ガーディアンズ・エージェント入団の決意
―創作裏話―
第2部を振り返ると、最近観ている『ちむどんどん』の影響が、少なからずあるような気がします。ちむどんどんでも、就職のために主人公が、テストを受けるというストーリーでしたが、このユイリスも、入団テストを受けなくてはいけないという、流れに来てしまいました。さて、入団はどうなるか、楽しみにしてくださいね!
余談ですが、ちむどんどんの影響を受けて、今日の夜もスパゲティーを作りましたが、塩を入れすぎて、少し塩っぽいパスタになりました(笑)。
―これまでのあらすじ―
ユイリスはマリウス市内の、国立学校に通う、学生である。彼女は、ゾンビに襲われ、撃退した際に、ゾンビ撃退に励む『ガーディアンズ・エージェント』の、ジェイクから勧誘を受けたのであった。
―1時間後・学生寮―
寮に戻った私は、食堂に戻り、ノランちゃん、エリカちゃんと合流しました。
「ただいま!エリカちゃん、ハイ!財布見つけたよ!」
「ありがとう!!ユイリスちゃん!!あれ?怪我してる?」
「大丈夫だよ、少し転んだだけ。」
「ごめんね、私のせいで!」
「ううん、私も不注意だったから、大丈夫よ!」
「ユイリスちゃん、優しいから私大好き!」
「私もみんな、大好きだよ!」
財布を渡すと、ゾンビに襲われた際の怪我を見て、心配してくれたエリカちゃん。ノランちゃんも、心配そうな顔で、私を見ていて、みんな優しいんだなと、改めて思いました。本当に、そんな優しいみんなが、私は大好きです!
―再び数時間後・自室―
一方で、先程出会ったジェイクさんのことが、気になっていました。
「ジェイクさん・・・何者だろうか?」
「どうしたの?」
「なんでもないよ、ノランちゃん!」
「それならいいんだけど・・・じゃあ私は寝るね!おやすみなさい〜!」
「おやすみなさい〜!」
ジェイクさんの名前を呟くと、ノランちゃんが気になったのか、声をかけてくれましたが、ジェイクさんの話は、まだ内緒にしようと、ノランちゃんには言いませんでした。ですが・・・布団に潜ると、やはり先程のことを思い出します。
―回想―
「なあ、君!もしよかったら、ガーディアンズ・エージェントの一員となって、僕達と一緒に、人々をゾンビから守ろうよ!」
「私、でも・・・学生なので。」
「別の地区には、学生時代からバリバリのエージェントがいて、今は主任エージェントにもなったよ。」
「・・・少し考えてもいいでしょうか?」
「じっくり考えてみてほしいなあ。それと君は、どこの学校に通っているのかな?初対面の人に対して、失礼な質問でごめんだけど・・・」
先程の会話の続きの際に、ジェイクさんは、私の通う学校について、どこの学校か質問しました。私は、失礼な質問だとは思わないので、答えることにしました。
「あ、気にしないでください。私はこのマリウス市の、国立学校に通っています!」
「ああ、あの学校ね!ハイハイ、分かる分かる!」
「そうなんです!」
マリウス市内には、国立学校は1校しかないので、すぐに分かったようです。私の通う学校の名前は『国立ジニアス総合科学学校』という、ジニアス共和国で1、2を争う名門校なのです。有名な学校とあって、ジェイクさんは場所が分かったからか、私に言いました。
「じゃあさ、もし入団したくなったら、学校の近くのバーがあるでしょ?そこに来てくれないか?」
「バー・・・確か『トーキカフェ』ですか?」
「そう!そのトーキカフェに、夜の7時頃に、僕か、ガーディアンズ・エージェントの関係者が、来ているから、声をかけてよ!」
「・・・分かりました。トーキカフェで、いつも会議か何か、されているのですか?」
「ただ、飲んで食べてるだけだよ(笑)。」
「そ、そうですか・・・(苦笑)。」
