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【公式ギルド最高幹部以外閲覧禁止】S級ダンジョン以上で出現するアーティファクトについて最後に【アニマとアニムスの円環】を追加しました

 推定価値: 5兆円 ~ 10兆円

 名前:

 時の揺り戻し、若返りの薬

 (ときのゆりもどし、わかがえりのくすり)

 (The Ebbing of Time, Potion of Rejuvenation)


 レアリティ:

 神話級 (Mythic-tier)


 種別:

 霊薬 / アーティファクト (Elixir / Artifact)


 効果:

 この霊薬を飲み干した者は、その記憶と人格を完全に維持したまま、肉体の時を正確に10年巻き戻す。

 この霊薬は、世界の理そのものが凝縮した奇跡の産物であり、いかなる魔法や技術をもってしても、その模倣・複製は不可能である。


 フレーバーテキスト:


 王は金で城を築き、英雄は力で伝説を築いた。

 だが、時はその全てを、無慈悲に砂へと変える。

 彼らは、資産の半分を差し出して、10年を買う。

 彼らが本当に買っているのは若さではない。

 自らの帝国で、もう10年、君臨し続けるための「権利」だ。




【ギルド最高幹部会 - 内部評価報告書】

 アーティファクト・クラス: 神話級


 アイテム名: 時の揺り戻し、若返りの薬 (The Ebbing of Time, Potion of Rejuvenation)


 脅威レベル評価: C (監視対象。ただし、市場介入の必要性は低い)


 1. 概要

 本アーティファクトは、使用者の肉体を10年間若返らせるという、極めて強力な効果を持つ霊薬である。使用者の記憶・人格は完全に維持され、副作用の報告も皆無。その効果は個人的かつ限定的であり、世界の理そのものを直接的に歪めるものではない。


 2. 市場価値と経済的影響

 先日、日本でドロップした個体が10兆円という史上最高額で落札されたことからも分かる通り、その市場価値は計り知れない。購入者は主に、老いによる影響力の低下を恐れる旧世界の富豪や、絶対的な権力者たちに限定される。

 この取引によって生み出される莫大な富は、多くの場合、出品者であるS級探索者によって、ギルドへの寄付、若手育成への投資、あるいは自らのさらなる装備強化へと再投資される。この金の流れは、探索者経済圏全体を活性化させる、極めて有益なカンフル剤として機能しており、経済的な観点から見れば、ギルドが積極的に介入して抑制すべき対象ではないと判断する。


 3. 社会的・思想的影響の評価:なぜ「安全」と言えるのか

 当ギルド最高幹部会は、【時の揺り戻し、若返りの薬】を、他の神話級アーティファクトと比較して、**「思想的に極めて安全なアーティファクト」**であると結論付ける。その理由は、以下の二点に集約される。


 第一に、その「再現性と供給量」である。

 全世界のS級以上のダンジョンから、年間約12個という比較的高い頻度で産出されるという事実は、このアーティファクトの価値を「希少」ではあっても「唯一」ではないものにしている。この安定した供給は、一つの個体を巡る国家間の熾烈な争奪戦や、世界のパワーバランスを崩壊させるほどの渇望を防ぐ、重要な安全弁として機能している。常に「次がある」という期待感が、市場の過度な暴走を抑制しているのだ。


 第二に、その効果の「個人的・限定的な性質」である。

 本アーティファクトがもたらすのは、あくまで「個人の10年間の延命」である。

 言ってしまえば、これは、人生という限られた時間の中で成功を収めた者への、世界からの**「最高のボーナス」**であり、彼らが築き上げた富の、ある種の健全な消費形態と見なすことができる。彼らが10年の若さを手に入れたところで、世界の理が覆ることはない。


 4. ギルドとしての公式見解・推奨措置

 以上の分析から、当ギルド最高幹部会は、【時の揺り戻し、若返りの薬】の市場流通を、原則として**「容認」**する。

 その取引は、世界の富の再分配を促し、結果として探索者経済圏全体の活性化に繋がる、有益な事象であると判断する。


 ただし、その莫大な取引額が、裏社会の資金洗浄や、テロ組織の資金源となる可能性もゼロではない。ギルドとしては、今後もその取引の透明性を確保するため、公式オークションハウスのシステムを厳格に維持し、その動向を注視し続けるものとする。





