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やっぱりそこは異世界で……

自分の街が丸ごと消えている光景に異常なほどテンパった。


「ほんとに……ここは異世界なのか? ……日本って国はないのか?」

「聞いたことないわね」

「アメリカは? ……中国! イギリス! イタリア! ロシア! しらないか?」

「……ごめんなさい。聞いたことないわ……」


プリムは申し訳なさそうな顔をして首を横に振った。


「そんな……本当に異世界に飛ばされるなんて……」

「異世界人!? ユグドラシルの下で変な格好して寝てるからおかしいとは思ったけど……本当なの?」


ブレザーの制服はこっちじゃおかしな格好なのか……


「いやいや、マジですって。ってユグドラシル? って世界樹……だよね?」


よくゲームに出てくるよな……マジでファンタジーな世界じゃん……


「そう、こっちじゃユグドラシルって言い方が一般的」

「プリムはなんでこんなところに……?」


混乱のあまりどうでもいいことを聞いてしまった。


「わたしの精霊は幼くて人の言葉を喋れないからユグドラシルの中にいる精霊に翻訳してもらいに来たのよ。ていうか早速呼び捨て?」


そしてさっぱりわけがわからない


「この木の中に精霊とやらがいるのか?」

「中っていうか精霊の世界に繋がってるらしいわね」

「そうか……やっぱりこの木がどこかに繋がってるんだな?ふむ、ちょっとさっきの精霊見せてよ。それが本物ならいい加減腹を括るよ。うん!」

「ハァ……いいけど変なことするんじゃないわよ! したらまた燃やすから! 出ておいでフレイア」


そう言うとプリムの横に無数の小さな光が生まれ集まりだした。

手のひらサイズの人の形になりそれは真っ赤な炎に包まれた。


「す……すげー……」


思わずつぶやくと、ふん!と自慢げにしながら精霊を人差し指で撫でだした。


「近づいていい?」

「いいけど触らないほうがいいわよ? やけどするから」

「プリムは触ってんじゃん」

「あたしは大丈夫なの! 自分の精霊なんだから!」


なぜかはわからないけど怒ってらっしゃるプリムを無視して目の前に浮かんでいる精霊を観察することにした。

20cmくらいの大きさで、本当に火の塊だけで出来ているようだ。

背中に炎で出来たトンボのような羽が2枚ありパタパタと動かしている。


「なんか精霊って言うより妖精みたいだな」


おもわずボソッとつぶやくと、小さな精霊が「きゅ~?」っと鳴きながら小首をかしげた。


「ぶはっ!」


か! かか! かわいい! 何この愛くるしい生き物!


「プリム! この子ちょうだい!」

「だっだめよ!これ以上近づかないで! あっちいって。じゃないとまた火弾打つから!」

「くぅっ……」


あの火はもう嫌だ……ガクガクブルブル

クソ! トラウマになったかもしれん


「それにしてもどう見ても本物だよな……異世界なんてどうしたらいいんだよ……」





ようやく事実を認めた俺を、とりあえずプリムのクラスの担任でありプリムの寮の監督である先生の下に連れて行ってくれることになった。


「歩きながら簡単に説明するからついてきて」


行くあてのない俺はプリムの言葉にただ頷いてついて行くしかなかった。


草原になっていたほうの反対側に歩いていくと景色はまるっきり変わり、円の形をした大きな街があった。

街には、中世ヨーロッパのような石作りの建物でありながら、現代建築のようにビルのような高い建物まである。

目を引くのが街の中心に建てられた100mくらいの東京都庁のように下半分がくっついた大きなツインタワー・

学校の校舎とおもわれる10階建てくらいの大きな建物が、そのツインタワーを中心に10棟が円になるような形で建てられている。

そしてそのまわりに5階建てくらいの建てものが数え切れないほど建っていて、そこから外側は不規則に街が広がっていた。


「うわぁ……なぁプリム、これ全部学校?」

「うーん、学校っていうよりか街ね。一応学生のための街なんだけど、学生はだいたい2万人であとは教職員、関係者とか、普通に街に暮らす人、その家族も含めて7万人近くいるからね。学校はあの円の形にきれいに建物が並んでるとこ。真ん中の2つならんだ高い建物が『学生庁』で、その学生庁があるところが『中央区』。その周りに10棟ある所が『校舎棟区』さらにその周りにいっぱい建物がある所が『寮棟区』。ここまでが学生が生活するところね」


と丘を降りながら指をさし教えてくれる


「学校の周りは商店街や学生以外の人が暮らす街よ。王都に例えるとわかりやすいわね、学生庁がお城、校舎棟と寮棟が貴族の住む所、その周りは平民の町って感じで」

「なるほどねー、実際の学生と街の人と身分の優劣は?」

「学生も街の人も身分とかは変わりないわ。けど学生の中に王族や貴族なんてのがいるからそこらへんは気をつけてね。あとはあの学生庁にいる生徒会はこの街を自治してるトップの人間よ」


