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69-なにこれ、心臓=マタタビ

「核とは、人間で言う心臓のことです」

「猫で言えば?」

「マタタビのことです」

「なるほど」


 すげぇわかりやすかった。

 つまり、ものすっごい大事なモノってことだね。


「核を失った魔物は、新たに魔力を生成することができなくなるのです」

「へぇ、死なないの?」

「魔物は基本的に人間と同じで、魔力で生きているわけではありません。それに、魔法自体も魔力の貯蔵庫的なところに貯まっているため、そこが空になるまで使うことができます」

「ふーん」


 ミフリスは物知りだなぁ。


「僕も・・・最後の抵抗くらい・・・させてください」


 ヒューゴはよろめきながら立ち上がり、小さな投剣ではなく大きな槍を具現化させた。


「大きなものの具現化は大変なんですよ」

「あらら、これじゃあ矢で打ち落とせないわね」


 相変わらずのん気なセリーヌ。

 おいおい、大丈夫なのかよ。


「せっかくなので、喰らってください!!」


 思いっきり投げられた槍は、途中で急加速をした。

 人間の避けられる速さじゃない。


「リアルナイトメア!!」


 セリーヌは今まで呪文を口にしたことがない。

 少なくとも俺は聞いたことがない・・・と思う。

 言葉にし、両手を前に付き立てた瞬間、なにかにぶつかる音を立てて槍がセリーヌの目の前で止まった。


「なにがっ!?」

「さて、なんでしょう?」


 なんだろー?

 まぁ考えるつもりは毛頭ないけど。


「ヒントは、触れないものを触れるようにすること」

「まさかっ・・・!」

「本当にわかってる?まさかって言えば解答もらえると思ってない?」


 あ、俺はそれ思ってる。

 バレたかー。


「空気を実体化したのですか・・・」

「大正解!よくわかったわねぇ」


 なるほどね、空気を実体化ね、考えたね。

 ・・・で、なにそれ?


「あんたの虚像にする魔法の方がひとつの物体に対しては私のリアルナイトメアを上回ってたようだけど、あんたのは対象がひとつだし、再度使う場合にほんの少しだけどタイムラグがあるようね」

「お見通しってことですか」

「私は美人な上に頭もいいのよ」

「さすがですよ・・・」

「でも、最後にその魔法から逃げた、それがあなたの敗因よ」


 うお、かっけぇ!

 そのセリフ俺のパクリっぽいし!


「まさか何もないところから具現化させる魔法を使えるなんて思わなかったわ。両方の魔法を使えることにびっくりしたもん」

「はは・・・あなたには完敗です。先に進んでください・・・」

「私のことを褒めてくれたのは・・・うれしかったわよ」

「当然です、セリーヌ」

「今度はもっともっと褒め上手になりなさいね」


 セリーヌは滅多に見せないような照れた表情をしてヒューゴに背を向けた。

 セリーヌって実は褒められることにあんまり耐性ないのかもね。


「ほ、ほらっ!次の部屋行くわよ!もう!刺されたわき腹が痛いんだから!」

「あーい」

「はい」


 ミフリスは少し羨ましそうな顔をしてセリーヌの後をついていった。

 人間ってよくわかんないね。

 俺はミフリスの羨ましそうな表情が何に対してなのかさっぱりわからなかった。

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