 推定価値: 25兆円 ~ 50兆円

 名前:

 女神のめがみのなみだ

 (Goddess's Tear)


 レアリティ:

 神話級 (Mythic-tier)


 種別:

 聖遺物 / 神のしずく (Holy Relic / Divine Drop)


 効果:

 この一滴の雫を飲んだ者は、その肉体を、その者が本来持つべき**『宿命』**の形へと完全に回帰させる。

 後天的な、あるいは先天的な、あらゆる病魔、呪い、身体の欠損は、その存在を許されず、あたかも「初めからそうであった」かのように、完璧な健康状態へと復元される。

 この一滴は、生命の理そのものが結晶化した至上の奇跡であり、いかなる魔法や技術をもってしても、その模倣・複製は不可能である。


 フレーバーテキスト:

 王は、富で権力を買った。

 英雄は、力で名声を買った。


 では、失われた我が子の命を、誰が買うというのか。

 戦場で失ったはずの、その腕を。

 生まれながらに、その身を蝕む病を。


 彼らは、祈る。

 資産の全てを投げ打ってでも、ただ、一度の奇跡を。


 彼らが本当に求めているのは、癒やしではない。

 病を知らぬ健やかな朝を、欠けることなき五体で、愛する者と笑い合う。

 その、あり得たはずの『もしも』の世界。

 たった一度の、やり直しの機会だ。




【ギルド最高幹部会 - 内部評価報告書】

 アーティファクト・クラス: 神話級


 アイテム名: 女神の涙(Goddess's Tear)


 脅威レベル評価: D (安全。ただし、その取引は、ギルドによる最高レベルの監視と介入を必要とする)


 1. 概要

 本アーティファクトは、使用者が持つあらゆる負の状態…すなわち、後天的あるいは先天的な病、呪い、身体の欠損に至るまで、その全てを「存在しなかった」かのように完全に修復し、その者が本来持つべき**『宿命』**の肉体へと回帰させる、究極の聖遺物である。その効果は、生命の理そのものに干渉する、真の奇跡と呼ぶにふさわしい。


 2. 市場価値と経済的影響

 推定市場価値は25兆円から50兆円。これは、現存するアーティファクトの中でも、紛れもなく最高額の取引価格帯に位置する。この天文学的な価値は、単純な戦闘能力や戦略的優位性から生まれるものではない。それは、金では決して買うことのできないはずの「健康」や「失われた五体」、そして「あり得たはずの未来」という、人の根源的な願いの、あまりにも大きな価値を反映したものである。

 この取引によって動く資産は莫大だが、それは経済を動かすというよりも、一つの絶望を一つの希望へと変換するための、いわば**「奇跡の代価」**としての側面が強い。


 3. 社会的・思想的影響の評価:なぜ「究極的に安全」と言えるのか

 当ギルド最高幹部会は、【女神の涙】を、その計り知れない価値にもかかわらず、**「思想的に究極的に安全なアーティファクト」**であると結論付ける。その理由は、そのあまりにも限定的で、そしてどこまでも平和的な「用途」にある。


 第一に、その力の「非・軍事性」と「非・支配性」である。

【女神の涙】がもたらすのは、個人の「救済」であり、決して「力」や「支配」ではない。これは、戦場の勝敗を左右することも、世界のパワーバランスを覆すこともない。ただ、一人の人間を、その絶望の淵から救い出すためだけに、その力は行使される。その用途は、極めて平和的なものに限定されており、思想的に危険な側面は、一切存在しない。


