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47-なにこれ、小さくて大きな戦い その2

 俺は天才だ。

 猫なのに言葉を喋れる。理解できる。

 魔法が使える。

 身体能力が高い。

 頭が切れる。

 かっこいい。

 そうだ、ドラゴンに負ける要素なんてひとつもないじゃん。

 異常なまでのプレッシャーを与えてくるけど、威圧感で勝負がつくわけじゃない。


「にゃ!」


 今まで、俺は世界を象ってる力『エレメント』と呼ばれる6つの力を使ってきた。

 火、水、風、土、光、闇。

 ミラに教わったこれって、応用できるんじゃないの?

 なんとなくそう思って、深く思考する。

 だって、世界はそれだけでできてるわけじゃない。

 身体能力を上げる魔法とかもあるわけだし、テレポートみたいな意味わかんないものもある。

 もっと細かく分類されてるはずなんだ。

 ドラゴンの攻撃はかまいたち。

 これは風を操る魔法。

 風の流れは肌で感じれば避けられる。


「にゃ!にゃ!にゃ!!!」


 頭のいい人は頭の中で数式を作るんだって。

 でも元々魔法は人間の想像から創造されるもの。

 まぁ、猫なんだけどさ。


「にゃーーー!!!!!」

「うるさいぞ、猫」


 ドラゴンにつっこまれた。

 力が入って毛が逆立つ。

 まっすぐにドラゴンを見つめ、俺はもう一声あげた。


「にゃ!!!」


 瞬間、俺を襲うかまいたちを切り裂き、ひとつの弾丸がドラゴン目掛けて飛んでいく。

 そして、俺の頭にちょっとした振動が走る。

 弾丸として飛んだのは俺。

 テレポートとか空を飛ぶ魔法とか色々と混ぜてみた。

 体を硬くして相手に捨て身タックル。


「ぐふっ!」


 ドラゴンは確かに苦悶の表情を浮かべた。

 ってことは効いた?


「ふんっ、猫ごときの一撃・・・」


 言葉が続かない。

 効いてんじゃん。我慢すんなし。

 着地と同時に俺は距離を取った。

 自分と同じくらいの大きさのモノを正面から受けたらそりゃ痛いでしょ。


「はぁ・・・はぁ・・・」


 今の集中しすぎて息あがったし。

 やべっ、技名忘れてた!

 あとで今の技名考えとこう。


「おのれ!」


 ドラゴンが右腕を振り下ろす。

 同時に出たのはかまいたちではなく、巨大なドラゴンの右手だった。

 やばっ、潰される!!


どごぉぉおおおん!!!!


 真っ暗。

 寸でのところで地面のくぼみに身を隠せた。

 マジであぶねーし。


「ワシの右手の味はどうじゃ?」


 食らってねーよ。

 なに得意げになってんだ。


「なぁ、ちっこいドラゴン。知ってるか?」


 ドラゴンの右手を魔法で打ち消し、低い体勢から相手の目を見る。


「ほぉ・・・運のいいやつめ」

「俺は運がいい」

「なにが言いたい・・・?」

「運がいいからさ・・・俺は絶対に負けねぇんだよ!」


 言うと同時に走り出し、浮遊してるドラゴンとの距離を詰める。


「ミラ!髭!!」


 今までドラゴンのプレッシャーで青ざめていたミラは俺の声を聞いてハッと俺と目を合わせた。

 同時に軽く頷き、すぐに魔法をかける。

 うっすらと光を帯びて、髭に力が宿る。

 ドラゴンは左腕を横薙ぎに振るう。

 今度は巨大な左手が俺を襲った。

 これは避ける場所がない・・・!


ドン!!!!


 衝撃は俺まで伝わらなかった。


「ロロ君、いきたまえ!」


 勇者に助けられたとか一生の恥だわ。

 ボロボロのくせに。


「くっ、止まるのじゃ!!!!」


 ドラゴンは俺に向かって咆哮をあげる。

 ものすごい圧力が俺を押し返すが、足を止めるわけにはいかない。


「くらえっ!!!」


 そのままドラゴンに飛びつき、横をすり抜けていく。


「なっ・・・」


 静かにドラゴンの首が飛んだ。


「勝った・・・よね?」


 そして、ドラゴンのちんけな体は手のひらから砂が零れていくようにして跡形もなく消え去っていった。

 まるでそれが幻であったかのように・・・。

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