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ユイリスのオープン列島エージェント奮闘記、はじまる

 【この作品の制作にあたって】


 『小説家になろう』で、いつもお世話になっている皆さん、いつもありがとうございます。この度は『2・0・1・7・・・雄太の異界活動記』とは別に新しい作品を作ろうと思い、この『女性に転生して、ゾンビから世界を守ります!』を制作するに至りました。



  制作に至る経緯(いきさつ)ですが、ここ最近になって、職場でゾンビごっこしたり、見たりする機会が多く、またゾンビに関するゲームを見たりしているので、一度書いてみたいなあと思い、執筆に至りました。


 作品のベースとしているのは、イラストのサイトに掲載している、自作品の『YAMAOKU(ヤマオク) OF(オブ) THE() DEAD(デッド)』です。山奥にいる女子高生が、ゾンビに出くわすというやつです(笑)。この自作品をヒントに、ゾンビ小説の制作をはじめました。



 また、自作品がベースではあるものの、『ヤマオク』を描くまでに、色々な作品を見て、色々な作品を作り、経験値を積んでここまで来ました。現在進行形ですが、図書館で漫画や小説を読んだり、テレビやユーチューブで、アニメやドラマを見たりなど、勉強は日々しています。



 最近ではユーチューブで、再び『チャージマン研』を楽しみ、テレビでも『ちむどんどん』等を見ています。名作『天空の城ラピュタ』や『魔女の宅急便』『となりのトトロ』などの、ジブリ作品も好きです。時間があれば『ファンターネ!』や『いないいないばぁ』なども観たいですね。意外と、子供向け番組からヒントを得ることも多いです。『ヤマオク』は、そんな僕の創作の経験を、たくさん詰めた作品だと、思っています(実際、内容はともかく、思いはかなり込めているはずです)。



 子供の頃、家の事情で、完成したばかりの新居にて、人を待つために、『ドカベンプロ野球編』23巻1冊だけで、1人で過ごしたことがあります。この時は、退屈で退屈で仕方ありませんでしたが、この経験の中で、創作意欲を強めたのかもしれません。そこから『ヤマオク』に至り、そして新連載へと繋ぐ・・・自分としては感無量です。



 ゾンビものは、昔『ザ・ハウス・オブ・ザ・デッド2』をプレーしたり、家族がプレーするのを見ていて、興味がありました。最近では『ユージェネ』の『トリカゴ・オブ・ザ・デッド』を見ていて、ゾンビものを描きたいと思うようになりました。また幼少期は『みつごのキョンシー わん・たん・めん』を読んでいました。



 小学時代は『コロコロコミック』を、中学時代からは『週刊少年ジャンプ』を、読むようになりました。幼少期に、たくさんの作品に触れたからこそ、今『ヤマオク』を経由して、ユイリスが主人公の作品に繋げられたのかもしれません。本当に嬉しい気持ちです。



 長々と話をして、すみませんでしたが、これからユイリスの長い長い物語が、始まろうとしています。これからもよろしくお願いします。いつも本当にありがとうございます!




 2022年5月17日  市川 雄太

 ―2052年5月17日―


 僕は現在、窓もなく、外の景色が見えない独房の中にいる。独房の中に、もう何年収監されているのだろうか。外に出られず、未来の見えない日々に、僕はいつも何かに怯えていた。そして、その怯えていたもの(・・)が、ある日、やってきたのである。新聞を読んでいると、複数人の足音が聞こえると、僕は正座をして前に倒れ、頭を抱えていた。ある(・・)ことに怯えていたのだ。そして、恐怖で震えている、僕のいる独房の前で足音が止まり、扉が開いたのである。



 「・・・番、出房だ!」



 「・・・い、いやだ!!」



 僕は、逃げようとしたが、扉の前にはたくさんの、制服を着た屈強な男性達がいて逃げられず、すぐに取り押さえられ、両腕を抱えられて、連行されるのであった。



 「僕じゃないんです!僕はただお金を出来心で取ってしまっただけなんです!!」



 「口を慎め!!」



 泣きじゃくりながら、身の潔白を訴える僕。しかし、僕を連行する誰一人も、僕に耳を傾けようとはしなかった。




 ―2041年11月4日―


 今から、遡ること11年前。関西地方のとある町で、金欠で悩んでいた僕は、銀行のATMで、お金を下ろしていた老女のお金を奪い、逃げたとして逮捕されたのであった。しかし、その取り調べの際に、刑事に突然、ある事件のことを問い詰められたのである。



