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06 プロフィール:Y 《失った者は二度と戻れないと思った》

06 プロフィール:Y 《失った者は二度と戻れないと思った》


俺は夕暮優(ゆうぐれゆう)


潮鳥高校二年生。今は学校生活だけでなく、毎日楽しいんでいる。


その前に中学の時の話を話そう。


中学三年生という名の試験地獄の頃、俺は失っていたヒーローに再び出会った。


彼女は昔と同じで、かっこよくて、可愛くて、綺麗だ。


そして、今度も初めて出会った公園で再会した。


残念ながら、あの時の俺はまだ女子の制服を着ていて、「この世界よ!爆発しろ!」って、中二みたいなセリフをぶつぶつ言っている時、話をかけられた。


「『ゾンビ記録』のシリーズ、好きなの?」


「はあー!?……っえ!……あっ……」俺は彼女を見て、言葉を躓いた。


また夢だと思って、自分の頬を摘んだ。痛い。


また幻想だと思って、目を擦った。まだ、そこに居る。


症状が劣化したかと思って、手を伸ばしたが、俺は彼女に触れることを躊躇した。


また、消えたらどうしよ?って。触る瞬間、また消えたら、多分、いいえ、絶対、泣くよ俺って。いっぱいいっぱい、考えていている途中で、彼女は俺が出した手を裏返して、一つ鍵を置いた。


「……っえ!……あっ……」


混乱した。でも、消えないでくれて、よかった。


彼女は手を上げて、俺の住んでいるビルに指差して、話した。「1006室。逃げてもいいと思う」


そう言ったあと、彼女は離れようとしたから、俺は咄嗟に掴んだ。


彼女はびっくりしたようで、悪いと思ったが、可愛いとも思った。


「どこに行くの?また戻るの?なんで消えたの?この鍵は何?くれるの?その話どういう意味?」


「ジョベルティ。うん。お父さんは海外に行くから。私の家。うん。また泣きそうな時はいつでも逃げていい」


なんかすんなりと返事した彼女を見て、俺はぽーっとして、頭がフリーズしたようだ。


やっぱり、彼女はかっこいい!


「飛行機」そう言って、彼女は俺の手を払って、走ってきた。


あ、また、俺のヒーローはいなくなるのか?


嫌だ!待て!


「いつ戻るの?」俺は彼女に追いつけなくて、思わず叫んでしまった。お母さんは「女の子は大声を出してはいけない」って言ったのに。


そしたら、彼女はまた俺のほうへ走ってきた。


ああ、俺のヒーローが俺のほうへ走ってきた。かっこいい、可愛い、綺麗、幸せだ。


「多分、高校二年の頃だと思う」


その言葉を残して、彼女は振り替えずに消えていた。


でも、戻ってくるって言ったから、俺はもう一度叫んだ。「潮鳥高校!待ってるよ!」


そして、高校生になって、お母さんは田舎へ引っ越して、俺は彼女の家に住み始めた。


俺のヒーローが戻ってくるのをずっと、待っていた。


高校二年生になった夏に、彼女は俺のクラスに転入した。


「初めまして~、イタリアから戻った笹野咲って言います。咲って呼んでいいよ、よろしくね~」


そう挨拶していた彼女はかっこよくて、可愛くて、綺麗と思った。本当、泣きそうになる。


やはり、昔となんも変わってなくて、優しくて、強くて、どこか天然で、不思議で、何をするのかは予測不能で、面白い。俺はついつい、目で追った。


でも、咲は「男の俺」に気づかなかったようだ。


それで少しホッとしたような気もあるけど、寂しい気もある。


「イタリアから来たイケメン女子」ってタイトルだけで、学校中を騒いていた。


授業はまだしも、授業間の休みの時も、昼休みの時も、放課後も、土日も、学校が休みの時も、咲は学年問わずに女子に囲まれ、掴まれ、告られていた。


もはや、ブームになっていた。


男子の間にも、なんだかんだ、咲が「美人すぎだろ!」とか、「やばっ、ジャージを着てるけど可愛くね?」とか、バカにも程があるだろうという言論も出てきて、三年のバスケ部の先輩が咲のことを狙っているという噂も耳に入った。


もうー、ダメだ!これ以上はダメだ!


そうして、俺は咲の隣にいるようになり、彼女の友達を「選別」して、仲良しのグループを「定着させて」から、この変なブームをやっと断ち切った。


「夕暮優だね?優っていい?」


咲は名簿を見て、俺の名前を呼んでくれた。やばっ、泣く。


「ああ、いいよ~、俺も咲っていい?」


「うん!」


本当にやばい!笑顔、可愛い。


俺、変な顔してない?声、震えてない?咲って言えた。やった。俺のヒーローは笹野咲という名前だね。かっこいい、可愛い、綺麗な名前だね。


これから、咲って呼んでいいって言った。やった!


これから、優って呼んでくれるって言った。やった!


スーハー!スーハー!夕暮優、冷静になれ。これからだ!これからが本番だ!俺はもう、笹野咲を失わないようにちゃんと掴むんだ。


俺は、代わりに英語スピーチを出るのを条件にして、咲を水族館に誘った。


でも、彼女はわざと「さりげないように話して」、また「さりげないように誘う」ような言葉を言った。


どうやら、『女子にモテるイケメン女子』という設定に徹したいみたいで、本当、可愛い。ちょっと残念だけど、かわいい!


でも、迂闊だった。


水族館で、咲が日野江由奈に告白された。


日野江由奈は綺麗な顔を武器にして、取っ替え引っ替えな奴で、頭がきれて、ずる賢い奴だから、本気で誰かを好きになるなんて、俺の誤算だ。


しかし、その相手が咲なら、「いいセンスだ」と褒めるしかない。


咲はやはり優しい。


友達に告白されても、気遣いのある対応で、傷つけないような厳しめの言葉をあえて選んだ優しさ。


咲が日野江の告白を断ったことで、俺はホッとしたが、心細いとも思い始めた。


もし、俺が告白したら、もう友達にはなれないのか?


そう今詰めていた考えが頭の中にぐるぐる回っている時、駅前で、ある人が咲のことを呼んだ。


!?……神狩幸谷?


幸谷は、咲の知り合いなのか?


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