59-なにこれ、ギルドのボス
渓谷を抜けた俺たちは、とりあえず近くの村のギルドに立ち寄っていた。
ちゃっかり報奨金を受け取るためだって。
「いやぁ、儲けた儲けた♪」
上機嫌なセリーヌの横で、いまだにテンションの上がりきらないミフリス。
「あんた、ミフリスさんだよね?」
ギルドのおっさんがミフリスに話しかける。
「えぇ、そうですが」
「やっぱりそうか。いやぁ、ギルドの大ボスがこんなところで何してんだい?」
ギルドの大ボスってなに?
あれ?今すっごいこと言ったよねこのおっさん。
「それは内密にお願いします」
「おっと、こいつぁすまねぇな」
「えー!うっそー!!ミフリスってそんなすごい人だったのー!?」
セリーヌ空気読めよ。
俺はこの世界のことはよく知らないけど、どうやら王国軍とギルドは別々の組織らしい。
規律のある王国軍では対処できないことをギルドがこなすということでバランスを保ってるってミフリスが言ってた。
はっきり言ってよくわかんなかったし、どうでもいい。
「私は王国軍筆頭魔術師のミフリスです。それ以上でもそれ以下でもありません」
「この国の影の支配者的存在ねあなた」
「私は勇者様を用いて魔王を倒したいだけです」
「ふーん。っていうか魔王になんかうらみでもあるの?」
「それは・・・」
意味深な間。
魔王って俺と同時に召喚されたわけだよね。
っていうことは、俺ってなんで召喚されたわけ?
前回は深く追求せずに話をやめちゃったけどさ、いくら言い伝えだからって魔王はその時いなかったわけでしょ?
「わかっちゃったかも美しい私が。あれでしょ、魔物!」
びくっとミフリスが微細に動く。ほんっとにちょびっとだけ動揺したみたい。
「魔物・・・・・・そうですね」
「ほら、当たったー!さすが私ね!脳みそまで美しいの!」
いや、セリーヌ空気読めってば。
とりあえずギルドから外に出た。
まぁ、公共の場で話すことでもないっぽいしね。
「魔物に両親を倒されたーとか?」
俺が試しに言ってみる。
なんかミラも似たような境遇だったしね。
「えぇ、まさにその通りです」
当たったし。セリーヌより俺の脳みそのが絶対すげーよ。大きさの比率的に。
「まぁ、魔王が誕生する前も魔物はいたし、人間を襲ってたのは事実だからね」
「そうなの?」
「そうよ、ギルドって前々からあったんだけど、やっぱり魔物退治がメインの仕事だったみたいだしね」
「っていうか大ボスってなに?」
話を戻してみる。
「いえ、ただの運営資金提供者です・・・」
「そっか、ただのウンエイシキンテイキョウシャかー」
ごめん、ちょっと難しい単語でよくわかんない。
「あのさ、この国にあるギルドの施設の数・・・尋常じゃないわよ?いくらなんでも個人で払える額じゃないと思うんだけど・・・」
「いえ、現在のオーナー(ボス)は私ひとりです」
どうやら、セリーヌのお金は元々ミフリスのお金だってことまで俺は理解した。
ま、お金っていう概念がよくわかんないからどうでもいいや。
ロロは他人の前ではあんまり喋りません。
だって、めんどう事になるかもしれないでしょう?
だからギルドの中などでは大人しく心の声でツッコミをいれてますw