 「貴様、2年前と7年前の事件の犯人だな!?」



 「は?何のことですか?」



 「とぼけても無駄だぞ!K町とT市で、老人を狙った連続殺人事件!貴様の犯行だと、この事件で分かったんだよ!!」



 「し、知りません!!それに何の事件かも分から・・・」



 「うるさい!!黙れ!!」



 同じく関西地方で起きた、2件の殺人事件について、犯人扱いされた僕は、無実を訴えるも、刑事は机をドンッ!!と叩いて、怒鳴りつけてきたのだ。ビクッとした僕は、一瞬何も喋ることができず、この時に何も言えなかったのが致命傷だったのか、2件の強盗殺人罪などで起訴され、一・二審ともに死刑判決を受け、最高裁判所まで争うも、3年前に死刑判決が確定。再審請求の準備をするところであった。



 ―現在―



 「・・・」



 出房後はすごく抵抗していたが、だんだんと気持ちが弱くなっていき、疲れたからか僕は観念し、抵抗しなくなった。そしてある部屋に到着すると、先に部屋に来ていた拘置所の所長らしき人から、死刑を執行されることを伝えられたのである。



 「最後に言い残したことはないか?」



 「僕は無実です。」



 そう言うと、僕は目隠しをされて、刑場へと向かうのであった。そこで首にロープをかけられ、その直後に床がバタンと開き、僕は吊るされたのであった。



 「午前9時38分、死亡です。」



 2052年5月17日・午前9時38分、僕はこの世を去った。享年37歳であった。




 =法務省は17日、K町とT市の連続殺人事件で、死刑判決が確定していた市川(いちかわ)雄太(ゆうた)死刑囚(37)の、死刑を執行したと発表した。=



 これは当日の、夕刊記事である。刑を執行された僕の目に入ることは、まず有り得ないが、駅のホームで夕刊を読んでいる、会社員の男性はこの記事を見て呟いた。



 「死刑になって当然や。最低なやつだな。」



 自分が無実を訴えていたことが、書かれていないためか、僕が完全に殺人者と、思われてしまっているのだ。




 ――



 その頃、僕は気がつくと、何もない暗い空間の中にいた。



 「あれ、ここは?」



 辺りを見渡していると、小学一年生くらいの女の子がいて、僕に話しかけてきたのである。



 「ここは、あなたの今までいた世界と、別の世界を結ぶ場所だよ。」



 「別の世界?それに君は誰かな?」



 「私?私はあなたの守護霊よ。」



 「しゅ、守護霊?」



 「そうよ。」



 「・・・なら、何でだよ!?」



 「!?」



 この女の子は、僕の守護霊だという。だが、それを聞いて僕は、大量の涙を流し、顔を真っ赤にして叫ぶように、彼女に問う。



 「守護霊なら、何で僕を助けてくれなかったんだよ!?」



 「・・・」



 「僕は殺人なんか犯してないんだ!!死刑執行まで時間があったのに、君は何をしていたんだよ!?」



 「・・・これはあなたの決めた人生なの。」



 「違うわ!!誰が、若くして死刑にされるような、人生を決めてくるんだよ!?」



 「あなたが・・・決めたのよ。その人生を。」



 「いい加減にしろ!!僕がこんな死に方をしていても、君はそれを、面白おかしく見ていただけかい!?」



 「・・・これから行く世界を救うためよ!?」



 「!?」



 「そういうことなの。」



 僕は怒りの感情に任せて、怒鳴り声を上げて問うと、彼女は意味深なことを言ったのだ。



 「分からない。どこの世界を救うんだよ!?君の言うことが理解出来ない!」



 「理解しなくても良いわ。でも次の世界を救うために、あなたは早く今回の人生を、終える必要があったの。」



 「・・・じゃあ、なんだ!?今回の人生の僕は、社会から殺人犯として見られてしまうまでになろうとも、早く人生を終わらせないといけなかったというのか!?」



 「そうなるわね。」



 「殺人犯にされる気持ちって、分かる!?分からないよね!?僕は誰も殺してないのに、刑死させられて、それで『死刑になって当然』と言われるだけの人生!!こんな悲惨な人生になってまで、何を救うと言うんだよ!?いい加減に・・・」



