光の剣
眩い光とともに現れた一振りの剣。
その剣は銀の刀身を持ち、その鍔には赤の宝石が煌めいている。
──きれい。
ミノガントスに囚われながらも、リルフィリアはその剣の神々しい美しさに目を奪われた。
「あっ、ハート!!」
すると、その剣の奥で倒れていたハートがむくりと立ち上がった。
ミノガントスの攻撃を受けて大きなダメージを受けたはずのハートであったが、その足取りはしっかりとしている。
そして、ハートが魔方陣の中へと進んでいき、光り輝く剣を掴んだ。
「──カエルム=グラディウス」
ハートがそう口にしたその瞬間、魔方陣から膨大な魔法力が、光の柱となって立ち上がった。
その大きく、とめどない魔法力にハートの衣服がはためき、その髪が逆立つ。
剣を握ったハートの瞳が、金色に輝いていた。
「オオオオッ!」
異変を感じ取ったのか、ミノガントスがハートに向かっていく。
「───っ、きゃ!!」
ミノガントスに体を捕まれたリルフィリアは、乱暴に体を上下に揺らされ、視界からハートを見失う。
「オオオッ!!」
ミノガントスが片手に握る斧を振りかぶった。
その瞬間、地面を蹴ったハートが、びゅん、と加速してミノガントスに向けて跳躍した。
一瞬のうちにミノガントスに肉薄するハート。
そのスピードにミノガントスは反応できなかった。
光の剣が一閃する。
バシュッ!
「オ"オオオオッ!!」
ミノガントスの突然の叫びと同時に、リルフィリアを捕まえていたミノガントスの腕が、その付け根から血液らしき液体を吹き出しながら切り飛ばされた。
「きゃっ!」
切断されたミノガントスの腕が宙を舞う。
その際にリルフィリアを掴んでいたミノガントスの指の力が緩み、リルフィリアの体が空中に放り出された。
「───っ!!」
何が起きたかわからないまた、思わずぎゅっと目を瞑ったリルフィリアであったが、直後に体が温かい感触に包まれるのを感じた。
ミノガントスの左腕を切ったあと、地面を再び蹴って飛び上がったハートが、空中でリルフィリアの体を受け止めて抱えたのだ。
そして、ハートはリルフィリアをしっかり抱えたまま地面に柔らかく着地すると、すっと丁寧に彼女を地面に降ろした。
「は、ハート……?」
幼なじみが見せた超人的な躍動に、半ば呆然とリルフィリア。
「……」
しかし、ハートは何も応えない。彼の瞳はまっすぐに巨人の魔物に向けられていた。
「オ……オ……」
片腕を失ったミノガントスが、よろめきながらハートに近づく。
「ウ"オオ!」
ミノガントスが怒ったような雄叫びを上げ、ハートに向かって斧で攻撃してきた。
だが、ハートは動じなかった。
仁王立ち振り下ろされた斧に向かって、軽くいなすように剣を下から逆袈裟に切り上げた。
ズオッ!!
その瞬間、剣から光の斬擊が迸り、そのまばゆさにリルフィリアは目を細めた。
光が晴れたかと思うと、巨大な物体が宙を飛んでいるのが見えた。
それは斧を握るミノガントスの右腕──肘から下がきれいに切断され、ミノガントスは両腕を失った。
「オ"オオッ」
同時に、ミノガントスがくぐもった叫びを上げる。
間髪をいれずハート飛び上がった。
「はあっ!!」
跳躍したハートが、ミノガントスの脳天に剣を振り下ろす。
「──ウ"オ"ッ」
短い悲鳴とともにミノガントスが巨大な光の柱に全身を包まれ、光に焼かれたその巨体が消滅した。
「ハート……」
あっという間にミノガントスを葬ったハートに、リルフィリアが驚愕しする。
「──あっ!」
しかし、ハートの背後から、ウルヘルヴたちが襲いかかってきた。
「ガアッ!」
ハートめがけて飛びかかるウルヘルヴ。
しかしハートは、ウルヘルヴよりも素早い動きでそれをかわすと、すれ違いざまに剣を一閃させた。
一刀両断されたウルヘルヴが、声も上げられずに二つに別れて地面に落ちる。
「ガウッ」
しかし、また別のウルヘルヴがハートに襲いかかった。
その個体だけではない。辺りにいたウルヘルヴが次々とハートに殺到する。
ザッ!ザッ!バシュッ!
ハートがウルヘルヴの群れの間をすり抜けながら、剣を連続で振るう。
どのウルヘルヴも一振りのうちにハートに切り捨てられた。
「ガアアッ!」
今度はハートに向かって、何体ものウルヘルヴが同時に飛びかかってきた。
ハートが剣を横に構える。
「──はああっ!!」
そしてハートが大きく剣を横に薙いだ。
────カッ!
剣から放たれた光の斬擊が辺り一帯を覆う。
光はハートに飛びかかったウルヘルヴだけでなく、森の木々の間に潜んでいたウルヘルヴたちをも包んだ。
光の瀑布のなかで、ウルヘルヴたちは塵となって消滅した。
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