もしものときは行く当てもないし、楽しそうな街だからあの街でバイトでも探して暮らすかな


「ちなみに学校は何を教えてるの?」

「ここの名前はイルミンス学園ね、5年制で全クラスで2万人以上の国内外問わず色々な所から来る精霊召喚師を育成する学校よ」


2万人ってすごいな、総合大学なんかよりも大きいよな。


「そういえば、精霊召喚師ってのはなんなの?」

「ん~と、あなたに見せたフレイアが精霊なのはわかるわよね?」

「うん」

「ユグドラシルで契約の義を行って、自分のマナと合う精霊が自分を認めてくれたら契約完了で契約者の体を宿主にして精霊は力を貸してくれるようになるの。それが精霊召喚師」

「なるほど。契約の義ってのは俺でも出来るの?俺もあんなかわいい精霊ほしいんだけど」

「あんたねぇ……精霊をただペットとと一緒にするんじゃないわよ……神と対話できる上位の存在なのよ」

「ごめんごめん。フレイアがあまりにもかわいかったからさ……」

「ハァ……まぁ契約の義は誰でもできるわ。もっとも、精霊に認められることが出来るのは一握りだけどね」

「一握りか……ちと俺には難しそうだな……昔っからくじ運悪かったもんなぁ」


子供のころガチャポンで香織と拓也は2回でにょろにょろが出たのに俺だけ何回やっても出なくて泣いたこととかあったなぁ~。

ぐぅ……いかんいかん……今は忘れよう。


「精霊の力を使うだけならあなたにも出来るはずよ」

「っへ? どうやって!? 魔法みたいのが使えるの!?」

「うるさいわねぇ……あなたテンションの上下が激しすぎ……精霊は大きく2種類に分けられるの。ユグドラシルの中や契約して精霊召喚師の中にいるのが精霊。そしてこの世界のどこにでもいて実体のない、仮精霊ってのがいるの」

「かりせいれい?」

「そう、まぁ精霊の子供みたいなもので、契約してない一般人も祈詩いのりうたを言えば彼らの力を誰でも簡単に借りることが出来るの。もちろん仮精霊の力は精霊と比べるとほんとにわずかな力だけど」

「まじか! 精霊さん親切だな!」


案外お手軽だな精霊パワー。


「それにもちゃんとわけがあるの、まず精霊ってのは私たちの生活には欠かせない存在なのね。魔物退治や、戦争、街の警備、から火をおこしたり、水の確保や食料保存、土木工事、農作物の成長にいたるまでね」


まぁ、科学の代わりに魔法使ってますってみたいなもんか。


「けどそれは精霊も同じなの」

「同じ?」

「精霊の力を使うとき人間は自分の中にあるマナを使って力を使うの」


マナか……まぁマジックポイントのことだよな。


「そして精霊の力を使った後には、見えないけどマナの残り粕ってのが出るらしいの。精霊はそれを食べると成長していくんだって。それで成長した仮精霊は精霊になってユグドラシルに帰っていくっていわれてるわ。つまり精霊と人は共存してるってわけよ!」


なるほど~なかなかよくできたシステムだな。


「お?」


向こう街の入り口であろう門が見えてきた


「あー早朝は荷で入り口混むっての忘れてた」


横をみるとプリムが渋い顔をしていた。

よくみると行商人らしき人たちが大量に門の前にならんでいて、俺はこの異世界で初めてプリム以外の人間を見て少しの安心と不安を感じていた。

行列は検問の順番待ちらしく、行商人たちは軽トラみたいな乗り物の後ろに腰掛けて話をしていた。

ん?車?あれ動力どうなってんだろ。

俺は列に並びながらプリムに質問した。


「プリム、あれどうやって動いてんの?」


と指差して聞くと。


「あれはワゴットっていう人や荷物を運ぶ荷車ね。動力は何だと思う?」

「うーん、精霊の魔法?」

「まぁ正解ね。魔法で合ってるけど正確にいうとあれは風の精霊の力ね。あれがさっき話した誰でも使える精霊の力よ」

「へー風ってことは、なんか精霊ごとに属性でもあるの?プリムのフレイアは火だよね?」

「そうそう、火水雷土風氷木重光闇の10種類よ」

「重って重力?」

「そうよ」

「ほぉ~かっけー!」

「でも数は少ないわよ。木重光闇はレアな属性なの、この学校に何人かいるみたいだけど。あたしもまだ入学して2週間だからよくわかんないの」

「え!? 入学して2週間!? なんかベテラン臭がしたから新入生なんて思いもしなかったぞ!」

「ちょっと! それあたしが老けてるってこと!?」

「ちちがうよ! いろいろ詳しいから!」

「話したのって……この世界の常識ばかりじゃない……」


プリムはあきれた顔を見せてきたので言い返してやろうと考えていると、検問が自分たちの番になっていた。

学生のプリムがいたため俺たちは無事に街に入ることができた。





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