39-なにこれ、エンドレスバトル? 鳥編
空中戦は嫌いだ。
俺自身が飛べないし、魔法も当たりにくいから。
ってか降りてこいし。
「君たちはどこまで保つかな」
それなりに高度な魔法使いってのは認めるから、一発殴らせろ。
不細工なトンビに似た鳥の魔物たちがギャーギャーうるさい中、俺は男に向かって魔法をぶつける。
別に驚きはしなかったが、なんとも下衆な方法で男は防御をとった。
飛んでる鳥が魔法に体当たりしたのだ。
「ロロ君!ちょっと時間を稼いでくれないか?」
勇者が俺を呼ぶ。どうやら一際大きな魔法を使おうとしている様子だ。
なんで俺が勇者の言いなりにならなきゃいけないわけ?
「無理」
二文字で一蹴。勝手にがんばれ。
あくまでも勇者には厳しくするよ。
飛んでる鳥には追尾性のある魔法が有効だ。
あいつらは大して防御に優れていない。
「にゃ!」
ここは港。水はいくらでもある。
俺は自分の体の周りに水の矢をたくさん作って、自動追尾で鳥たちを一斉攻撃した。
ばっさばっさと落ちていく。
しかし今まで通り、男がカードを掲げるだけで鳥たちがぞわぞわ現れる。
よし、俺もちょっと難しい魔法を使ってみよう。
水を額の前に濃縮させて一点に集める。直径1センチ程度の水の玉はだんだん鋭く細く形を変えていjく。前に巨人戦でやったウォーターカッターの応用だ。あの時は巨大な魔法だったから雑にコントロールしても大丈夫だったが、今回はめっちゃ小さく纏めるから、ものすごい精度のコントロールが必要なのだ。
「ん~にゃ!!」
糸のように細く鋭いウォーターカッターが男にむかっていく。また掻き消されるだろうか。
光の速さレベルで放ったカッターに、男は瞬時に身を翻したが一瞬遅かった。
男の右手と持っていたカードを貫通したのだ。
「っく!!!」
カードが撃ち抜かれたことで、そこら中を飛び回っていた鳥たちが一瞬にして消えた。
悔しそうで悲痛の表情を浮かべた男は、左手でカードを取り出した。
しかし、次の瞬間だった。
俺がカッターを使ってから2秒程度しかたっていない。
本当に瞬間瞬間の出来事だった。
「ヘブンスレイン!!」
勇者が叫んだ。
同時に光の雨が降り始めた。
男がカードで召喚した次の魔物はワイバーンだった。しかし、その姿を現したのはコンマ3秒程度。全てが光の雨によって消されてしまった。
「うぐぉぉ」
男にも例外なく雨が当たる。
「これは・・・天空魔方陣?」
ミラがつぶやく。
はい、でました。また難しそうな名前の魔法。
「ほらロロ、空を見て!」
言われて見上げると、巨大な光の魔方陣が空を覆っていた。
これが天空魔方陣?
なにこれ、でかすぎるんですけど。
「はぁはぁ」
勇者の息がマックスにあがってる。しかも鳥に攻撃されて傷だらけ。
うん、ごめんな。俺のせいだよね。
「く・・・くそぅ!お、お、おれが負けるなんて・・・」
どうやら生きていた男が四つん這いになって、立てないでいた。
「盗賊のアジトを教えろ」
勇者が近付き、男の胸ぐらをつかんだ。
「ははは、誰が言うかよ・・・ぐふっ」
うわぁ、痛そう。今、全力で殴られたよ。
なんか、その後ボッコボコに殴られた男はようやくアジトの場所を吐いた。もはや顔の原型とか残ってなかったし。
勇者こえー。
ってかアジト行くの?
嫌とか言っても大丈夫な空気?・・・じゃないですよね。
うん、わかってるよ。ほら、お宝とかもらえるかもしれないしね。
前向きにいこうね。
「ね」
なんとなくそれだけつぶやいて歩き出した。