 第二に、その「供給の希少性」が、逆に秩序を維持している点である。

 年間1~2個という極めて少ない産出量は、その価値を天文学的なものへと押し上げている。だが、それ故に、これを求める者は、自らの全て…時には国家予算規模の資産すらも投げ打つ覚悟のある、極めて切実な事情を抱えた個人や組織に限られる。それは、衝動や欲望で手を出せる代物ではない。この希少性こそが、このアーティファクトが持つ神聖さを担保し、無用な争奪戦を防ぐ、一種の抑止力として機能している。


 第三に、その存在が、人類全体の「希望」となっている点である。

 フレーバーテキストにある通り、王は富を、英雄は力を欲する。だが、この雫を求めるのは、失われた我が子の命を、戦場で散った友の腕を、そして生まれながらにその身を蝕む病を嘆く者たちだ。

 このアーティファクトが存在するという事実そのものが、この理不尽な世界で戦い続ける、全ての探索者とその家族にとって、最後の「希望の光」となっている。この光を、ギルドが管理し、その輝きを失わせることは、あってはならない。


 4. ギルドとしての公式見解・推奨措置

 以上の分析から、当ギルド最高幹部会は、【女神の涙】の存在を、人類にとっての**「希望の象徴」であると定義する。

 その市場流通を、原則として「是認」**し、むしろその取引が公正かつ円滑に行われるよう、積極的に支援するものとする。


 ただし、そのあまりにも大きな価値故に、取引の過程で、詐欺、強奪といった犯罪行為を誘発する可能性が極めて高い。

 したがって、ギルドは、本アーティファクトの取引が確認された場合、SSS級冒険者の護衛を派遣するなど、最高レベルのセキュリティをもって、その「奇跡の継承」が、安全に完了するまでを、完全に見届ける義務を負う。

 これは、世界の秩序を守るギルドとしての、最も重要な責務の一つである。




【空虚の心核】

[画像:手のひらに収まるほどの大きさの、完全に光を吸収する、球形の黒曜石のイメージ。その表面はどこまでも滑らかで、覗き込むと、その奥に宇宙の深淵そのものが広がっているかのような錯覚を覚える。]


 名前:

 空虚の心核くうきょのしんかく

 (The Voidheart Core)


 レアリティ:

 神話級 (Mythic-tier)


 種別:

 アーティファクト / 創世の核 (Artifact / Genesis Core)


 効果テキスト:

 術者は、この心核を自らの魂と完全に同調させる(事実上の破壊)ことで、何もない「無」の空間から、自分だけの半永久的な異空間**【隠れハイドアウト】**を一つ、創造することができる。


 創造された空間の環境(天候、時間、風景など)は、術者の精神と記憶を元に、ある程度自由に設計することが可能である。それは、常に美しい夕暮れが続く港町にも、雪が降り積もる静かな森にも、あるいは星々が輝く宇宙空間にもなりうる。


 この隠れ家への出入りは、創造主である術者が完全にコントロールし、許可した者以外が侵入することは、神々ですら不可能とされている。いかなる追跡も、いかなる攻撃も、この絶対的な聖域の前では、その意味を失う。


 ただし、この心核が提供するのは、あくまで『土地』と『法則』のみである。その土地に、どのような建造物を建て、どのような設備(転移装置、クラフト台、倉庫など)を置くかは、全て術者自身の資産と想像力に委ねられる。


 世界の理そのものが凝縮した奇跡の産物であり、いかなる魔法や技術をもってしても、その模倣・複製は不可能である。


 フレーバーテキスト:

 王は、難攻不落の城壁を求めた。

 賢者は、誰にも邪魔されない書庫を求めた。

 英雄は、戦いの果てに、ただ安らげる寝床を求めた。


 だが、彼らが本当に欲していたのは、壁でも、書物でも、寝床でもなかった。


 世界のルールから、完全に切り離された場所。

 他者の視線も、期待も、憎悪も届かない、自分だけの箱庭。


 そう、彼らは、神にすら邪魔されない、『孤独』になる権利を、渇望していたのだ。


 この石は、それを与える。

 究極のシェルターを。

 そして、自らが神となる、**新しい世界の、最初の『一欠片』**を。



【ギルド最高幹部会 - 内部評価報告書】

 アーティファクト・クラス: 神話級


 アイテム名: 空虚の心核(The Voidheart Core)


