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04 プロフィール:S 《女子は男子が好きな女子が嫌いかも》

04 プロフィール:S 《女子は男子が好きな女子が嫌いかも》


私は笹野咲(ささのさき)


今は高校二年生。私は憧れだった人のようになった。でも、少々勢い過ぎたかもしれない。


小学校の件で分かったことがあった。それは、「女子は男子が好きな女子が嫌いかも」ということだ。


でも、あの段階では、そのことは単なる推論に過ぎないから、私は三年間をかけて、実験した。


小学校六年生から中学校二年生、この三年間で色んな対象を観察して、言葉で彼女たちの行動を誘導して、最後は自分の身を使って実験を行った。


そして、この推論は確立された。


ここの言う「好き」とは、明らかな行動で起こした「媚びる」ではなく、ただ単に「性的指向」としての「好き」を言う。


従って、中学三年生のこの一年間をかけて、私は「女子にモテるかっこいい女子」を演じてみた。


結果はオーライ。そして、それが高校生の私になった。


それができるのは神狩くんのおかげで、あの名前も知らない子のおかげでもあった。


神狩くんの真似で、明るく振る舞い、勉強も頑張って、体も鍛えてきた。


あの子の教えで、人を意のままに誘導して、自分が好かれるように仕組んで、先生方の心も掴んだ。


今でも意図的に人の目を避けるようになるが、「眉の間を見ればいい」ってあの子に教わったのはありがたいと思う。


でも、やはり、少々勢いが過ぎたと思った。


「咲ちゃん~。放課後、一緒にパフェ食べようよ~」


「ええ~、私が先に誘ったのに~」


「カラオケ行きたい~」


そういう風にわいわいして、自分勝手に話している女子は嫌いではない。でも、私は鍛えすぎたせいで、身長も172まで行ったので、押し付けられる胸を少しだけ視線を下に行けば谷間が見れるのが、非常に困る。


まず、私は小学生の時、「可愛いな」と女の子に対して思ったことがあり、「私、女子が好きなの?」と自分の性的指向に疑問を持ったことがある。


次に、普通にそういうことを恥ずかしいと感じる女子もいることを分かってほしい。


「何、そのくそ羨ましい話?咲、お前バチ当たれ!」


「あのパーマの子は俺が狙ったのに、『タイプは咲ちゃん~』って言ったよ~咲~、慰めて~」


「いや、それは『お前はタイプじゃない』の意味だ。私は由奈ちゃんとはただの友達だよ」と、私は寄せてきた頭を推し開けた。


「じゃ~、咲のタイプはどんなのかな?男子に興味ある?」


この潮鳥高校は制服制限が緩い学校だ。基本的に、毎日ジャージを着ている私は、本当に神狩くんのように男子にも女子にも、別のクラスにも友達がいる。


特に楽しいとは思わないけど、普通に高校生活を満喫している。


そして、そういった「タブーに触る」ような会話でも、4年間にかけて実験したら、当たり障りのない返事もできた。


「ん~、私、結構、お父さんっ子だよね~」と、ふざけた口調で言えばその質問を避けられて、話題もバカなほうに転がる。


実験の甲斐があったな、と思う。


お父さんと海外に行き、また日本に元った時、私はこの潮鳥高校に転入した。


帰国子女ってことで一時的に小さな騒動になったけど、夕霧優の協力で無事収めたと言っても過言ではないから、優がこの学校での初めての友達だ。


でも、時々こうして回答し辛い「タブーに触る」話を振ってくるから、実はちょっと苦手だとも思った。


感がいいと言うのか?それとも、ただの天然なのか?は分からないけど、やはり、優は一番仲が良い友達だって思う。


私は英語が苦手だ。そのことについて、はっきり言わせてもらいたい。帰国子女だからって、英語系の国から帰ったわけじゃないなら、英語が苦手な人もいるんだ。


私はイタリアから帰ったから、ぺらぺらの英語を求められても困る。


だから、英語のスピーチに選ばれた時、優が代わりに出てくれることを感謝している。が、条件は水族館に行くってことに勝手に決められた。


もちろん、『女子は男子が好きな女子が嫌いかも』といった検証から出来たこのキャラとしては、彼と二人きりで出かける訳がないから、私は何気なく「水族館に行く」って話したら、一緒に行きたいって子はたくさんいた。


結果、その話を聞いた男子と女子、皆各自の仲良しグループを誘って、合わせて八人で一緒に遊ぶことになった。


優が全部をお見通しのようだが、わざと呆れたような顔を作って、「やっぱ、咲はいつも予想外の行動を取るな」ってツッコミのように言った。


私は女子にモテている。そのように仕組んでいたから。


でも、本気で私に告白するような女子がいるとは思わなかった。


水族館でのちょうどいい暗さに、水波の反射で、告白してきた子の涙がダイヤのように輝いた。


私は彼女の気持ちに答えることはできないけど、彼女が泣き出すほど一生懸命で気持ちを伝えているってことは分かる。


「……ここは水族館だよ。こんな綺麗なところで、辛い思いをしたら、もう二度と水族館に行きたくないかもしれない。由奈ちゃんはたくさん悩んでから、頑張って気持ちを伝えたのに、トラウマになるなんて、私は嫌だと思う」


「……ふっ、咲ちゃんは優しいね」


「由奈ちゃんが優しいから、私も優しくできただけだよ」


「じゃ、まだ友達になれる?」


「もし、由奈ちゃんが私のことを少しでも期待しているなら、ダメかも。ごめんね」


「……うんん、…ごめん、私、先に帰るね」


「うん」


「あの、……咲ちゃん、先言ったこと、その」


「うん、二人だけの秘密だよ」


「ありがとう」


その翌日、学校で会った時、あの子は目が赤い。いつも通り話はするけど、私の腕を掴んでくることはなくなった。


あの時、ああ言ったのは正解だったのかは分からない。でも、そのほうがいいと思った。


由奈ちゃんを断った理由と言うと実は、私は「好きかもしれない子」がいるからだ。


だから、高校では「女子には嫌われない女子」になれるように実験し、頑張っているだけで、誰かを傷付けるのは本望ではない。


だって、誰でも、好きな子に嫌われたくないだろう?



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