ジェイクさんのいう『トーキカフェ』とは、学校のすぐ隣にある、マリウス市内で一番人気のカフェで、夜になるとたくさんのお客さんが、来ている店です。そのカフェに、夜の7時以降に、ジェイクさんを始めとする、ガーディアンズ・エージェントの関係者が来ていると言うのです。
「そこに来てくれたら、ゾンビ退治のこととか、色々教えるから!」
「では、その時が来たら、声をかけますね!」
「多分その日は近いと思うよ。」
「え?」
「じゃあ、また会おうね!おやすみ〜!」
「ジェイクさん、ありがとうございました!!お気をつけて、おやすみなさい!!」
「君も、気をつけて帰ってね〜!」
「はい!!」
私は一旦、入団を保留するというニュアンスで、また声をかけることを約束しましたが、ジェイクさんは意味深な発言をして、帰りました。『その日は近い』とは、気になる発言です。
―回想終わり―
ガーディアンズ・エージェントという、初めて聞いた組織の名前が、とても気になり、眠れませんでした。
「・・・私、入団しようとは思わないわ。」
既にノランちゃんは眠りについていて、私の呟きに反応しませんでした。
「・・・近いうちに、断りに行こうかな。」
私はそう思って、入団を断る決意をしていましたが、後にその考えが変わる、出来事があるのを私はまだ、知る由もありませんでした。
―翌日夕方・マリウス市内―
学校を終えて、買い物に行こうと、市街地を離れた場所を、私は1人で歩いていました。その場所は木や自然の景色が多いものの、人気は普段からなく、家すらありません。この人気のない場所を通れば、目的の店に着きます。
「さて、店はまだかなあ。」
私はのんびり歩いていると、視線の先に、人がたくさん集まっているのが、見えました。
「・・・何の集まりかなあ?」
気になった私は、人溜まりの方へ向かいましたが・・・
「・・・!?」
なんと、人溜まりは、ゾンビがたくさん集まっていたのです!私は逃げようとしましたが、いつの間にか10体もいるゾンビに、囲まれてしまいました。
「いたっ!!」
「うが〜!!」
「やめてっ!!痛いっ!!」
ゾンビはやはり、攻撃をやめませんでした。そして、あるゾンビに背後から殴られると、倒れた先は小さな崖で、私はそこから転落してしまいました。
“ドポーン!!”
“バシャッ!!”
「うわぁ!!」
崖の下の沼へと転落し、すぐに水面から顔を出しましたが、どうやったら沼から出られるのか、分かりません。崖は小さいとはいえど、自力では登れず、登れる場所もなく、私はどうしようかと焦りました。沼は深く、このままでは、体力が低下して沈んでしまう。その危機感があり、助けを求めようと大声を出しました。
「助けて〜!!誰か〜!!」
しかし、場所が場所なだけに、誰も来るはずがなく、私は沼でもがき、時々沈んではまた浮上したりを、繰り返していましたが、体力の限界を迎えました。
「・・・もう、私、死ぬのかな・・・」
私は少し『死を覚悟』していました。その状態になると、やはり脳内で夢の映像が、流れてきたのです。
「・・・理不尽に殺され、次は普通に殺されて・・・え!?」
死を覚悟した瞬間、目の前に、ロープがたれてきました。なんと、誰かが私に気づいて、ロープを用意してくれたのです。
「君ぃ、大丈夫かい!?」
「あ、あなたは!?」
「ああ、俺は『ジャスティン・アップル』だよ!ガーディアンズ・エージェントの、関係者なんだっ!」
「・・・ど、どうしてこの場所に!?」
「ああ、神のお告げだよ!」
「え?」
「それより引き上げるから、ロープをしっかり持ってくれ!」
「は、はい!!」
助けてくれたのは、ガーディアンズ・エージェントの『ジャスティン・アップル』さんでした。なぜここに、ガーディアンズ・エージェントの関係者が?と私は思いましたし、神のお告げというのも気になりますが、今は助かるためにロープを掴み、なんとか崖の上へと戻れました。