 脅威レベル評価: D (安全。市場への流通も、原則として容認)


 1. 概要

 本アーティファクトは、使用者の魂と完全に同調させることで、自分だけの半永久的な異空間【隠れハイドアウト】を創造する、創世の核である。創造された空間の環境は術者の任意で設定可能であり、その内部は創造主が許可した者以外、神々ですら侵入不可能な絶対的な聖域となる。


 2. 市場価値と経済的影響

 本アーティファクトが公開市場(公式オークションハウス等)で取引される場合、その推定市場価値は5兆円から10兆円が適正であると判断する。

 この価格帯は、【時の揺り戻し、若返りの薬】とほぼ同等である。その理由は、以下の点にある。


 供給量と需要のバランス: 本アーティファクトは、神話級としては比較的産出量が多く、年間約12個が世界のどこかでドロップされると報告されている。この供給量が、価格の過度な高騰を抑制している。しかし、同時に、A級以上の全ての探索者が、自らの最終的な拠点としてその所有を夢見ており、需要は常に供給を上回る。この絶妙なバランスが、この価格帯を形成している。


 価値の本質: これは、「究極のシェルター」であり、「自分だけの世界を創造する権利」である。A級からS級、そしてその先を目指すすべての探索者にとって、この「自分だけの城」を持つことは、一つの大きな目標であり、成功の証となる。その価値は、個人の10年の延命に匹敵、あるいはそれ以上のものがあると評価される。


 3. 社会的・思想的影響の評価:なぜ「安全な公表済みアーティファクト」なのか

 当ギルド最高幹部会は、【空虚の心核】を、その絶大な効果にもかかわらず、**「思想的に極めて安全なアーティファクト」**であると結論付ける。


 第一に、その効果の「防御的・内向的な性質」である。

 このアーティファクトは、外部世界に直接干渉する力を持たない。それは、あくまで術者のための「究極のシェルター」であり、他者を攻撃したり、支配したりするための道具ではない。その用途は極めて平和的であり、世界の秩序を脅かす危険性は皆無に等しい。


 第二に、すでに「SSS級の標準装備」として広く認知されている点である。

 現在、世界に存在する**30名のSSS級冒険者は、その全員が、この力によって創造された隠れ家を所有している。**これは、彼らにとっての「翼」である【星霜の道標】と同様、その地位と責務を象徴する、いわば「神々の玉座」である。

 この事実は、SSS級に詳しい人物であれば広く知られている公然の秘密であり、その存在が社会に無用な混乱や憶測を招くことはない。


 4. ギルドとしての公式見解・推奨措置

 以上の分析から、当ギルド最高幹部会は、【空虚の心核】の市場流通を、健全な経済活動の一環として**「容認」**する。

 本アーティファクトは、下位の探索者たちにとって、A級、S級という高みを目指すための、具体的で、そして強力なモチベーションとなる。この「夢」の存在こそが、探索者経済圏全体の活性化に繋がり、ひいては世界の安定に寄与すると判断する。


 ギルドとしては、その取引の透明性を確保するため、公式オークションハウスの利用を強く推奨する。ただし、その所有と思想の安全性から、他の神話級アーティファクトのような、厳重な取引監視や介入の必要性は低いものとする。







【星霜の道標】

[画像:白銀と、星空を閉じ込めたかのような黒い水晶で編まれた、古代の腕輪のイメージ。中央には、常に北を指し示す、コンパスの針のような小さな光の矢が、静かに、しかし確かに浮遊している。]


 名前:

 星霜の道標せいそうのみちしるべ

 (Wayfinder of Aeons)


 レアリティ:

 神話級 (Mythic-tier)


 種別:

 アーティファクト / 腕輪 (Artifact / Bracelet)


 効果テキスト:

