2話 圕
なんと評価を下さった方がいるようで、ありがとうございます!!
これから、頑張っていきたいと思います!
ナイル、僕の能力は確かに第三者から見れば、戦闘上貢献していないように見えるだろう。しかしそれこそが、僕が勇者パーティに選ばれたあの日の朝、神様からもらった、圕の力の全てである。
僕の圕には、大きく、二つの能力がある。
一つは、『保管庫』
この力は、文字通りいろいろなものを保管できる、という能力だ。実際、旅の間は物持ちとして馬車馬のようにたくさんのものを持たされた。しかし、僕がそれを受け入れ続けたのも、能力者にはいくらものを持ったとしても負担が無い。という常軌を逸した利便さからである。
そして、二つ目は、『改訂』
この力も文字の通り、いろいろなものを修復できる、という能力で、主に戦闘面で使用することが多かった。例えば、仲間が思わぬ強撃を喰らったことで、瀕死となったとしよう、そんな時この能力を使えば、攻撃力上昇に、防御力上昇、守備壁生成や、瞬間治癒など、さまざまなバフ効果を与える、という能力である。
この能力の強いところは、その即効性にある。通常、魔法使用には自身の魔力のとおる魔力管から、外に出すために、『詠唱』が必要となるのだが、この能力は、『無詠唱』で、一度に多様な魔法を付与することができるのだ。
今までだって、たくさんそれであいつらを助けてきたつもりだ。それに、あいつらに、一度能力を全て話したのだ。そこは理解してくれているはずである。
となると、やはり、原因はあっちだよな………
この能力、一見すると無限に物を収納できるし、魔法を覚えてしまえば、無詠唱で多数の魔法を使用し続けられるし、戦場では、まさに救世主だろう。
だが、もちろんこんなチートじみた能力には、利便性の裏に不自由がある。それが、僕の称号『物語の紡ぎ手』である。
通常、魔法の多数無詠唱には相当の魔力と精神力が必要となるが、それを大幅に激減してくれるのが、この称号のユニークタレントである。
一方で、今回の騒動を引き起こしたのかもしれない原因も、この称号なのである。デメリットは、たったの一つで、『物語の紡ぎ手なるもの、人のストーリーに関わるべからず』 というものであり、これは簡潔に言えば、『他人の戦闘に加わることはできない』という枷である。
そう、この能力を使用する場合、僕は、魔物にいかなる手段であっても、指一本攻撃することはできないのである。あくまで紡ぎ手は物語の補佐をする者で、そこに関わることは許されない。ゆえに、この能力を使用する限り、パーティを組んでいる以上僕は戦闘に関わることは不可能なのであった。
それは、最初に言われたし、あいつらにも天啓のあったその日に伝えたんだが、もしや聞こえていなかったのだろうか? あいつら、勇者パーティに選ばれて、天狗になってたからな。それも仕方のないこと。
そんなたらればのストーリーを話しても、パーティにいた頃にはもう戻れないのだ。
戯言を呟きながら、僕は日の落ち始めた草原を彷徨するのであった。