 「もうやめなさい!!」



 「!?」



 怒り任せの僕に対し、必然的な人生だったという彼女。僕はさらに怒りを強めると、彼女は強い口調で僕の怒りを止めたのである。僕は驚くと、彼女は優しく冷静な口調で続けて言う。



 「あなたの次の人生は、今回のようにはならないわ。次にあなたが行く世界から、あなたに助けを求めているの。」



 「助け・・・?」



 「そう、そのために、あなたは今回の人生を、経験したのよ。」



 「・・・」



 「あなたの魂も、何度も輪廻転生(・・・・)しているのよ。この人生を経験して、魂はさらに成長するの。」



 「こんな経験は、したくなかった。」



 「やむを得ないことよ。さあ、あなたの新しい人生はいよいよ始まるわよ。また全てが終われば(・・・・・・・)、今いる世界にまた、戻ってこれるから、ね!」



 彼女は、笑顔で僕に話をするが、僕は『また戻ってこれるから』という言葉を聞き、再び大粒の涙が流れてきたのだ。



 「僕は、何をすればいいの?」



 「あなたは、次の世界を救う。ただ、それだけなの。でも、あなたなら出来るから!そろそろ、転生の準備が終わったから、あそこまで一緒に行こうね!」



 「あ、あれは・・・!?」



 彼女は転生の準備が終わったと言い、ある場所に指を差すと、その先には高速道路などにあるトンネルの形をした、大きな光があった。



 「あそこから、新しい世界へ行けるわ。」



 「分かった、新しい世界へ行くよ。今回の人生を無駄にしないよう、頑張っていくよ。」



 「あなたを応援しているから。また守護を任せてもらえるかしら。」



 「こちらからも頼むよ!」



 「ありがとう!!」



 僕達は、話をしながら光のトンネルの方へと進み、彼女へ感謝の言葉を伝えた直後に、トンネルに入ったためか、全身が光に包まれたのである。そして、僕は手と足を広げて、パラシュートで降下する人のように、ゆっくり下へと降りていくのであった。しかし、下へ降りている途中に、僕の記憶が、何故か途切れてしまったようだ。





 ―ある町の病院―



 中世のヨーロッパのような、雰囲気のある町の病院にて、一つの命が生まれたのである。



 「あなた!!この子は男の子?女の子?」



 「女の子だよ!!」



 「そうなのね!?嬉しいわ!!」


 

 ベッドの上で、出産したばかりの女性の質問に、明るい表情で答える男性。生まれたばかりの子供は、看護婦が抱いていた。



 「名前はどうしようか?」



 「あなたが決めて!」



 「分かった、僕が1週間以内に、命名するよ!」



 「楽しみにしているわね!!」



 「じゃあ、僕は一旦帰るね!」



 「お疲れさま、ゆっくり休んでね!」



 名前の話を始める二人は、どうやら夫婦のようだ。命名は男性の方がするようで、彼は一旦帰宅すると、人名がたくさん出てくる伝記や歴史の本を読んで、つける名前を探していた。本を読み始めて数時間後、彼は疲れがたまっていたからか、いつの間にか机に頭を伏せて爆睡していたのだ。




