64-もう!ロロのバカ! その6
ミラ視点です!!!
「・・・暗いわね」
「木々が太陽を遮っているからね」
「妖精の森はもっと明るいのになぁ」
「この暗さこそが死の樹海と言われるゆえんかもしれないね」
「樹海・・・ってことは迷子になりやすいってことよね?」
「あっはっは。僕が迷子になるわけないじゃないか」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・まぁ、人間はたまにはミスをするものさ」
正直者でよろしい。
ただひたすらに暗い樹海を、たいまつの火を頼りに進んでいく。
ここ、魔力の流れがおかしいわ。
ぐちゃぐちゃっていうか、ランダムに流れてて本当に自分の位置や敵の位置が掴みにくい。
ガサガサガサ
「ぇ、な、なに?」
「噂の主ってやつかな・・・」
「ちょっとまって!そんな噂は私聞いてないわよ!」
「あっはっは。言うのを忘れていたみたいだね。すまないすまない」
もっとすまなそうにしてほしい。
「樹海の主ってなによ?」
言った瞬間にわかってしまった。
本当はわかりたくなんてなかったのに・・・。
「がっはっはっは。樹海に人間とは珍しいのう」
木が喋った。
違う。木の姿をしたモンスターが喋った。
「だが、ここを通すことは許さん」
「ほら、勇者の出番よ」
「そ、そうだね。ミラ君も手伝ってくれると嬉しいんだが・・・」
弱腰なのかいっ!
「魔王への道はワシを、樹木王ファーブルを倒してから進んでもらおう」
妖精の森の樹木モンスターはこんなに狂暴じゃないのに・・・。
木の枝が細いツルとなって襲い掛かってくる。
これくらいは避けられるわ!
「ミラ君。火の魔法を使えるかい?」
「え・・・えっと・・・」
「あっはっは、想定外だったよその返答は・・・ミラ君ならどんな魔法も使えるものだと思ってたよ・・・」
火は森を燃やす。
火は森の敵だ。
だから妖精族は本来火の魔法を使えない。
火が怖いわけじゃない。
火の魔法が怖いわけじゃない。
「ファイヤーボール!」
勇者が小さな火の玉を撃ち出す。
でも明らかに苦手そうな魔法を放つ。
ファーブルは、枝を振るうだけでいとも簡単に火の玉をかき消してしまった。
「に、逃げる?」
勇者の火の魔法を見て、私の脳裏にはひとつのトラウマがよみがえっていた。
怖い・・・。
逃げたいよ・・・。
「敵に背をむけることはできない!」
「かっこつけて死んだらかっこわるいわよ!」
「大丈夫さ!僕だって近くでロロ君の戦いを見てきたんだ」
ロロの戦い・・・。
なんだかんだ、ロロって逃げないのよね。
・・・・・・うん。
わかった。
私も逃げないよ。
「ファイヤーアクセサリー!」
私は、私自身が火の魔法を使えることが・・・怖い。
でも・・・逃げない・・・!
私が妖精族で唯一火の魔法を扱える者として、この現実から逃げるわけにはいかない!
そうだよね、ロロ?
ミラのトラウマについては外伝ででも書こうかと思ってます。




