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16 誕生日プレゼント

 あゆさんとの付き合いは順調に続き、数ヶ月が経とうとしてた。

 会社でも公認になった訳だが、今となってはそれもいい状況にもなっている。

 あゆさんのドジっぷりは変わりないが、綺麗になったともっぱらの噂だ。

 そんな話しを聞くと僕も嬉しい。

 何事も順調に進んでたと思う。


 その日、僕は工藤と買い物に出掛けていた。

 もちろんあゆさんには内緒だ。

 内緒と言っても当たり前だが浮気してる訳ではない。

 実はあゆさんの誕生日が近かった。

 そのプレゼント選びの手伝いを工藤に頼んでいた。


 工藤にはあらかじめ先週の内にあゆさんと出掛けてもらってた。

 その時にさりげなくお店に寄り、あゆさんの好みを聞き出すようにお願いしてた。


「毎週、毎週、休み潰してくれちゃって……。このお礼は高くつきますからね?」


「悪い。それなりの礼はするって」


 僕と工藤は宝石店に入る。


「いらっしゃいませ」


「こんにちは」


「あら? 今日は彼氏とご来店ですか?」


「うふふ。そうなんですよー」


 案内する店員に愛想良く振る舞う工藤に感心する。

 尤も、返す言葉は適当なのだが……。


「……俺がいつお前の彼氏になったんだよ」


「まあまあ、そんな細かいことはどうでもいいじゃないですか」


 辺りを見回しながら、目的の物の場所へと向かう。


「これ! これですよ、あゆさんがいいって言ってたの」


「……これなら大丈夫だな」


 値段を見るととりあえず予定範囲内。


「なかなかがんばりますね〜、鈴木さん」


「誕生日だからな」


 僕は迷わずに購入を決めた。


「サイズは大丈夫ですか?」


「大丈夫でーす♡」


「お似合いですよ」


「いやー、そんなぁ……。お似合いですって♡」


 僕と工藤が、なのか?

 それとも指輪が工藤にお似合いだと言ってるのか?

 店員相手にほ説明が面倒だから、そのまま僕を彼氏に見立てて相手をしてる。

 工藤の営業成績の良さを目の当たりにした気がする。

 

 何を買ったらいいか迷うのは目に見えている。

 どうせなら欲しい物をプレゼントしたいと思っていた。

 工藤頼みとはいえ、あゆさんの欲しい物をリサーチ。

 無事買えたことで僕はホッとしてた。


   ◇   ◇   ◇


「鈴木さん、鈴木さん。」


「何だ?」


「お礼、これでいいですよ」


 帰りの途中、寄った店の中での出来事。

 大きなヌイグルミを両手に抱え、僕の方を見てくる。


「お礼はするって言ったけどさ……」


「そんな高い物じゃないですって」


「お前さ、いい大人がヌイグルミって?」


「別にいいじゃないですか」


 僕とあゆさんと工藤は会社でも仲良し。

 時々、休日に三人で遊ぶ機会もある。

 あゆさんは工藤とはすっかり打ち解け、今では名前呼びにする程仲良くなってた。


「そんなの彼氏に買ってもらえよ」


「……彼氏? いませんよ」


「あれ? 同級生のは?」


「この間別れたって言いましたよ」


「そうだっけ? あ、悪い」


 気まずいこと言ってしまったと後悔。

 言われたことなど、全く覚えていなかった。


「いいですよ。どうせ私の話しなんか聞いてないんですよね?」


 いちいちトゲのある言い方をする。


「だから、悪かったって」


「ちなみに私の誕生日って、あゆさんの一日前なんですよ」


「そうだったな」


「だから、お礼も兼ねてってことで。お願いします♪」


 工藤のこんな調子にはほとほと参る。

 一緒にいて楽しいのは確かだが、この強引な所には手を焼いてしまう。


「あゆさん、きっと喜びますよ」


「そうだな。ありがとうな」


 うるさい工藤を黙らせながらようやっと店を後にした。


「よし! じゃあ、お礼の飯でも行くか」


「……お礼ってご飯なんですか?」


 文句を言いながらだが、それでも人一倍食べられたのはご愛嬌。

 あゆさんのプレゼントを買えたことで僕は満足していた。

 これから起こることも予想出来ずに……。

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