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32−なにこれ、次の町

 南に行くにつれて、だんだんと暖かくなってきた。

 やっぱりね、暖かいほうがいいね。


「君たち、次の町にはとても大きな湖があるんだ」


 なんか勇者が独り言もらしてるし。


「へぇ」


 ミラも面倒くさそう。


「その湖を渡るために船に乗るのさ」


 もはや相槌すら打たなくなった。


「その船っていうのがまた素晴らしい。湖の景色を堪能できることはもちろん・・・」


 始まったので、ほっとくことにする。

 肉眼で町を確認できるところまで来た。

 道中は順調そのもの。

 おもしろいこともなにもなかった。

 ってか勇者がうざかった。いや、暑苦しかった。


「サンベンプール」


 なにこれ、くらっ!

 町中が暗い雰囲気を出している。

 まぁ実際問題、町の雰囲気とかどうでもいいからね。俺は南に行ければそれでいいし。

 湖畔の港へ行くと、人だかりができていた。


「なんで船を出してくれねぇんだよ!」


 うるさく品のない怒声が響く。


「申し訳ありません。申し訳ありません!」


 人だかりの中心には、冴えないおっさん。


「湖に潜む魔物が活性化いたしまして、皆様を無事にお送り届けることができないのです」

「っく・・・・・・」


 別段腕に自信のない人たちのようで、みんな散々になる。


「僕たちが倒すというのはどうかな?」

「えー、めんどい」


 とりあえず勇者の提案を即却下する。


「あー!猫さん!!」


 突然、後ろの方から女の子の声が聞こえた。


「ひっさしぶりー」


 その女の子は、俺がこの世界にきてオークションに突き出した商人の親子の娘だ。


「私リュカだよ。覚えてる?」

「まぁ、そりゃ」


 そりゃ覚えてますよ。名前は覚えてなかったけど。


「ねぇ、湖渡りたいの?」

「やぁ、レディー。ロロくんの知り合いかい?」

「お前は黙っとけ」

「わぁ、かっこいいねこの人。猫さんはロロって名前になったんだ?」

「まぁ」

「ねぇ、商談しましょ?」


 さすがは商人の娘。挨拶とお世辞の次に出てくる言葉は商いの話だ。


「私たちの船の護衛を依頼したいの」

「俺に?」

「そっちのかっこいい人が強そうなんだもの。猫さんはなにもしなくていいわよ」


 そうですよね。所詮猫ですもんね。


「報酬はきちんと払うわ」

「僕の力を必要としてるのなら、断る理由はないね」


 はいはい、その気になっちゃったね。


「さぁ、みんな!船に乗り込むんだ!」


 とりあえず一泊してから行くことにしよう。

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