23−なにこれ、悪夢
夢を見た。
そりゃ猫だって夢を見る。
そこには魔王がいて、そこには勇者がいた。
全然知らない魔王と、全然知らない勇者がいた。
なんでか魔王と勇者だということだけはわかった。
「助けてくれ」
「たすけてくれ」
「タスケテクレ」
二人の声が、不協和音となって耳に響く。
なにから?
どうやって?
どうして?
「俺達を開放してくれ」
さっぱり意味がわからん。
勝手に開放されろ。
「この呪縛を壊してくれ」
呪縛なのに解くんじゃなくて壊すの?
「お前は特別だ」
そういうごたくはいらない。
俺が特別だなんてことは生まれた時からわかってる。
「帰りたい」
俺の言葉だから。
お前らが使うなし。
「勇気を持て」
愛と勇気で世界が救えるなら何千回って救ってやんよ。
「真実を見ろ。気づけ」
猫の目は全てを見つめる。
俺の目は全てを見透かす。
気付いてないんじゃない。
気付かないフリをしてるだけ。
「一本の道を歩け」
嫌だ。
俺は道でないところだって歩く。
だって猫だもん。
道しか歩かないのは人間の悪い癖だろ。
勝手に同じ生き物にしないで。
「助けてくれ」
繰り返し。
壊れたテープレコーダーのように。
ただひたすらに助けてほしいらしい。
他人に頼るな。
他人に頼ってちゃ、野良の世界じゃ簡単に死ぬよ。
自分でなんとかする努力をしろ。
「信じてる」
勝手にしてくれ。
俺は関係ない。
なんで魔王を助ける必要があるのさ。
魔王に信じられる義理もないし。
お願いなのか指図なのかはっきりしてくれ。
どっちであっても関係なく答えは決まってるけど。
「残念、お断りー」
それだけを言って、目が覚めた。
「なにが?」
目の前にはミラがいる。
ここは試合会場の人影少ない日陰の昼寝スポット。
あぁ、そっか。寝てたんだね。
三回戦が始まるまで寝てようって自分で決めたんだわ。
なにこれ、肉球に汗かいてる。
「ぇ?」
「なにがお断りなの?」
うわ、声に出てたんだぁ。
なんか恥ずかしいな。
「あぁ・・・なんだっけ?」
「もう。ほら、変な夢見てないでそろそろ試合だよ。勝つんでしょ?」
溜息と同時に俺を鼓舞する。
「めんどいなぁ」
あんまり覚えてないけど、もう二度と見たくない夢だった気がする。
お願いだから、俺を巻き込まないでくれ・・・。
連載から初めて一日間隔を空けての投稿になってしまいました。
これからもなるだけ間隔空けないで連載しようと思います。
今回は息抜き的なお話でした。
いや、ある意味ではすごく大事なのかな。
笑いのネタ的には皆無に等しい内容で、申し訳ないです。




