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#5.5(閑話) 裏路地の秘密

 いつも通りに若葉とスーパーへ買い出しに行く途中の事だった。「ねぇ姉ちゃん、ちょっと寄り道しても良いかな?」「寄り道ってどこ行くの、もう4時半だからあんまり時間無いよ?」「そこの道入った所に猫がたくさんいる空地があるんだよ。」「5分だけだからね!」動物好きな私はつい猫の魅力に負けた。そこは建物とコインパーキングの間、細い道を入って建物の裏を通り抜けた所だった。「本当にたくさんいる…!」若葉が言う通り、野良と思われる猫が5匹も集まっていた。「ここ猫の集会場なんだよ、きっと。」そこは絵にかいたような空地で、土管が積んであったり雑草が生い茂る部分もあり、木が一本生えている。いつも通る道の裏にこんな広い空間があったとは驚きだ。土管の上で寝そべっている黒猫がこちらに気付いたのか、少し顔を上げてこちらを見た。驚かせちゃったかな…。と思ったけれど、黒猫は我関せずといった様子でゴロリと寝返りをうった。「あの黒い猫、人慣れしてるね。」「うん、ここの猫は皆慣れてるよ。そこの居酒屋のおばちゃんから餌をもらってるからだと思うけど。」なるほど、餌をやる人間がいるから人が来ても警戒すらしない訳だ。「うち、居酒屋のおばちゃんと会った事あるけど、良い人だよ。ちょっと猫が好きすぎだけどね。」それだけ人慣れしているなら触っても大丈夫だろうか。と思い土管のほうへ近づいて見た。相変わらず黒猫はこちらを見ているものの、警戒する様子はない。「初めまして。」まずはこちらから手を差し出すのがマナーというものだ。黒猫はフンフンと鼻を鳴らして差し出した手の匂いを嗅いだ。ここは人間の鼻には草と土の匂いしか分からないが、きっと猫にとっては同族の匂いだらけだろう。どうやら黒猫は私を安全な人間だと認めたらしく、手の甲に頭を擦りつけてきた。「あは、やっぱり姉ちゃんは動物にモテるね。」「うん、気に入って貰えたなら嬉しいな。」こうして妹共々猫達に打ち解けた私は、この裏路地の空き地に通うようになった。

 そんなある日、この日は私1人でこの空き地にやってきた。文房具を買いに商店街へ行った帰りだ。空き地へ繋がる路地を歩いていると「に”ゃ”あ”ぁ”ぁ”」と猫の喧嘩するような声が聞こえる。いつも空き地にいる猫同士は喧嘩する事はないから、他所の猫でも紛れ込んだのだろうか。空き地を覗き込んでみると猫と喧嘩しているのは、見たことが無い動物だった。4足歩行で大きさは猫程だが、明らかに大きい耳をしていて角のようなものが額から一本生えている。しかも、猫のような体に犬のような顔つきをしているから、どこからどう見ても不自然な生物だ。とにかく猫を保護しようと近づいていく。するとその奇妙な生物がこちらを振り返った。不気味だった。顔の形は明らかに犬の骨格をしているのに、目だけは人間のような形だったからだ。二重の瞼、開いた瞳孔、視線から感じるじっとりした感情。私は思わず足を止めた。こいつは普通の生物じゃない、エントルコードだ。レベルは恐らくマニフェート、前回みたいに大きい訳ではないが謎の威圧感がある。どうやら相手は猫よりもこちらに喧嘩を売ることに決めたようだ。向き直って、飛びかかってくる。「うわ!」びっくりして横向きに倒れた。角の一突きを避けたつもりだったが、思ったより足が動いていなかったらしい。手の平が砂利で傷付いたようで、ジンジンした痛みが頭を冴えさせた。「っ!この!」そこにあった小石を投げつけた。一瞬のことだった。私が投げつけた小石はヤツに届く前に淡く光り形を変えた。「ギャアァ‼」けたたましい声を上げてヤツは倒れた。「ギッ!ぎゃァ」ナイフから逃れようと地面の上で藻掻く様に動いている。どうやら効いてるらしい。自分でも不思議なくらい驚かなかったが、私が投げた小石はナイフに形を変えていた。ヤツの体から一旦ナイフを引き抜き、もう一度振りかざす。「消えろっ!」ザクッと嫌な感触が手に伝わって、ナイフはヤツの活動を終わらせた。未だ藻掻きながらもまるで影のように、砂のように消えていった。そしてそこには石製のナイフだけが残った。このナイフもまた、私が出現させた物らしい。

 そのままナイフを観察していると「ナァん」と背後から声がする。あの黒猫だ。「もう大丈夫だよ。」黒猫の頭をそっと撫でてやるとグルルと喉を鳴らした振動を感じた。「いてて」そういえば手の平を擦りむいていた。「すまないけど、また今度ね。」猫に一言声を掛けて、今日はもう帰る事にした。「う”うぅん」黒猫は唸るような、バイクのような音を出しながら路地まで見送ってくれた。

閲覧ありがとうございます。

最近別の趣味の時間が増えて、筆が乗らないユキハンです…。

今回は閑話として短いストーリーを挟む試みです。研究室とか戦闘とかじゃあない日常をチラ見せする事も必要かなと思って書いてみました。アニメだったらアニオリ日常回みたいな感じで、賛否分かれる構成ではあると思いますが、まぁ一次ではあるし自分が好きなように書こうという事でこのような形になりました。

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