54-なにこれ、ハゲる前に その1
雨は次第に強くなった。
「ほんっとにこの峡谷はイヤになるわー」
セリーヌが傘をひとりで差しながら言う。
・・・いや、ひとりでずるくね?
「この峡谷は、この酸性の強い雨が頻繁に降ることでできあがったとも言われています」
疑問の答えはミフリスが応えてくれた。
酸性ってなに?
「ほらほら、おふたりさんとも雨にあたってるとハゲちゃうよ?」
「なんで?」
「酸だもん」
ちょっと意味がわかんない。
けど、この雨に当たってるとどうやらハゲるらしい。
ドゴォォオオオン!!!!
「ぇ?ちょっとなに!?」
少し離れたところで岩の崩れる強烈な音がした。
酸で溶けて崩れたのっ!?
ってことは俺もドロドロになっちゃうのか!?
めっちゃ怖いじゃん!
なにこれ、避けらんねぇし。
「水の魔物、レベッカですね」
「そうみたいね」
なんで2人だけで納得してんだし。
レベッカ?水の魔物?
「プリシア級の上位の魔物だよ。言葉も喋る上に弱点らしい弱点がないのよね。この強くて綺麗な私でさえどうやって倒すか検討してるとこだったしね」
弱点なんて電気に決まってんでしょ。
「ちなみにレベッカは雨の降る時にしか出現しません」
「つまり電気系の術は自分たちも焦がすかもしれないってことね」
あれ、なんかこの2人の息が合っててすごい疎外感があるよ。
もうお前らでやっつけろし。
「あらあら、おいしそうなお肉がふたつもあるじゃない?」
レベッカは静かに姿を現した。
外見は人間の女性で、長い銀髪に尻尾が三本生えてる。
すげーな。銀髪って初めて見たわ。
なんだろう、狐っぽいかな。
っていうかお肉の中に俺が含まれてない気がするのはいつものことなのか?
「女狐レベッカってほんとだったんだね?よかったー、私の方が美人だわ」
なにも良くねぇし。むしろ、なんの安心感?
とりあえず挨拶代わりに水の矢を放ってみる。
雨を切り裂いて、一直線にレベッカへと放たれた。
「ふふっ」
消えた?
矢が消えた。一直線にむかっていったはずの矢が消失したぞ。
「この私に水の魔法で挑むなんて、どこのおバカさんかしら?」
「魔法のコントロールを奪われたのですね・・・!」
え?ミフリスの言葉がよくわかんなかった。
「レベッカは水の魔法を得意としています。彼女よりも水の魔法に対して優れていなければ、魔法が彼女に当たる前に掻き消されてしまうでしょう」
説明おつかれ。
相殺ともちょっと違うってことか。
これだけ雨が降ってるのに水の魔法がダメ。電気の魔法もダメってなると残るのは・・・?
「ごめん、任せた」
残ってないぜ!
次回はセリーヌとミフリスの戦闘が見られます!たぶん・・・
筆頭魔術師の実力とはどれほどのものなのか・・・乞うご期待!!!
って今回は予告風にしてみました。
弱点なんてないとか書いちゃって、自分の首絞めた代償は重すぎだったかもです・・・。どうやってレベッカ倒そう・・・。




