表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

矛盾

作者:

『お前の命を引き換えに、なんでも一つ願いを叶えてやろう』


突然、目の前に現れた死神が言った。


正確には死神かは分からないが、黒ずくめのローブに骸骨の頭。


そして大きな鎌を持った、現実離れした死神のお手本のような風貌のものがそこにいたのだ。


ああ。とうとう俺は頭がおかしくなってしまったんだなぁ。


「……なんでも?」


『ああ、そうだ。なんでもだ』


そうは言われても、自分の命を引き換えにしてしまうのであれば俺にはなんのメリットもないではないか。


『嫌いな奴らを全員殺してもいい。来世の成功を約束してやってもいい。ただし、お前の命を引き換えにだ』


「例えば、俺が不老不死と言ったらどうなるんだ?」


『駄目だ。それでは矛盾している。契約は成立しない』


なるほど。あくまでも俺の命だけは確実に支払わなければならないようだ。


自分の命を引き換えにしてまで何かを叶えたいなんて望みが、普通の人間にあるだろうか?


それとも、だからこそ俺のところに来たのだろうか。


「俺の幼馴染のユキ、と言って伝わるか?」


『ああ』


俺は幼馴染のユキのことがずっと大好きだった。


だからこそ、今こうしてこんなところに俺は立っているのだ。


「ユキを、ユキの人生を幸せにしてやってくれ。俺はあいつが幸せならそれでかまわない」


ああ。


あいつが彼氏と幸せに過ごすことができるならそれでいい。


……それでいいんだ。


失恋のショックに耐えられなかった俺の、最期の強がり。


どうせ、あと一歩踏み出せば無くなる命なのだ。


死神にくれてやっても同じことだ。


『その願いを叶えることはできない』


「なぜだ!話が違うぞ!」


『矛盾するからだ』


「どこに矛盾がある!俺の命と引き換えにユキが幸せになる!何も問題無いはずだ!」


大声で叫んだ自分の言葉にハッとし、一目散にユキの元へ駆け出した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