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先生と精霊

玄関の前でプリムが告げる。


「ここがウスハノ女子寮よ」


プリムに続いて玄関を潜ると、大きな緑色の絨毯の敷かれた小奇麗で広いエントランスが見えた。

その右側にはどうやら広い食堂があるようで、朝食ををおばちゃんたちが作っているためか騒がしい。


へー、意外といい所に住んでるんだな。


「ん? 女子寮!? 俺入っても大丈夫かな……」

「ホントはダメだけど今回は仕方ないわ」

「そう」

「まぁ朝早いし、みんなまだ起きてないから多分大丈夫よ」

「ふーん。それじゃ見つからないように急ごう」


女子寮か……そう言われればなんかほんの少し香る匂いにドキドキする。

やべ……変な気分になる前に急ごう。


プリムはエントランスの左の奥に向かっていった。

扉の前で立ち止まると、真っ赤な瞳をこちらに向けて話し出した。


「ここが寮監室よ。リトアス先生ってちょっと怖いから気をつけてね」

「わかった」


俺が頷くのを確認すると、扉のほうを向き拳でノックした。


「リトアス先生、風の棟1年Dクラスのプリム・ウィリアロスです。お話があるので聞いていたたけないでしょうか?」

「はいはーい。ちょっと待ってくださいねー」


扉の向こうから返事とともにドタドタとこちらへやってくる音が聞こえる。


「はいーどうしました?」


中から7歳くらいの子供が出てきた。


「え? この女の子が先生?」

「彼女はちがうわよ。シェアロさんリトアス先生はいらっしゃいますか?」

「あらあら、男性の方ですね。女子寮につれてきてはダメなんですよプリムさん。まぁ事情がありそうなので今すぐ呼んできます。中で待っていてください。ほらほら。」

「失礼します」


プリムと俺は部屋の中に入りリビングの椅子に座らされた。


「では少々おまちくださいね」


女の子はそう言うと部屋の奥に引っ込んでいった。


「なぁプリムあのシェアロって誰なの? リトアスって言う人の娘さんとか?」

「違うわよ。彼女はリトアス先生の精霊よ」

「え……? ええええええ! 精霊!? しゃ、喋ってたよ!? 見た目も普通の人間だったし!」

「精霊ってのは成長していけば人間みたいな形になるし喋れるようになるもんなのよ」

「んな、マジかよ……」


ガチャ


「おまたせしましたー」

「あ゛ーうるさいな、朝っぱらから誰だ?」


奥の部屋から、先ほどの精霊少女と、ぼさぼさの長い紫の髪をかきむしりながらタンクトップに短パン姿の20代後半くらいの女性が現れた。


「リトアス先生、朝早くすみません。相談があって来たのですがよろしいでしょうか?」

「相談? かまわんが……誰だこいつ?」


俺とプリムの正面の椅子に座りながらこちらを見てくる。


「あ、えっと……赤坂圭輝です」

「そうか。で?」


めっちゃこっち見てる! 確かになんか怖い先生だな!

なんて説明すればいいんだよ俺の状況。

困った顔でプリムを見ると、


「えと、寮則破ってごめんなさい。実は今朝早朝にユグドラシルに行くと彼がいて、彼はどうやら異世界から来たようなのです」

「はぁ?」

「ほら説明しなさいよ」


プリムがわき腹を突っつくので昨日のことと今朝のことと、向こうの世界の話をした。


「ふーん、異世界ねぇ……からかってるわけじゃないんだな?」


目を細めて俺とプリムを見てくる。

やばい! ここで信用されないと追い出されかねないぞ!

なんか証拠があれば……そうだ!


「えと、これ見てください」


鞄の中身を机にひっくり返すと、教科書、ノート、筆箱、漫画、お菓子、ケータイ、財布が出てくる。

その中のケータイを取り、向こうの世界の街で撮った写真を見せることにした。


「ん? なんだこれ?」

「コレは風景を記録する機械です」


ケータイの説明とか出来ないからこれでいいよね?


「ほぉ。なるほどな、確かに見たことないものばっかりだな……」


先生はしばらく画面を眺め続けて言った。


「それで、このたくさん写ってる奴がお前のふられた香織ってやつか?」

「え?」


急に聞かれてポカンとしてしまった。

この教師さっきまで真面目に話してたのに急にニヤニヤして話してきやがったぞ!


「どれどれ? リトアス先生、わたしも見せてください!」


プリムも乗ってくるなよ!


「へー、確かに美人だぁ。あ、こっちにいるのがその彼氏かな」

「たぶんそうだろうよ」


何二人して納得してんだよ! ってかいつの間に操作方法覚えたの!? 見せたのと違う写メも見てるよね!

すごい居辛い、誰か助けて!


念を送っていると、先ほどの精霊少女シェアロがキッチンからお茶を持ってきた。


「お茶をお持ちしました。皆さんなに見てるんですか?」

「これか?これは異世界の道具らしい。風景を記録するんだとさ」


リトアス先生が説明すると興味深そうにケータイを触りだした。

そんなシェアロを無視して先生はこちらを向く。


「とにかくお前たちの話はわかった。圭輝は身寄りもなく、この世界の知識もないためどうにかしてほしいということだな」

「はい。よろしくおねがいします」


プリムと二人で頭を下げる。


「しかしどうしたもんかな……精霊と契約できればこの学校に入れてやることも出来るが。あとは住み込みで働けるところとかだな」

「精霊との契約って誰でも挑戦することはできるんですか?」

「そうだ。やってみるか? 精霊召喚師になれば学校に通いながら部活や依頼で金も稼ぐことが出来るだろうよ」

「部活や依頼とは?」

「この学校は部活で商売してもいいんだ。だから部活で会社を経営してるクラブなんかがある。そんなクラブに入れば給料をもらえるだろう」

「部活で会社経営ですか……」


学生がそんなことできるのか……

ずいぶん向こうの世界とは違うんだな。


「そして依頼というのは学校が学生の精霊召喚師を貸し出すことだ。学校にある学生ギルドに行けば掲示板に仕事があるからそれを受ければいい」

「なるほど。日雇いみたいなもんですね」

「まぁこの街じゃ学生になるのが無難だよ。寮もあるからね。どうする? 精霊契約に挑戦してみるかい?」


うーん、ここまできたら生きるために生活しないといけないし、元の世界に戻る方法もわからない。いいかげん覚悟を決めないとな。


「おねがいします!」

「プリムもそれでいいか?」

「はい、圭輝が決めたのならそれで」

「ふむ、んじゃそろそろ飯の時間だ。プリムはとりあえず食堂行け。こいつは食堂に行かせるわけにはいかないから、シェアロなんか作ってくれ」

「わかりましたー」


シェアロはキッチンへ向かう。そして、


「それでは失礼します。圭輝また後でね」

「おぅ」


プリムが部屋を出て行った。


「飯食ったら出発するぞ。今日は休日だからプリムの奴もついてくるだろ。準備しとけよ」

「準備? 何か準備がいるんですか?」

「心構えだよ、心構え!」

「はい、それは大丈夫です!」


それにしても精霊か……

契約できるといいな。

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