 ――――



 「あれ、ここは?」



 気がつくと、男性は周りが真っ白で、何もない世界にいた。



 「・・・どこだろう。」



 「う、う〜!」



 「き、君は!?」



 突然、男性の前に赤ん坊のような、小さな男の子が現れたのである。そしてその男の子は、大人のような口調で言う。



 「あなたは、子供に名前をつけようとしているな。」



 「あ、ええ。」



 「もし名前をつけるなら、それを『ユイリス』としてほしい。」



 「ユイリス・・・?」



 「ああ。『ユイリス・コザテリア』とな。」



 「・・・」



 「頼めるか?『ケイヤ・コザテリア』氏よ。」



 「なぜ、僕の名前を・・・!?」



 「私は、あなたを知っている。そしてあなたの子供のことを・・・も。」



 「・・・そ、そうですか!?」



 「ケイヤ氏・・・私の考えた名前を、つけてくれるか?」



 「・・・は、はい。(しかし、僕が命名したい気持ちが・・・)」



 男の子は男性に対して、これから生まれてるくる男性の子供に、自分の考えた名前にするよう、彼に伝えると、少し不満そうな表情であった。



 「案ずることはない。私の命名どおりにすれば、あなた()も子供()も、素晴らしい人生になるからだ。」



 「そうですか。分かりました。」



 「ありがとう、ケイヤ氏よ・・・」



 「こちらこそありがとうございます!」



 渋々ながらも、男性は了承したが、この時点でまだ、命名するかは確定していない。男性はそれでも男の子がいう名前をつけようと思っているようだ。ただし、男性も自分が我が子に命名したいからか、もやもやした気持ちがあるようだ。お互いに感謝の言葉をかけると、男の子は消えてしまったのである。




 ――



 「!?」



 男性は気がつくと、机から頭を起こして座っていた。どうやら夢だったようだ。しかし・・・



 「ユイリス、ユイリス、ユイリス・・・!」



 夢の大半は覚えていないはずだが、なぜか、名前は覚えているのであった。そして後に、夫婦は女の子を授かり、早速彼は生まれてきた子供に、男の子の考えた『ユイリス』と名付けたのである。僕達(・・)の新しい物語はいよいよ始まるのであった・・・!!





 ――



 「(ここ、どこだろう?今まで(・・・)の世界と違う・・・帰りたい!)」



 生まれてきたばかりの私は、泣きながら不安を抱いていました。魂が何かを感じたのか、今まで(・・・)の世界とは違う、雰囲気に私は一つの恐怖を抱いていました。



 「ユイリス、はじめまして。僕はケイヤ・コザテリアだよ。」



 私は『ユイリス』と名付けられたようです。お父さんがつけてくれたみたいで、その名前を聞くと少し私は安心した気持ちになり、スヤスヤと眠りました。




 ――



 一方で、僕達が住む世界では問題があった。僕や妻のエレノアは、生まれたばかりのユイリスと出会えて幸せ・・・とは言い難かったのである。というのは別に、夫婦仲が悪かったとか、生活が厳しかったとかではない。僕達の住むオープン列島という島(日本より10倍も大きな列島)の真ん中にあるゴールドエール王国内のラジカル村を始め、オープン列島内に、ゾンビが大量発生し始めていたからである。ゾンビが発生したのは、僕とエレノアが出会う4年前からで、つまりユイリスが生まれる8年前だ。ゾンビが発生する理由は分からないが、現在オープン列島内の各国の、国家機関が全力で調査していると報道されたため、調査は進んでいると見られる。現在分かっているのは、ゾンビに噛まれると、噛まれた人がゾンビ化することと、夜に活発になりやすいということである。なぜ、ゾンビが発生したのかという、根本的な原因や、オープン列島以外でも、ゾンビが発生しているかどうかなど、分からないことも多い。それでも僕は愛する妻子を守らなくてはならない。



 「エレノア、ユイリス・・・君達は僕が守るからね!」



 生まれてから1ヶ月経った、ユイリスを抱っこしながら、僕は呟いた。そのときにユイリスは、僕の方を向いて、笑顔をみせてくれたのだ。




 ―約15年後―



 私、ユイリス・コザテリアが生まれて、もう15年が経ちました。私は、勉強が大好きで、学文をたくさん習えるからと、同じオープン列島内で、ゴールドエール王国の隣国の、ジニアス共和国内にあるマリウス市内の国立学校に通っています。私は、ラジカル村で生まれ育ち、進学にあたって、人生15年目で親元を離れて寮生活を送ることになりました。寮には友達もたくさんいて、寂しくはありません。ただ、一つ気になることがあり、それは私が時々ある夢を見ること・・・です。




