表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/78

2.能力確認★

「おっと」


 光が収まった時、私は斜面に立っていました。

 数歩、たたらを踏みます。

 幸い、緩やかな傾斜だったため、転生直後に転落死するという間抜けな事態は免れました。


「……山、ですか」


 辺りには木々が生えています。

 斜面の反対側を見ると、そこも青々とした木々に覆われた山でした。

 幼少のみぎりに幾度か訪れた、母の実家を思い出していると──。


 ──カチリ。


 と、何かが噛み合う感覚がありました。

 《種族進化》が可能になったことが、直感的に理解できます。


「しかしおかしいですね、《種族進化》が人間に起こることは稀だと聞いていましたが……」


 それも、かなり《レベル》を上げた後でなくてはならないそうです。

 この状況は非常に不可解です。


 とはいえ、《種族進化》にデメリットは無く、ばかりか能力が大幅に向上するとのこと。

 《種族》に合わせて新しい《スキル》も得られるらしいです。

 どうすれば出来るかは本能的に分かりますし、早速やってみましょう。


「…………」


 自身の内側へ意識を向けて、グッと力を込めます。

 胸の中心になにか、熱いものが集まって来ます。

 やがて熱が最高潮に達したところで横溢(おういつ)。血管を巡り、神経を介し、体の隅々まで行き渡りました。


「あっさり終わりましたね」


 時間にして数秒。それだけで私の変容は完了しました。

 背が伸びたり角が生えたりはしていないようですが、身体能力が上昇したため体が軽いです。


 それから、《スキル》も得られました。

 進化したことで得た《六神通》を使い、自身の《ステータス》を確認します。


===============

人間種―仙人 Lv1

個体名 ヤマヒト


スキル 具心具召喚Lv1 仙身丹Lv1 ハートアラートLv1 六神通Lv1


称号 (シン)無き者Lv1

===============


 一つ一つ視て行きましょう。


《具心具召喚》ランク7:魔力を消費し、《装備品》を召喚できる。


 転生特典の《スキル》ですね。

 現在は《レベル1》のため、召喚できるのは《心象剣》だけらしいです。

 魔力消費も軽いようなので一度試してみましょう。


「召喚、心象剣」


 ズシリとした重みと共に、一振りの刀が現れました。

 銘は『凪光(なぎみつ)』。

 鍔は無く、柄と刃がそのまま繋がっているため、間違って指を切らないよう注意が必要です。


 僅かな反りの入った刀身は、私の胸から爪先辺りまであります。

 相応に重量もあるので、《種族進化》していなければ持つこともままならなかったでしょう。


「ふっ」


 傍の木に向かって振ってみます。

 しかし、刃は樹皮に受け止められてしまいました。


 一点の曇りもない銀灰色の刀身を眺めます。

 刀の目利きは出来ませんが、この美しい刀がナマクラであるとは考えにくいです。恐らくは私の技量の問題でしょう。

 刀どころか竹刀すら持ったことがないのだから当然です。


 要練習ですね、と心にメモをして凪光(なぎみつ)を消します。

 次の《スキル》を確認しましょう。


《仙身丹》ランク7:常に全《パラメータ》を大きく引き上げる。常に魔力を急速に回復させる。常に再生させる。


 これはいわゆる常時発動(パッシブ)《スキル》というものですね。

 切ろうと思えばオフにもできますが、そうしなければ常に効果を発揮するようです。


 説明文通りの効果なのでこれ以上は特に語ることはありません。

 次に行きましょう。


《六神通》ランク8:神通力を扱える。

《天眼通》:自他の《ステータス》の詳細を知れる。


 俗に言う鑑定《スキル》です。

 《ステータス》とは、身体能力に補正を掛ける《パラメータ》、特殊能力である《スキル》、同じく特殊能力の《称号》等々のこと。

 この《天眼通》があればそれを自由に覗けるのです。


 敵を知り己を知れば百戦危うからずと言いますし、とても心強いです。

 《スキルレベル》が上がれば他の神通力も覚えるようなので、今後にも期待できます。


 そして《ハートアラート》は、


「!」


 脳裡に響く警鐘。

 それに従って駆け出します。

 斜面を移動し、窪みに飛び込みました。

 そのまま身を伏せ、窪みの縁に潜みます。


 ──ドシン、ドシン、ドシン……。


 息を潜めると、迫る足音が聞こえて来ました。

 恐らくは魔物でしょう。トラックのような重量感で、踏み出すたびに地面が震えるようです。


 気配を殺し身を潜めていると、この世界に転生してからのことが走馬灯のように流れて行きます。

 《スキル》を確認したこと、《スキル》を確認したこと、《スキル》を確認したこと……。

 走馬灯が五巡くらいした頃、足音の主は通り過ぎて行きました。


「ふう、何とかなりましたか」


 足音が聞こえなくなったところで立ち上がります。

 服をはたいて土を落としました。

 ちなみに、服装は転生前に来ていたスーツではなく、この世界で一般的な麻布の物に変わっています。


「それにしても、《ハートアラート》があって助かりました」


《ハートアラート》ランク6:自身に迫る危険を察知できる。


 この《スキル》のお陰でいち早く魔物の接近に気付けました。

 危険のやって来る方角や度合いなどを計れるため、この魔物の蔓延(はびこ)る山を脱出するのに、一番頼りにするかもしれません。


 さて、次は《称号》の《(シン)無き者》ですが、これには大した効果はありません。


===============

(シン)無き者 ランク7:邪念を排し煩悩を捨て去った覚者の敬称。


Lv1  常に観測上の感情ランクを0に固定する。

===============


 説明文だけでは分かりづらいですが、つまりは平常心に見せかけるということのようです。

 他者の心を覗く能力に対しては有効だと思いますが、それ以外で活躍する場面が思いつきません。

 《称号》は成長すると効果が増えることもあるため、そちらに期待するとしましょう。


 さて、これで全ての能力が確認できたはずです。

 ですが一応、見落としが無いかチェックしておきましょう。


===============

スキル 具心具召喚Lv1 気配察知Lv2 仙身丹Lv2 潜伏Lv1 ハートアラートLv1 六神通Lv1


称号 (シン)無き者Lv1

===============


 おや……?


===============

スキル 気配察知Lv2 潜伏Lv1

===============


 ……何か増えていますね。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] >「しかしおかしいですね、《種族進化》が人間に起こることは稀だと聞いていましたが……」 >それも、かなり《レベル》を上げた後でなくてはならないそうです。 >この状況は非常に不可解です。…
[一言] 獲得したタイミングは、ハートアラートを確認しようとして危険を察知した瞬間と、何らかの種の魔物から身を隠して気配を殺した瞬間ですねぇ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