9−なにこれ、初恋?その2
そこにはただ強いだけの化け猫が構えていた。
「あぁ、プリシア・・・・・・」
ありえない。俺の10倍の体格じゃ、さすがにお付き合いは無理だよ。
過去一番のショックを隠しきれない。さらに、化け猫と呼称される事実を理解した。
するどい爪が俺を襲う。
「うげっ」
変な声出た!
ぎりぎり後退して攻撃をかわすものの、今のスピードではつらい。
「セリーヌ!作戦会議!」
「がんばる!終わり!!」
すごいわかりやすい作戦だね。結構セリーヌって本能で戦うタイプなのかな?
とりあえず俺は自分の足に補助魔法をかけた。
思考する。たった30グラムの脳をフル回転させる。
その間にも容赦なくプリシアの攻撃がくる。
ブゥゥン!!
風の魔法がセリーヌを襲った。
服が裂け、肌を切る。
「もう!おニューの服だったのに!」
肌を裂かれたことより服の方が大事なんだね。
どうにかして足を止めさせたい。
「にゃ!」
火の球を一発だけ飛ばす。もちろん当たってくれるはずがない。プリシアは飛び退く。そこにセリーヌの矢が飛んでくる。ここまではさっきと同じパターン。
「にゃ!」
今度は標的が大きくなったにも関わらず、セリーヌの矢もかわされてしまった。
実は読み通りだったりするんだよね。
着地直後の回避行動で、プリシアのバランスは大きく崩れていた。そこへ俺が飛びこむ。
「これがほんとのネコパンチ!!!」
と言いつつも爪を精一杯伸ばして切り裂くだけ。パンチじゃないよ。
爪がプリシアの皮膚へ刺さって、俺はプリシアの背中に掴まった状態になる。
「にゅあ!」
必至すぎてうまく言えなかったし。
ゼロ距離で火の魔法を使い、すぐに離れた。
「あぁぁあああ!!!!」
全身から火が燃え立つプリシアの悲痛な叫びが木霊する。
「プリシア・・・・・・ごめんね」
心から思った。
「うぅぅうう、な、なにを?」
瞬間、僅かであるが、プリシアの真上から冷水が降ってきた。
ぱあぁぁぁああん!!!!!
プリシアを中心に小さな爆発が起きる。
「なにが・・・起きたの?」
セリーヌが唖然としている。
「小さな水蒸気爆発だよ」
「へ?」
「プリシアの皮下脂肪に火をつけて、冷たい水をかけただけ」
「なんで爆発するのよ?」
「油から出た火に水をかけると危ないって教わらなかった?」
いや、俺自身は当然教わったことないんだけどさ。
ってか俺天才すぎてやばい。
疲労感ありすぎてやばい。
なんか色々やばい。
「水はいつの間に?」
「最近、補助魔法の時は掛声いらないことに気付いたんだよね」
「うん」
「結局セリーヌの矢を避けてから一歩も動いてないでしょ?」
「牽制の後にプリシアの真上に水を飛ばしたの?」
「うん」
この世界に来て初めて本気出したし。
野良の世界にいた時のことを思い出すわぁ。
意外と頭脳戦が得意だったのさ!
「あれ、ロロ?」
ん?あ?え?
「うぉ!」
なにこれ、俺の体が透けとる!
まず初めに、化学とかに詳しい人なら思うと思うんだけど、たぶん(実際にやってないからわからないが)あの程度の火では水蒸気爆発なんて起きません(笑)
もっと色々な条件が必要になると思います。
まぁ、ほらファンタジーだから許してください。
あと、セリーヌが全然役に立てなかったのが悔しいという書いた後の愚痴です(笑)
ほんとはもっと強いんだと思うんですが・・・。




