44-なにこれ、幻のお尻 その3
第一に気をつけることは間合い。
猫の俺の間合いとおっさんの間合いでは差がありすぎる。
「にゃ!」
水の矢を四方から放つ。
おっさんは躊躇わずにテレポートで移動。
ここまでは計算通り。
でも、次を予想していなかった。
・・・そりゃ、どこにテレポートするかなんて予想できないでしょ。
間髪入れずに攻撃しようと思ったんだけど・・・。
俺の間合いの外、おっさんの間合いの中にテレポートとかずるくない?
咄嗟に振り下ろされる剣を避け、体勢を整える。
「どうじゃ?攻撃が当たらなくてイライラしてきたかの?」
そろそろあの口調がうざくなってきたのは俺だけか?
なんでお尻丸出しの奴に小バカにされなきゃならないの。
しかも俺の白い毛を汚しやがって・・・。
「ミラ、ひとつ提案があるんだけど」
もうこうなったらぶっ殺す。
おっさんが、なにこれ勝てない!って表情になるまで叩きのめすわ。
「え・・・それは・・・できないことはないけどさ」
ミラの困惑した表情なんかもはや目に付かない。
俺は勇者のところに行き、顔をひっかいた。
「いたっ!!!な、なにをするんだい!?」
「ミラの指示に従えタコ勇者」
怒りが頂点に達した俺は、もう腹をくくる。
「おいおいなんじゃ、逃げちまうのかい?」
おっさんはやれやれといった表情。
へっ、今に見てろよ尻出しオヤジめ。
「にゃ!」
小さな水の矢を自分の周り数百と作る。
そして十本ずつおっさんに放つ。
ことあるごとに、テレポートで逃げられる。
わかっているのに、ミラージュで相手がダメージを受けている錯覚に陥る。
その油断から瞬時に間合いに入られて攻撃を受けそうになる。
これがいけなかったんだよね。
当たってないと最初から思っていれば、間髪いれずに攻撃を仕掛けられる。
「にゃ!」
「くっ!」
連続攻撃を仕掛けてから、三回目のテレポートがようやく失敗に終わった。
だけど、小さく威力の弱い水の矢では大したダメージは負わせることができない。
「やるなぁ。じゃがこんな子供騙し程度の威力じゃワシには勝てないぞ」
知っとるわ。
もちろんこれは時間稼ぎ。さすがの天才な俺だって、通常以上の威力を維持した状態の矢なんて、大量に作れないもん。
「おっさん!お尻出てますよ!」
「ファッションじゃボケ猫!」
ファッションって言わねぇよ!
そういうの変態っていうんだよ!
「にゃ!!」
赤い光が洞窟の空間を包む。
「な、なんじゃ!?」
同時に爆発する。
洞窟の中で爆発とか自殺行為だよね。
まぁ、もちろん俺は死ぬつもりなんてさらさらないんだけど。
「ぐっ・・・!」
大量の煙と共にバサッと人が倒れる音がする。
「どういう神経してんじゃ・・・。洞窟内で爆発じゃと・・・?奴隷共も巻き込む気か・・・」
っていうかおっさんのお尻の方がどういう神経してんだよって言いたい。
「残念でしたー。ミラは結界魔法に関してはプロフェッショナルだからね。生憎だけど爆発したのはこの空間だけだよおっさん」
つまり、この洞窟内の開けた空間にだけ結界を張り、結界内でのみ爆発が起こったということ。結界の外には振動を含めてなんの影響もないわけだ。
作戦通り!
さすが俺だよね。
「どうやって・・・爆発を起こした・・・?」
平伏すおっさんのお尻は相変わらず丸出しだった。
「え、別に超高温の小さな火を泥に落としただけだよ」
はい、得意の水蒸気爆発でしたー。
死なない程度には手加減してるんだけどね。
「おっさん、俺に主人なんていないんだぜ。そこを見誤ったことがおっさんの敗因だ」
やべぇ!今のセリフ超かっこよかった!
ちなみに、ミラたちには避難してもらってたから大丈夫。
ちょっと無理やりな勝利だけど・・・まぁ、いいよね。
力技の勝利。空間を爆発しちゃったらテレポートやらミラージュやら関係ないんで。
・・・え?もっとスマートな作戦が他にもあるって?
・・・お、大雑把な性格な猫だし、いいですよね?