 その夢を見るようになったのは、私が6歳の頃でした。夢の内容は、私の目の前に新聞が置いていて、それを読むと、ある男性が私の聞いたこともない『K町』と『T市』という場所で、事件を起こしたと書かれていました。そしてその夢の中で、私はなぜか男性で、しかも狭い部屋の中にいるのです。また事件を起こした男性の名前もはっきりと分かり、そして独房の扉を誰かが開き、開けた人の後ろから大きなな光が差し込むと同時に、目が覚めるというものです。



 その夢は月に2、3回ほど見ます。そのためか、事件の内容も、事件を起こした人の名前も、完全に覚えてしまいました。それに私は、この事件を起こした男性の名前を、どこかで知っているような気がするのです。そのためかいつも男性の名前が脳裏に浮かび、気になってしまいます。ある日の夜もその夢を見て、目を覚ましてすぐ飛び起きたのです。



 「どこかで聞いた名前・・・。いち・・・」



 「ユイリスちゃん、どうしたの?」



 「ノランちゃん、なんでもないよ!」



 そのことが気になり、呟いた私を同室の『ノラン・キャリー』ちゃんが、飛び起きた私のことを心配して、声をかけてくれました。私は大丈夫だと、なんでもないことを伝えましたが、心配してくれる親友がいることを、いつも心強く思います。



 寮では、一部屋に2人ずつ住んでいて、私は親友のノランちゃんと、生活をしています。別の部屋には、もう1人の親友である『エリカ・マーガード』ちゃんが住んでいます。ちなみにエリカちゃんと一緒に住んでいる『リラ・ヒーム』ちゃんも、私と仲良しです。



 ―某日・マリウス市内―


 

 ある日、私はノランちゃん、エリカちゃんと私の3人で市内を歩いていました。学校が休みのため、みんなで街巡りをしているのです。ただ、出かける際に気をつけていることがあり、ゾンビを見かけたら、すぐに隠れるように、幼い時から父から言われていて、それを守っています。このオープン列島では、私が生まれる前からゾンビが大量発生していて、襲われた人がゾンビ化するなど、最近は被害が増加しているというのです。この時はお昼という、ゾンビの活動が少ない時間帯というのもあり、ゾンビと出会うことはありませんでした。しかし・・・




 ―同日夜・寮食堂― 



 夜になり、私達3人は一度寮に戻りましたが、食堂に行くとエリカちゃんが焦った口調で、言います。



 「どうしよう!財布落としちゃった!」



 「財布落としたの?」



 「う、うん!」



 「分かった。私が探してくるよ。行った場所や道順、覚えてるから。」



 「やめときなよ、ゾンビ巡回してるよ!?」



 「大丈夫!隠れたら襲われないから。」



 「本当に?」



 「信じて!エリカちゃん!」



 「分かったわ。私もついて・・・」



 「行かなくていいよ。私一人で大丈夫!」



 エリカちゃんは、街巡りの最中に財布を落としたらしく、私は探しに行くと言うと、エリカちゃんは心配してついてきてくれようとしていました。しかし、ゾンビを避ける自信のある私は、エリカちゃんに1人で大丈夫だと、言いました。



 「気をつけてね!ユイリスちゃん!」



 「ありがとう、ノランちゃん!」



 「ごめんね!」



 「大丈夫だよ、エリカちゃん!」



 私は2人に見送られて、マリウス市内を歩きました。ゾンビが大量発生しやすい時間帯とあって、人気はありません。時々すれ違う人がいますが、それは護身用の短剣や拳銃を持ち、防弾チョッキのような、防具をつけている警察官や保安官、自警団の方々です。財布を探す途中に警察官の男性に声をかけられました。



