1−なにこれ、召喚されたし
『』で表記されている言葉は、猫の言葉として読んでください。人間には通じていません。
現実世界から異世界へ飛ばされるのは、なにも人間だけに限ったことじゃない。
人間だけに限らせているのは、ただの先入観ってやつだ。
『意味わかんね。なにこれ』
俺は呟く。
周りには多くの人間がいて、なにやらざわついている。
「あ、あなたが勇者様でしょうか?」
意味わかんね。なにコイツ。
なんか変な色の髪をした女の人が俺を見下しながら、しかもなんか動揺しながら話しかけてきた。
『うっせー。飯よこせや』
俺がそう言うと、周りがさらにざわつき始めた。
なにこれ。ってかうわっ、俺人間の言葉わかるんですけど。
「えっと……失敗?」
俺を見て失敗とは何事だ。失礼にもほどがある。周りを囲んでいた人たちも次々に帰りだした。
「ねこちゃんだー」
幼女が俺の元へ駆け寄ってきた。
「ねこちゃん、ねこちゃん」
うっとうしいな。
俺は世にも珍しい三毛猫の雄だぞ。もっと崇めろってんだ。
俺はずっとその場に座っていたが、結局その場に残ったのは一番最初に言葉を放った変な色の髪をした女だけだった。
「な、なぜ失敗なんてしてしまったのでしょう・・・」
女は今にも泣きそうな顔をしている。泣きそうな顔で、俺の顔をのぞきこんできた。
「それとも、あなたがこのバッゼルディア王国を、いや世界を救ってくれるのでしょうか?」
マジで意味わかんねコイツ。寝言は寝て言えし。
「きっと・・・きっとそうに違いないわ」
コレどこの宗教団体?あーお腹すいたわぁ。なんか漁りに行こうかな。
「私の名前はミフリス。この王国の筆頭魔術師です。あなたは違う世界から呼ばれた勇者です・・・たぶん。どうか我々を魔王の手から御救いください」
あ、良い匂いしてきた。なにこれ、焼き魚っぽい。ちょっと行ってみよ。
俺は立ち上がり、ゆっくりと匂いの方へ歩き出した。
「あっ!そ、そっちの方角は魔王がいるとされている北のアンスピカ山脈の方角。やっぱりあなたは勇者なのですね?」
俺の後を女がついてくる。
後ろに立たれるのすっごい嫌なんですけど。
「勇者様。どうか魔王を倒してください!」
女が頭を下げてる間に、俺は匂いの家を見つけて、その庭で焼いていた焼き魚をもらいに庭の中へと侵入していた。
「き、消えた?もしかして・・・」
もしかしない。お腹すいただけだから。
庭にはおっさんが一人で三匹の魚を焼いていた。
「お、三毛猫じゃねぇか。なんだ、ほしいのか?」
話のわかるおっさんじゃねぇか。
俺は甘い声でみゃ〜っと鳴き、おっさんの足元にくっついた。
「しょうがねぇなぁ。今日は大漁だったからな、一匹くらい分けてやらぁ」
景気の良い話だ。
俺の目の前に無造作に地面に焼き魚が置かれ、俺は焼き魚に食いついた。
まぁしかし俺は猫舌なもんで、噛みついて身をほぐしたらすぐにペッと吐いてを繰り返して、冷ましながら食べた。
『ごっつぉっつぁん』
それだけ言って、俺は庭をあとにした。
ってかここ日本じゃねぇじゃん。なんか今気付いた。全然建物の種類が違う。匂いも違うし、地面が固いコンクリートじゃない。
いつも通りに塀の上を歩こうと思ってたら、歩けるような塀とかねぇし。
眠い。飯食ったら眠いわ。
とりあえず、適当なところで俺は寝ることにした。
詰まるところ、ここが日本でも異世界でもなんでも良かった。飯が食えて、眠れて、退屈さえ凌げれば。
ただ、そんな甘い考えは起きた時にはすっかり忘れてしまうことを、俺はまだ知るよしもなく、深い眠りについた。
コメディ小説を書くのが初めてなもので、何かアドバイスや感想など頂けたら嬉しいです。
後先考えずに書き出してる感が若干滲んでますが・・・・・・がんばりますw
追記
この作品は猫視点、猫思考で描かれているため、極端に描写説明が不足します。
どうか、勝手にご想像して読んでいただけると助かります。




