08 プロフィール:K 《やっと、前へ進める》
08 プロフィール:K 《やっと、前へ進める》
俺は神狩幸谷。
幼稚園と小学五年生までずっと一緒だった幼馴染の笹野咲が好きだ。
でも、それを自覚した時、彼女はもういなくなった。俺のせいだ。
笹野のお父さんも好きだ。だから、あの時、俺は渾身に「ごめんなさい」って伝えた。笹野のお父さんが「許す」などの言葉を言ってないけど、厳しく俺に正しいことを教えてくれたことに、俺は感謝している。
その後、親が「生かしてもらえるだけで有り難く思えろよ」って冗談のように話したから、俺は「笹野のお父さんが何をしてる人?」と聞き出した。
「ん~、商人?企業家?とか?」と返された。
以上はただ、笹野が日本に戻ったから、ふっと思い出したことだけで、それより、大事なことがある。
今日、駅前で笹野に会った。
不安な気持ちで笹野に謝ったら、彼女は疑問の顔で「何を?」と聞き出した。それで、やはり笹野は笹野だなって思って少しホットした自分がいる。
俺は言い訳をするつもりはないから、笹野をいじめたことに理由を付けずに、ただ俺は笹野に何をしたかを話して、謝った。
「成績悪いから、バカって本当だろう?」
「それはマジで悪い!成績はすべてじゃないのに!ごめん!」
「前髪で顔を隠しているから、ブスっても本当だろ?」
「がああー!!ごめんー!!笹野はブスだなんて、全ッッッ然思ったことないから!」
「走るのは遅いから、のろまってのも本当だろ?」
「いや!それな!なんでいつも他の女子に合わせてスピートを下げるのかよ?ってムカついたけど、俺は全面的に悪い!ごめん!」
でも、まさか、笹野は俺にいじめられたとは微塵も思えないことに驚いた。
俺から見れば、確かにあの時、いじめがエスカレートして、クラスの男子が笹野の机に汚い言葉を書いたこともあった。
笹野はまったく消そうとせず、そのまま使ったところ、先生に『机を換えて』と言われた記憶もあったような……。
あの時、クラスの男子がわざと笹野にボールを投げたり、後ろから蹴ったり、叩いたりしたこともあった。俺は最初は奴らを止めていたが、だんだん怖くなって、その行動を無視した。
笹野は平然な顔をして、向かってきた攻撃を全部避けて、『すげー!スーパーマンだ!』って隣のクラスの友達が言っていたのを聞いたこともあったような……。
あの時、俺が奴らのいじめ行為を無視し始めたとき、クラスの女子たちも笹野のことを無視し始めた。
いや、最初から、笹野は誰かに話しかけられないと一日中無言で過ごせる子のような気がするから、俺は『今の笹野』に尋ねたら、彼女に肯定された。
「ああ、自分から話をかけるのなんか恥ずかしい頃なんだよ。あの時は」
そして、あの時、「クラスの男子と喧嘩して、職員室に呼び出された」とのことも彼女に聞いた。
そしたら、彼女はそう答えた:
「物が壊されるのは嫌だから、腕を外した」と先生に返事したら、先生が凄く嫌なことを私に言った。なんか、もやもやして、でもそのもやもやは何なのかが分からないから、泣き出すのを我慢できなくなった。
そういう恥ずかしい時期なんだよ。あの時の私は」
と、以上は笹野からの返事だった。
今日は笹野に謝るために彼女を呼び止めたのに、俺は思わず笑い出した。このことに対しても「ごめん」って言った。この三十分くらいの間で俺は何回「ごめん」って言ったのかよ!って自分にツッコむくらいだ。
「先生は何を言ったかって聞いていい?俺もそれを言わないように気を付ける」
「『男の子は好きな人をいじめるんだよ』って言った」そう言ってる笹野はまた怒ったような顔をした。
それで俺は、あの時の笹野のお父さんに対して思った謎を解けた。
「好きな人をいじめる行為を肯定的に捉えると、暴力やいじめが容認されることになる。しかし、どのような理由であれ、いじめや暴力は他者の尊厳を傷つける行為で、決して容認されるべきではない。子どもは成長過程で適切な感情表現を学ぶ必要がある。しかし、いじめることで好意を示すという誤った観念を持つことなく、感情を正直かつ他者に配慮した形で表現する方法を教えられない人には、先生を務めることはできない」
と、笹野のお父さんが職員室で担任の先生にそう言った翌日から、担任の先生が解雇された。
だから、笹野のお父さんが絶対ただの商人や企業家ではないと分かった。
「そっか、笹野、ありがとうな。俺はずっと、笹野が好きだって伝えたかった」
「ごめん、私、女子が好きかも」
「え~、俺、振られた?」
「そうだな」
「そっか~、ありがとうな」
俺はやっと笹野に「ごめんなさい」って言えて、「好きだ」って言えた。
振られたけど、不思議と悲しい気持ちはなかった。もしろ、長い間背負っていた石をようやく肩から下ろせたような気分だ。
俺は一気にラーメンを食い終わった。会計してから、「笹野、優、会えて良かった。またな~」って言い、素早くファミレスを出た。
出る前にチラッと優の表情を覗くように伺った。
まるで夜叉のような顔で、怖かった。
いや、俺が笹野を呼び止めてから、優の奴はずっとそんな顔をしていた。
優の敵に回したらって想像するだけでゾッとするけど、俺はやっぱり言いたいことを言わないと気がすまないから。悪いな、後で飯でも奢るよ。
それに、優の奴がそこまで威嚇するような目をするなんて、大発見だ。俺と違って、もっと自分の感情をコントロールできる奴だと思っていたよ。
でも、まあー、優なら大丈夫だろう。笹野が「女子が好き」って理由で俺を断ったけど、優の女装は普通の女子より綺麗だからな。
頑張れ!って俺は心の中で応援した。