 「君、一人で何をしているのかな?」



 「友達の財布を探しています。」



 「財布?それなら私達が探すから、君は早く帰りなさい。」



 警察官の方から、帰るように言われましたが、勿論帰る気はありません。しかし・・・



 「そうですね。では、私は帰ります。ありがとうございます!」



 「気をつけて帰ってね!」



 私は警察官の方に帰ると言いました。もちろん、これは嘘で、帰ったふりをして、再び探しに行くのでした。




 ―30分後―



 ところが、探し始めてから30分経った頃に、同じ市内ですが、市街地から少し離れた自然の景色の見える場所で、財布を見つけました。



 「ああ、良かった・・・ってキャ~!!」



 私は財布を見つけて安堵した直後に、悲鳴を上げました。そうです、周りにゾンビがいつの間にか6体ほど集まり、私を囲んでいたのです!!ゾンビ達は私に殴りかかってきました。



 「うが〜!!」



 「痛い!!痛い!!」



 逃げようにも囲まれて、逃げられません。人気もなく、助けが来る気配もありません。



 「こ、殺されたくないっ!!ゾンビになりたくない!!」



 私は、しゃがみ込んで頭を両手で守りますが、ゾンビ達は攻撃をやめません。そのとき、攻撃を受けまくる私の脳裏に、ある光景が浮かんできました。



 狭い部屋で新聞を読んでいると、突然扉が開き、たくさんの男性達に部屋の外に、むりやり出されて、どこかへと連れて行かれる光景でした。男性の名前も、新聞記事の事件もはっきり思い出し、あれはただの夢じゃないと直感しました。



 「もしかして・・・痛っ!!走馬燈・・・?」



 走馬燈のように、それを思い出したので、私は死を覚悟しました。ところがその私の足元に、いつの間にか拳銃が落ちていました。



 「こ、これは!?でも、私、撃てるかな・・・?」



 私は拳銃を拾いましたが、使った経験がなく、撃てるかどうか、心配でした。ですが、私はがむしゃらではありますが、トリガーを引きました。



 «パーンッ!»



 «パーンッ!»



 トリガーを引くと、弾が全部ゾンビの額に直撃し、倒れました。



 「た、倒せた!?ゾンビを倒せた!」



 私は、その勢いで他のゾンビを、片っ端から額を狙って、発砲しました。他の5体もあっさり、倒し、私は泣き崩れました。



 「た、助かった・・・!!怖かった・・・!!」



 そのとき、私のもとに見知らぬ男性が、やって来ました。



 「やるな、お嬢ちゃん。」



 「!?」



 「怖がらないで。僕は『ガーディアンズ・エージェント』所属のエージェントで、マリウス地区の主任エージェントを務めている『ジェイク・レッドフィールド』だよ。」



 「え、エージェント?」



 「ああ、エージェントというのは、ゾンビから人々を守る者のこと。ガーディアンズ・エージェントは、そんな優秀なエージェントを集めた組織で、大量発生したゾンビを少しでも多く倒して、発生原因を調べようと日々戦っているのさ!」



 「そ、それでしたら、どうして私を、助けようとしな・・・」



 「違うよ!」



 私のもとにやって来たのは、『ガーディアンズ・エージェント』のマリウス地区主任エージェントである、ジェイク・レッドフィールドさん。エージェントについて、詳細を教えてくれましたが、彼は近くにいて、なぜ私を助けなかったのかと思いました。ただ、彼は助けようとしなかったことを、否定しています。



 「違う?」



 「僕は君を助けようとしたんだ。すると、君は拳銃で、ゾンビを撃退したんだ。それも撃ち方も美しく、目を奪われたよ。」



 「・・・」



 「なあ、君!もしよかったら、ガーディアンズ・エージェントの一員となって、僕達と一緒に、人々をゾンビから守ろうよ!」



 「私、でも・・・学生なので。」



 「別の地区には、学生時代からバリバリのエージェントがいて、今は主任エージェントにもなったよ。」



 「・・・少し考えてもいいでしょうか?」



 ジェイクさんは、私を助けようとしたのですが、その時点で私がゾンビを倒していたため、その倒す姿を見ていたと言います。そして、私をガーディアンズ・エージェントに誘ってきましたが、私はこの時に運命が変わったような、そんな気がしました。




 〔続く〕







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