07 プロフィール:S 《神に願いを口に出したら叶えないから》
07 プロフィール:S 《神に願いを口に出したら叶えないから》
私は笹野咲。
どこにでもいる極普通の高校生。
でも、その前に、中学の話を聞いてもらいたい。
私は日本に戻ったのは中学三年生の時だ。もう、昔の家には住んでいないが、鍵はまだ持っている。
どうせ、空き屋になるなら、友達に住ませてもいいと思って、お父さんに話したら、すんなりとオッケをもらった。
んん……、この話、ちょっと語弊があると思う。あの子にとって私は「友達」なのか?
私はあの子の名前も知らないし、どの学校を通っているのかも知らないし、家はどこにあるかも知らない。
いつも、公園で会っているから、私は密かにあの子のことを「エリザベス」と呼んでいる。
なんか、「エリザベス」という顔をしているから、何となく。でも、一回も呼んだことないし、よく名前を変えるから、ほかにどう呼んでいたのかは忘れた。
そして、もう一つ。あの子はお母さんが嫌いらしい。
だから、「エリザベスのお母さんをエリザベスから離してもらえないかな?」ってお父さんに相談したら、すんなりとオッケをもらった。
そうして、私は後腐りなくイタリアの高校へ行く手続きをし始めた。
二回目だし、すんなりと終わった。
その隣の塾で私は神狩くんを見た。
神狩くんは、髪の長くて座る姿勢が凄く綺麗な子とお話している。
二人は楽しそうに話しているから、その間を割ったら申し訳ないような空気なので、私はそのまま家に帰った。
暫くして、飛行機に乗る日に私はふっと思い出した。
「鍵、渡していない」
だから、バイクに乗ってあの公園に行ったら、あの子がいった。
そのことで私の心の中にある一つの謎が解けた。
あの子は公園に住んでいるんだな。家があるのに、公園に入り浸っているとは、やはり、「エリザベス」だね。
鍵を渡したら、私は飛行機を乗った。
そしてまた、は!っと思い出した。
「私の家にお父さんが付けた隠し監視カメラがあるよ。でも、トイレとお風呂場と寝室はないから安心して」ということを伝え忘れた。
まあー、いいか。
お父さんは「映像通信と通話はだめが、文字だけのメッセージならいい」って言ったので、あの子とはちゃんと繋がっているつもりでいたが、高校生になった途端、あの子の返信はなくなった。
最後のメッセージは『何組?』だった。
そして、私は高校二年生の時に日本へ戻り、潮鳥高校へ転入した。
探したが、あの子はいない。……ごめん、違う。実は特に探していない。
それには理由があるから。
職員室でこっそり学生名簿を見たが、「あ、名前知らない」って思い、この手段を諦めた。
そして、あの子と最後に会ったのは小学生の時だよ?「女性は十八になったら別人みたいに変わる」という言葉があるだろう?だから、会っても気づかないだろうし、気づかれないだと思う。
でも一番は、「あの子はもう私に会いたくないかも」という可能性がちょっと怖いからだ。
やはり、神に願いを口に出したら叶えない。
お父さんはいつも正しいのに、あの日、私は神社で「あの子にまた会えたらいいな」って思わず口にしたせいで、もう叶うことはない。
「神なんて金儲けの道具だよ。信じるより、利用して」とお父さんが言ったので、やはり、神は私の願いを叶えられない。
だから、諦めた。
神より、自分を頼ることにした。
水族館から戻ったら、小学生の時に住んでいた家へ行くことに決めた。
そして、駅の改札を出た時、フルネームで呼ばれた。
声の方向を見て、「あ、神狩くんだ。お久しぶり~」と手を振って挨拶したら、なぜか、優が顔真っ青になって、私の手首を掴んだ。
「あの、俺、笹野に……」
と、神狩くんの話が途中なのに、優は私を連れて行かせようとした。「咲、あっちに『ゾンビ記録』シーズン2のグッズが!」
仕方ない、『ゾンビ記録』のグッズなら、仕方ない。
「待て!」と、神狩くんも私の手首を掴んだ。
これはまさに『ゾンビ記録』シーズン2に、名前もない小者配役がゾンビに体を引き裂けられた場面だ。
見るのはいいが、体験するのはやめましょう。
そう思い、私はお父さんから授けてもらった体術で、神狩くんの手も優の手も解いた。
「えっと~、ファミレスでいい?」と、私はそう提案した。
「ごめんなさい」ずっと沈黙していた神狩くんが、私は特大チョコパフェを食べるためにスプンを持ち上げた時、そう言い出した。
仕方ない。私はまたスプンをテーブルに置いて、話を早く終わるようにしなくちゃって思った。
それは、「家族と、友達と、食事してる人と、両手が後ろに縛られた人の前以外に、進食するのは危ない」ってお父さんが言ったからだ。
だから、早く話を終わらせようと思った私は、一番肝心な質問を聞き出した。「何を?」
そう、神狩くんの「ごめんなさい」は何に対するの「ごめんなさい」なのかを、先に知る必要がある。
「え?」これは神狩くんの声だ。
「え?」これは優の声だ。
「え?」そして、これは私の声だ。
神狩くんの説明を聞いて、私は神狩くんの「ごめんなさい」は何に対するの「ごめんなさい」なのかを分かった。
私も「全然、気にしていない」と言い、転校と引越しの理由を話した。あの日、職員室で号泣した理由も聞かれたから話した。
そしたら、神狩くんは釈然としたような顔をしていながらも、少しだけ罪悪感があるような表情をして、そう告げた。
「俺はずっと、笹野が好きだって伝えたかった」
優は店に入ってから、ずっと真っ青な顔して、私の服の裾を掴んでいる。