 この腕輪は、術者が過去に訪れ、その風景と魔素の流れを**『記憶』**させた、最大10つまでの場所を記録することができる。


 術者は、【ポータル・スクロール】を一枚消費することで、記録された場所のいずれかへと、瞬時に繋がるポータルを開くことができる。この転移は、術者の隠れハイドアウトや、ギルドの拠点、あるいはかつて攻略したダンジョンの入り口など、術者が「安全な帰還場所」として認識している地点にのみ有効である。


 ただし、場所を『記憶』させるためには、その地点で数時間以上滞在し、腕輪と自らの魂を同調させる儀式が必要となる。

 また、この転移は、未攻略のダンジョンのボス部屋や、強力な結界が張られた特殊な領域など、世界の理によって『拒絶』された場所へは機能しない。


 これは、ただの移動手段ではない。

 放浪者が、自らの旅路の記憶を刻み込み、いつでもその思い出の場所へと帰還するための、魂のいかりである。


 世界の理そのものが凝縮した奇跡の産物であり、いかなる魔法や技術をもってしても、その模倣・複製は不可能である。


 フレーバーテキスト:

 王は、玉座に安寧を見出した。

 賢者は、書庫に真理を見出した。


 だが、放浪者は、どこにも安住の地を持たなかった。

 彼らにとって、全ての道は、ただ通り過ぎるためだけのもの。

 全ての出会いは、いずれ訪れる別れのための、序章に過ぎなかった。


 この腕輪は、彼らが唯一、振り返ることを許した、過去への道標。


 闘技場の血と砂の匂い。

 氷の洞窟の、絶対零度の静寂。

 そして、遠い北の大地で見た、百万ドルの夜景。


 彼らは、気づいていたのだ。

 真の故郷とは、場所ではない。

 忘れ得ぬ風景と、そこに残した温かい記憶、その全てが、この腕輪に宿る魂そのものであるということを。






【ギルド最高幹部会 - 内部評価報告書】


【星霜の道標】の二つの「価値」――公式ギルド価格と、影の市場価格

 この神話級アーティファクトは、他の全ての遺産とは一線を画す、極めて特殊な流通経路と価値体系を持っています。その価値は、単純な市場原理ではなく、世界の秩序そのものを維持するための「盟約」と、神々の領域を目指す者たちの「渇望」という、二つの側面から考える必要があります。


 1. 価値の本質――SSS級の「翼」としての存在

 まず、大前提として理解しなければならないのは、この【星霜の道標】が、SSS級冒険者にとって、もはや**「贅沢品」ではなく「必需品」であるという事実です。

 世界中に点在する、SSS級ダンジョン。あるいは、突如として世界のどこかに出現する、国家規模の災害級モンスター。

 それらの脅威に、瞬時に対応し、世界各地を「巡回」する。

 それこそが、世界に30人しかいないSSS級に課せられた、暗黙の責務です。

 この腕輪がもたらす、大陸間をも超える超高速の転移能力。それなくして、彼らはその責務を全うすることはできません。

 つまり、この腕輪は、彼らにとっての「翼」**。神々の領域を飛び回るための、絶対不可欠なツールなのです。


 2. ギルド公式価格(SSS級探索者向け)

 推定ギルド調達価格: 5兆円


 この「翼」は、原則として、市場には出回りません。

 ギルドの最優先事項は、世界の安定と秩序の維持。そのため、新たにSSS級へと到達した者や、何らかの理由で腕輪を失ったSSS級に対し、公式ギルドが最優先でこの腕輪を「提供」するという規定が、厳格に定められています。


 ただし、提供は無償ではありません。

 この腕輪の生成、あるいは確保には、途方もないコストとリソースが必要とされます。

 そのため、SSS級冒険者は、ギルドに対して、その調達コストに相当する金額を支払う必要があります。

 その価格が、5兆円。

 これは、市場価格というよりは、世界の守護者としての責務を全うするための「契約金」であり、ギルドとSSS級冒使者との間の「盟約の証」とも言える金額です。

 若返りの薬(10兆円)よりも安いこの価格設定は、これが利益目的ではなく、あくまで世界の秩序維持のための必要経費であることを示唆しています。


 3. 影の市場価格(SS級以下への、稀なる流出品)

