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58-もう!ロロのバカ! その2

「そもそも魔力を探索したんじゃないのかい?」


 まさか勇者からこうも的確な指摘を受けるとは思わなかったわ。


「捕獲魔法の中には相手の魔力を無効化するものがあるの。そういうもので捉えられてた場合、索敵にひっかからない場合があるのよ。この都出身のクセにそんなことも知らないわけ?」

「まぁね」


 なんで偉そうなのよっ!

 私たちは街で一番大きなギルドを訪ねた。


「これはこれは勇者殿」

「うそっ!?シェルヴィ様が帰ってきてるの!?」

「わぁ、シェルヴィ様っ!!」

「あはは、元気にしてたかい?」


 えっ、なにこの人気。

 そういえば初めて会った時も女の子たちに囲まれてたっけ。

 私にはわかんないなぁ、この男の良さが・・・。


「ねぇ、君たち。三毛猫を連れた人が訪ねてこなかったかい?」

「んー、見てないよー?」

「ふむ、どうもありがとう」


 意外とヘボ勇者も役に立つものね。

 でも、結局情報はゼロに戻っちゃったけど・・・。

 もう!

 ロロのバカ!

 本当にどこに行ったのよ・・・私を置いて・・・。


「おやおや、寂しいのかいミラ君?僕の肩で良かったら貸すけど?」


 ぇ、こんな気遣いを勇者がかけてくれるなんて・・・。

 そんな優しい言葉かけられたら私・・・ってなるかボケ!

 あー、私表情に出てたのかな。こんな、たらし勇者にまで心配されるなんて。


「ほら、さっさと次行くわよ」

「色々な意味で素直じゃないねぇ君も」

「知ったような口で言うなっ!」


 もうこうなったら街から離れたと考えるしかないわね。

 もしかして、私たちを置いて本当にひとりでどっか行っちゃったのかしら。

 魔王退治なんて絶対イヤだって言ってたけど、どうせロロのいつもの天邪鬼あまのじゃくだと思ってたからなぁ。

 でもでも、いくら魔王退治がイヤでも、急にいなくなるほど薄情な奴じゃないもん。

 門前払い受けたから拗ねてどっか行ったとか?

 ・・・ないわね。

 絶対誰かに捕まったんだわ。


「この手配書って誰が手配したんだろうねぇ」

「知らないわよ」

「ギルドにも軍にも通じてる人なんてそうそういないもんだよ?」

「なによ、ロロを見つける前にそっちから当たろうってわけ?」

「急がば回れってね」


 かっこつけながら言われても・・・。

 でも、珍しくコイツの言ってることも理にかなってるし、私も思ってたとこだったし。

 ギルドの人が言うには、聖都の方から回ってきたって話みたいね。


「聖都・・・」

「シフォニシアには久しく行ってないな」

「ここからどれくらいかかるの?」

「ソルビトールから真北のマルチトール川を越えたところがシフォニシアだね」

「言葉にしたら近そうだけど、それって結構あるでしょ・・・」

「今までの旅路を考えればそんな距離じゃないさ」


 ロロが聖都へ行ったって可能性もあるし、行ってみる価値はあるかも。


「ちなみに、この街から東に出れば僕の故郷方面。西に出れば峡谷レイン・エイノン方面。こっちは人が歩くような道じゃないからね」

「その峡谷方面にはなにがあるのよ」

「んー、アンスピカ山脈へは近いかもね」

「真北に行くよりも?」

「そうだね。聖都から北に行っても死の樹海があって、下手をすれば山脈のふもとにすらたどり着けないで死んでしまうからね」

「ふーん。ま、どうでもいいわ。とりあえず聖都に行きましょう」

「よし、じゃあ王様に話を通してくるとしよう」


 はっ!

 なんで私は今このウザ勇者と一緒に旅しようと思ってるんだろ!

 ふたりっきりとか超ウザイに決まってるじゃん。

 ロロがいたらロロに矛先が向くのに!


「ちょ、ちょっと待っ--」

「さぁ行こう♪」


 「♪」じゃないわよ!!

 もう!

 ロロのバカ!!

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