られれば殴られるほど、硬くなる。
・彼女は、CIにより、混沌ダメージを完全に無効化します。
・そして彼女は、【スペルダメージ抑制確率】を装備とパッシブで、**100%**まで積み上げています。つまり、全ての魔法は、問答無用で威力が半減する。
結論を、言います。
S級ボスの全力の攻撃ですら、彼女に意味のあるダメージを与えることは、ほぼ不可能です。
871: 名無しのC級
…は?
じゃあ、なんだよ、それ。
ただの、絶対に倒せない亀じゃねえか。
それなら、別に怖くは…
872: ハクスラ廃人
871
だから、話は最後まで聞けってんだよ、この三流が!
彼女の狂気は、その**「絶対に倒せない亀」が、「冬月祈の倍のDPSを叩き出す」**ってことにあるんだよ!
873: 元ギルドマン@戦士一筋
その通りだ。
彼女のRT付き【泡沫の刃】は、彼女の13000という膨大なESを、そのまま雷ダメージへと変換する。
【嵐の叫び】による「幸運」の効果で、ダメージは常に上振れし続ける。
そして、その必中かつ安定した超火力を、凄まじい手数で叩き込み続ける。
我々が、ようやく彼女のESを1割削るか、削らないかという間に。
こちらのHPは、とっくに蒸発している。
874: 名無しのA級
…待て。
整理させてくれ。
つまり、彼女は…
・物理ダメージが、ほぼ効かない。
・魔法ダメージも半減の上、ほとんどブロックされる。
・混沌ダメージは、無効。
・攻撃されるたびに、回復する。
・その上で、冬月祈の倍近い超火力を、必中で叩き込んでくる。
…そういうことか…?
875: ベテランシーカ―
874
ええ。
ご理解いただけたようで、何よりです。
876: 名無しのB級タンク
…どうやって、戦うんだよ、それ…。
877: 元ギルドマン@戦士一筋
876
答えは、簡単だ。
「戦えない」。
彼女は、もはや我々が戦うべき「敵」ではない。
天災や神のような、ただそこにあるだけの「理」だ。
我々にできるのは、ただ彼女の機嫌を損ねないように、祈ることだけだ。
そのあまりにも絶望的で、そして完璧な結論。
それに、スレッドはしばらくの間、言葉にならない畏敬の念と、沈黙に支配されるのだった。