81-なにこれ、三毛猫のロロ
ものすごい爆発が起こる。
城の壁が崩れ、隣の部屋が見える。
「にゃ!」
まばたきをする間にベネルに近付く。
早すぎて頭がついていけなさそうだし。
強化した爪でベネルを切り裂くが、ベネルもタダでは受けてくれない。
おもいっきりお腹にグーパン喰らった。
「おもしろいじゃないか。どこまでもイレギュラーを貫くなんて」
「でしょ?おもしろいことは取り柄のひとつなんだよ」
「勇者が魔王に倒されるというイレギュラーが起きてもおかしくなさそうで嬉しい限りだよっ!」
嬉しそうに笑いながら、強烈な魔法を放ってくる。
「フォースシールド!!!」
「にゃ!」
ミラの結界で弱まった魔法を相殺する。
続けざまにベネルが俺の懐に入り、魔法を放った。
「うにゅ!!!」
俺は崩れた壁を飛び越え、隣の部屋に入ってしまう。
いってぇーし。
あれ?なにここ、研究室みたい?
足元には魔方陣があり、その周りには魔法科学の研究施設が並んでいる。
「リ・・・セット?」
あ、リセットボタンあったし。
すっげぇわかりやすいとこにある。
これを押すと、俺と魔王は時空の狭間に閉じ込められちゃうんだっけ?
っていうか文字読める猫とか本格的にすごくね?
「えーっと」
壊しちゃおう。
うん、壊しちゃおう。
「にゃ!」
ベネルに向けてではなく、研究室のようなこの部屋を破壊するように魔法を放つ。
ボンッ!!
「な、なんてことをっ!!!」
ベネルが血相を変えて俺に近付く。
「だって、壊しちゃえばいいじゃん。勇者システム?なにこれおいしいの?って話だもん」
「システムの破壊なんて、なにが起きるかわからないんだぞ!?」
「知ったことじゃないよ。俺は自分勝手に生きる猫だもん」
揺れる。
城が揺れている。
同時に、地面にある魔方陣が光っていた。
「あぁ、元の世界に戻る道が・・・」
「この魔方陣が?」
光ってる。発動してるってことかな?
「この世界の魔力がこの魔方陣に集まっている・・・?」
よくわかんないけど、今がチャンスだわ。
「にゃ!!!」
魔方陣に夢中になっているベネルに向けて、特大な魔法を放った。
もちろん、ベネルは反応に遅れ直撃する。
「くっ・・・!」
死んでない。まぁ、死ぬほどやばい魔法は撃ってないんだけどね。
それでも気を失わせるには十分だったっぽい。
「ばいばい、元気でね」
ベネルに言う。
魔方陣の上で倒れている少年は、静かに魔方陣と共に消えていった。
「ロロ!大丈夫!?」
「ミラ・・・」
ミラが傍に来る。
「ねぇ、もしかしてさ・・・もうロロは自分の世界に帰れないんじゃないの?」
「うん」
「なんで、魔王を元の世界へ帰したのよ」
「偶然システムが壊れて、偶然ひとりだけ帰れそうな感じになったんだもん。いいじゃんそれで」
「なんでそんなに優しいのよ・・・猫のくせに」
「どうせ帰っても、帰る場所のない野良猫だよ」
「・・・もう」
「ねぇミラ知ってる?」
「え・・・?」
「三毛猫の雄はさ・・・」
―――三毛猫の雄はさ
――――――――――――――――
―――長生きしないんだよ。
「なによ?」
「いんや、なんでもなーい」
「いーい?ロロ!隠し事なんてダメなんだからね!」
「ほらミラ、行こう?さっきも言ったけど、帰るとこなんてないんだもん。だから一緒にどっか行こう?」
「ロロ・・・」
小さく頷いて、ミラはまた小さな妖精に戻り俺の頭に乗った。
あ、小さくなれるんだね。なんか懐かしい感触。
道はひとつじゃない。自分で作ればいい。
こういうことなんでしょ?黄色いドラゴン。
勇者システムを破壊して、全ての魔物を勇者という呪縛から開放する。
こうして世界にはなんにもなくなったわけだけどさ、勇者なんていなくたっていいじゃんか。
だって、この世界の事情なんて俺の知ったことじゃないし。
自分勝手?褒め言葉だよ。
自己中心?当たり前だろ。
傍若無人?・・・えっと、どゆ意味?
まぁ、なんでもいいけどさ、俺はとにかく自由なんだよ。
なぜなら俺は三毛猫のロロなんだから。
なにこれ、俺かっこいいし。
ほぼ最終回っす!!
次回はエピローグ的ななにかです。
作品的に、ここで読み終えるのもひとつかもしれません。
次回は作者的にはおまけな気持ちです。
気になる方はぜひ読んでみてください。