 推定市場価格: 20兆円 ~ 60兆円


 では、SSS級以外の者が、この腕輪を手に入れることは、絶対に不可能なのか。

 答えは、否です。

 ごく稀に、本当にごく稀に、この腕輪が市場へと流出することがあります。

 例えば、後継者のいないSSS級が引退、あるいは死亡し、その遺品がギルドによって公式オークションに出品されるケース。

 あるいは、新たなSSS級ダンジョンの攻略過程で、奇跡的に「余剰分」がドロップしたケース。

 その**「あまり」**が発生した時、世界の影の市場は、かつてないほどの熱狂に包まれます。


 この、稀なる流出品を求めるのは、誰か。

 それは、SSS級という神々の領域に、あと一歩まで迫った、野心溢れるSS級のトップランカーたち。あるいは、自国の切り札となる探索者に、世界のどこへでも介入できる力を与えたいと願う、国家そのものです。

 彼らにとって、この腕輪は、ただの便利な移動アイテムではありません。

 それは、**「SSS級と同じ土俵に立つための、挑戦権」**そのものなのです。

 世界中を飛び回り、効率的に経験値を稼ぎ、そして誰よりも早く、世界の危機へと駆けつけることができる。その戦略的アドバンテージは、計り知れません。


 そのため、もしこの腕輪がオークションに出品されれば、その入札は、間違いなく熾烈を極めます。

【運命の紡ぎ車】や【アカシャの天球儀】と同等、あるいはそれ以上の、20兆円から60兆円という、天文学的な価格で取引されることになるでしょう。

 それは、もはやただの装備の値段ではない。

 神々の領域への、片道切符の値段なのです。


 結論として、【星霜の道標】は、その所持者によって、その価値を大きく変える、二つの顔を持つアーティファクトです。

 SSS級にとっては、5兆円の「責務の証」。

 そして、それ以外の全ての者にとっては、**数十兆円を賭けてでも手に入れたい、「神々への挑戦権」**となるのです。




【アニマとアニムスの円環】

[画像:一本の白金の線と、一本の黒金の線。その二つが、互いを求め、そして補い合うかのように、完璧な二重螺旋を描きながら一つの輪を形成している指輪のイメージ。その表面には、継ぎ目が一切存在しない。]


 名前:

 アニマとアニムスの円環えんかん

 (The Circlet of Anima and Animus)


 レアリティ:

 神話級 (Mythic-tier)


 種別:

 アーティファクト / 変容の指輪 (Artifact / Ring of Transfiguration)



 効果:

 この指輪を身に着けた者は、自らの魂が持つ二つの側面…すなわち『男性性』と『女性性』を、完全に、そして自在に、その肉体へと顕現させることができる。


 術者の意志に応じて、その肉体は、遺伝子レベルから完全に再構築される。

 身長、骨格、声、そして全ての生殖機能に至るまで、その変化は、神々の創造の御業と何ら変わるところのない、完璧なものとなる。

 この変容は、術者が望む限り維持され、そしてまた、術者が望めばいつでも、もう一つの性の姿へと、瞬時に回帰することができる。


 ただし、この変化は術者の魂の本質を変えるものではなく、あくまでその「器」としての肉体を、もう一つの可能性の姿へと変えるものに過ぎない。


 フレーバーテキスト:


 英雄は、男の目で世界を断罪し、

 聖女は、女の心で世界を憂いた。


 だが、彼らは、その半分の真実しか、知ることはない。


 この円環を指にはめた者だけが、知る。

 愛することの本当の意味を。

 そして、愛されることの、本当の痛みを。



【ギルド最高幹部会 - 内部評価報告書】

 アーティファクト・クラス: 神話級


 アイテム名: アニマとアニムスの円環 (The Circlet of Anima and Animus)


 脅威レベル評価: E (安全。市場流通は完全に自由とする)


