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09 プラトニックな交際

 週が明けてあゆさんと会社で会うと照れ臭い感じがする。


「おはよう」


「お、おは、おはよっ!」


 出勤してたあゆさんと挨拶を交わす。

 座ってたあゆさんが僕が来ると立ち上がって落ち着きない様子。

 そんなあゆさんが微笑ましく見える。


 社内恋愛は照れ臭いから知られるまでは隠しておこうと話してた。

 しかし、あゆさんのこんな態度。

 いつ知られてもおかしくないと僕は感じてしまったものだ。


 机に座ってても、ふとあゆさんの方を見ると僕の方を見てる。

 視線が合うと顔をほんのり赤くして慌てて隠れるような仕草を取る。

 僕まで照れる。

 男と付き合ったことのないあゆさんの純朴さが新鮮だった。


 付き合い始めてちょっとした頃だった。

 いつものように外回りに出掛けようとした所、あゆさんに呼び止められる。


「何? どうかした?」


「……ちょっと」


 僕を誰もいない資料室へと連れてった。


「どしたの?」


 僕にはあゆさんの行動が理解出来ずにいた。

 あゆさんは恥ずかしそうにしながら鞄をゴソゴソ。


「これ」


 差し出されたのは小さな巾着だった。


「これって? お弁当?」


「うん。美味しくないかもしれないけど、良かったら食べて」


「ありがとう。すげーうれしい!」


「あんまり味とか期待しないでね。冷食ばっかりかも」


 笑いながらもあゆさんは照れてる様子。

 僕はあゆさんの手作り弁当を片手に外回りに出掛けた。


 楽しみにしてた昼食。

 巾着を空けると女の子らしいというか、かわいらしい弁当が現れた。


「午後もがんばってね!」


 そんな一言を書いた手紙が入ってるのもあゆさんらしい。

 一口一口を僕は噛みしめるように食べた。


 帰りに待ち合わせし、ご馳走になったお弁当箱を返した。

 話題はあゆさんのお弁当の話になった。


「あの、大丈夫だった?」


「大丈夫も何も美味しかったよ! 感動しちゃった」


「そんなに褒められる程の物じゃないよ。でも、嬉しい」


 僕の喜んでる様子にあゆさんも顔が綻ぶ。


「これからも作ってこようか?」


「マジで? あ、でも何か悪い気もするなー。」


「ううん、いいの。どうせ、自分のも作るんだし」


「いいのかな?甘えちゃって……」


「いつも外回りだと外食か買った物って聞いたから。それならお弁当の方がいいでしょ?」


「そんなこと言ったけか?」


「ちゃんと覚えてるよ」


 僕でも言った記憶がなかったことをあゆさんは覚えててくれた。

 僕はそのことにも感動してた。


「じゃあ、お願いしよっかな? でも、無理だけはしないでよ」


「分かった♪」


「何? 今の笑いは?」


「鈴木君の為にお弁当作ってあげたいなーって思ったの。それだけ」


 付き合い始めはこんな感じと思いながらもあゆさんと僕は急激に仲良くなっていた。


 しかし、問題が一つ。

 純情故が起こす大きな隔たりがあっと。

 スキンシップというか、あゆさんは恥ずかしいらしくなかなか応じてくれなかった。


「ちょっ……待って……え? 何しようと……」


「え? 何って、キス?」


「キ、キス……」


 それだけであゆさんは顔が赤くなってた。


「だめ?」


「だめっていうか、ちょっと……ごめん! 恥ずかしくって……」


 キスしようとして顔を近づけるだけで、あゆさんは過剰に反応してしまう。

 いくら男と付き合ったことがないといっても、ここまでとはと思ってしまう。

 付き合って一ヶ月も経とうとしてるのに、僕とあゆさんはまだキスもしてないプラトニックな関係を続けていた。

 まるで中学生みたいな、というか今時の中学生以下の付き合いだった。

 あゆさん相手なら仕方ないと思いながら、それでも僕にとっては楽しい毎日を過ごしていた。


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