「あ、ありがとうございます!ジャスティンさん!」
「いや、礼には及ばないよ!ユイリスさん!!」
「私の名前を・・・知っているのですか?」
「知ってるよ!近いうちに入団すると、ジェイクから聞いてるよ!」
「私、入団するとか、一言も言ってないんですけど・・・・」
「そうなの?お告げでも、入団するって、言われたんだけどなあ。」
「お告げ?」
助けてくれたジャスティンさんは、なぜか私のことを知っていまして、ジェイクさんが勝手に入団すると言っていたことや、またお告げでも同じことを言われたということを、話してくれました。ですが私は・・・
「まあ、別に今すぐ入れと・・・・」
「私、入ります!」
「え?本当に!?」
「はい!私は、ゾンビに襲われる怖さを、今日実感しました。それなのに、ゾンビがいるのを事実上放置されているような、世の中じゃだめ!そう思ったから、お告げとか云々の前に、私も怖い思いをしたので、他の人たちにまで、怖い思いをさせたくないと、そう思いました!」
「でも、大変な仕事だよ?」
「仕事はなんであろうと大変です。だから、入団させてください!」
私は、崖から突き落とされるまでは、ゾンビの驚異を分かっているようで、分かっていませんでした。だから、ゾンビの驚異をもっと知らないといけない・・・そしてゾンビを倒さなくてはならないと、そう思い、入団を決意しました。
「待ってましたよ、その言葉!今から君を仮入団とする!」
「ありがとうございます!・・・でも仮入団というのは?」
「うん、仮入団というのは、まだ君の実力でゾンビ撃退が出来るかどうか、分からない。だからまずは試験を受けてもらう必要があるよね。」
「て、テスト・・・ですか。受からなさそうな気がします(笑)。」
「大丈夫だよ、撃つ動きが良かったと、ジェイクも言ってたよ!」
「・・・そ、そうですか?」
しかし、私はまだ仮入団だと言われてしまいました。どうやら、まだゾンビを撃退する実力が分からないのが、理由だそうです。以前、うまく撃つことができましたが、テストでそれが出来るかどうか、私は不安でした。
「頑張ってね!待ってるからね!」
「あの〜、テストの日は?」
「また会ったら連絡するよ!危ないから気をつけて帰ってね!」
「は、はい・・・ありがとうございます!」
不安な私をよそに、ジャスティンさんは、テストの日を告げず、そのまま去っていきました。まあ、段取りがあるからかもしれませんが。テストの日が、不安ではありますが、楽しみでもありました。一方で、その前に、沼に落ちた後の状態で、買い物に行かなければいけないという状況が、少し困ったものでしたが(笑)。
―1時間後・寮の自室―
買い物を無事終えて、入浴も済ませ、自室で寝ていると、部屋の扉をノックする音がしました。ノランちゃんは、不在で私しかいないので、扉を開けると、エリカちゃんがいました。
「ユイリスちゃん、あなたに会いたいって人が来ていて、面識あるって言ってたから、連れてきたの。」
「・・・誰?」
「こんばんは!僕だよ、覚えてる?」
「・・・!じ、ジェイクさん!?」
なんと、エリカちゃんと一緒に、ジェイクさんも来ていたのでした。私は驚きましたが、さらに驚くことをジェイクさんは言いました。
「ジャスティンから聞いたよ、話!テストだけど、明日の昼に、学校の近くの大きな公園でしようか。」
「あ、て、テストですか!?は、はい!」
ジェイクさんは、ジャスティンさんから話を聞いて、テストの日時を決めてきてくれたようです。いよいよ、私が『ガーディアンズ・エージェント』の入団テストを受ける時が、近付いてきました。
〔続く〕