 1. 概要

 本アーティファクトは、使用者の肉体を遺伝子レベルから完全に、そして自在に、もう一方の性へと変容させる力を持つ。この変容は、術者の意志によって何度でも行うことが可能であり、その効果に時間的な制限や副作用は一切報告されていない。これは、個人の「存在のあり方」そのものに干渉する、極めて特殊な遺物である。


 2. 市場価値と経済的影響(1兆~5兆円の妥当性)


 本アーティファクトの推定市場価値は、1兆円から5兆円が適正であると判断する。この価格設定は、以下の二つの主要な要因に基づいている。


 A) 需要の源泉――根源的な『自己実現』への渇望

 この指輪を求めるのは、世界の覇権を狙う国家や、戦闘能力の向上を目指す探索者ではない。

 これを求めるのは、自らの魂の、もう一つの可能性を探求したいと願う、哲学者、芸術家、あるいは、自らの性という器に、根源的な違和感を抱き続ける者たちである。

 あるいは、究極の隠密活動のために、完全な別人格を必要とする諜報員や、組織のトップ。

 その需要は、決して広くはない。だが、それを求める者にとっては、自らの全資産を投げ打ってでも手に入れたい、唯一無二の至宝となる。この極めて属人的で、そして強烈な需要が、最低価格を1兆円という領域に押し上げている。


 B) 供給量と【若返りの薬】との比較

 本アーティファクトの年間産出数は、約12個と報告されている。これは、【時の揺り戻し、若返りの薬】と全く同じ供給量である。

 では、なぜ市場価値にこれほどの差が生まれるのか(若返りの薬は5兆~10兆円)。

 その答えは、その効果がもたらす**「利益」**の質の違いにある。


 **【時の揺り戻し、若返りの薬】**は、権力者の「支配の10年」を延長する。それは、ビジネス、政治、ギルド運営といった、直接的な経済活動の延長に繋がり、投じた資金を回収し、さらに大きな利益を生み出す「投資」としての側面を持つ。


 対して、**【アニマとアニムスの円環】**がもたらすのは、あくまで「個人の内面的な充足」と「自己実現」である。それは、金銭的なリターンを約束するものではない。


 この「投資価値」の差が、二つのアーティファクトの市場価格の差を形成している。だが、人生の本当の豊かさを求める者にとって、この円環の価値が若返りの薬に劣ることは、決してないだろう。この二つの要因を総合的に判断し、その価値は1兆円から5兆円が、適正なレンジであると結論付ける。


 3. 社会的・思想的影響の評価:なぜ「無害」と言えるのか

 当ギルド最高幹部会は、【アニマとアニムスの円環】を、その計り知れない価値にもかかわらず、**「思想的に完全に安全なアーティファクト」**であると結論付ける。


 第一に、その力の**「非・戦闘性」と「非・支配性」**である。

 この指輪は、戦闘能力を一切向上させない。世界のパワーバランスを覆すことも、市場を操作することもない。その力は、どこまでも個人の内面へと向けられたものであり、外部世界への脅威となる可能性は皆無に等しい。


 第二に、その**「可逆性」と「自在性」**である。

 この変容は、術者の意志によって、いつでも元に戻すことができる。それは、後戻りのできない肉体の改造や、魂の変質ではない。ただ、もう一つの自分を「体験」するための、究極の自由なのだ。この健全な性質が、このアーティファクトを、危険な禁制品ではなく、高価な嗜好品としての地位に留めている。


 4. ギルドとしての公式見解・推奨措置

 以上の分析から、当ギルド最高幹部会は、【アニマとアニムスの円環】の市場流通を、健全な文化・経済活動の一環として**「完全に容認」**する。

 本アーティファクトは、探索者たちの多様な価値観と、生き方の可能性を象徴する、素晴らしい遺物である。

 ギルドとしては、その取引の透明性を確保するため、公式オークションハウスの利用を推奨するが、他の神話級アーティファクトのような、厳重な取引監視や介入の必要性は、一切ないものとする。

 これは、脅威ではない。

 ただ、そこに存在する、一つの美しい「可能性」なのだから。


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