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18−なにこれ、勇者じゃん

「勇者様!サインください!」


 もちろん俺にじゃないよ。


「もちろん、ほら、順番だからね」


 騒ぎの中心になっていたのは勇者と呼ばれた一人の男。

 イケメン。金髪。白い鎧。赤のマント。

 なにより、人間。


「ん?猫さんもサインがほしいのかな?」


 いらねぇよボケが。


「勇者様は猫にも優しいのですね!」


 周りにいる大衆はそれだけでキャーキャー大騒ぎ。

 俺が騒ぎのネタになっているというのがなんとも心地悪い。

 どいつもこいつも愛玩動物って思いやがって。


「これが本物の勇者なのかな?」


 ミラが耳元で囁く。

 知らないよ。


「猫さん、僕の名前はシェルヴィ。南の王都の王より勇者の称号を与えられてこの地へ参った」


 へぇ。


「それでは、また会えるといいね。猫さんと小さな妖精さん」


 いや、断る。

 もう会いたくないから。

 勇者は颯爽とその場をあとにした。


「なにあれ?」

「さぁ?勇者様だってよ。ロロのライバルじゃない」


 いや、断る。


「さって、どっかで食糧調達しないと」

「あぁ、それなら・・・」


 俺は飲食店を探した。


「あら、おいしそうな香りがするわね」


 そのまま店を素通り。


「入るんじゃないの?」


 そして路地裏へ。


「もしかしてさ・・・」

「もしかするよ」


 ごみ箱漁りは野良猫の基本でしょ。


「おや、こんなところで・・・」


 あぁ、この声は。


「奇遇じゃないか」


 勇者め。

 本当に奇遇なのか?

 お前みたいな綺麗なやつの来るところじゃないだろうに。

 しかもついさっき会ったばっかりだろ。


「君、ギルドからお尋ね者になってるよね?」


 あぁ、そういえばそうだったかも。


「まぁ、そのことはどうでもいいんだけどね。僕はそちらの妖精さんも気になるんだよね」

「ふーん」

「ハハ、やっぱり話せるんじゃない」

「そりゃそうよ」

「この猫さんの名前は?」

「ロロよ。私はミラ」

「ロロ・・・ちゃん?」

「男だっつの」


 思わずつっこむ。こいつムカつく。


「おや、君も喋れるのか。それじゃあ今までの会話も全部わかってるね?改めて、僕はシェルヴィ」

「興味ない」

「僕は君たちに興味ある」

「ロロ、行こう?」


 初めてミラと意見が合った。


「ロロくん、もっと自分の魔力を隠した方がいいと思うよ」

「は?」

「武術大会、楽しみにしてるからね」


 そう言って、去る。

 もう二度と会いたくない。


「なんかさぁ、あの言い方ってまるでロロが大会に出るみたいな感じじゃなかった?」

「嫌です」


 人間って好きじゃない。

 男って嫌い。

 勇者は大っ嫌い。

もう一人の勇者(人間)の登場です。

コテコテな勇者です。

モテモテな勇者です。

・・・うらやましくなんかないですから。

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