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決闘後

「アルフ・コルベールの勝利!」


 アルフが木刀をオルクに突き付けると、立会をしていた教師が高らかに宣言する。それを聞いて私はほっと一息ついた。きっと周りの生徒たちにはオルクが猛攻を加えたものの、気負い過ぎて手汗をかき、木刀が滑ってとんでいってしまって負けたようにでも見えたのではないか。


 見物の生徒たちはある者は歓声を上げ、ある者は驚く。中には「オルクに金貨賭けていたのに」と肩を落とす者もいた。


 それを見て私はまるで自分のことのように誇らしい気持ちになる。


「……と言う訳だ。もうレミリアにちょっかいを出すのはやめて欲しい」


 アルフの言葉にオルクは悔しげに歯ぎしりする。が、周囲を見渡してたくさんの生徒が自分たちを見ているため今更どうにもならないことを悟り、悔しそうにぺっと地面に唾を吐く。


「ふん、元々俺はあんな女に興味はなかったんだ!」


 そう吐き捨てると彼はどこかに走っていった。


「全く、最後まで見苦しい奴だったな」

「ありがとうアルフ」


 私は決闘場に入っていき、アルフに声をかける。

 オルクに勝っても何とも思っていなさそうなアルフだったが、私が声をかけると急に照れたような表情に変わる。


「いや、大したことじゃない。それにあいつが好きでもないのにレミリアにちょっかいをかけるのが許せなかったんだ」

「本当にありがとう」


 そんな私たちを見て、中には「お似合いのカップルだ」「オルクより彼の方が婚約者にふさわしい」などとささやく人もいる。それを聞いて私は恥ずかしくなってしまう。


「せっかくだしこの後どこかでお茶しないか?」

「分かった」


 私が頷くと、アルフは私の手をとり、周囲の生徒たちに手を振りながら学園を出ていくのだった。




 私たちはいつものように、学園から少し離れたカフェに入る。普段は紅茶ぐらいしか頼まない私だけど、今日は気分が良かったのでケーキセットもつける。庶民的なところなのでそれでも大した値段にはならなかったが。一方のアルフはいつものようにコーヒーだけだった。


「改めて、勝利おめでとう」

「うん、どちらかというと僕にとってはどうやってたまたま勝ったように見せかけるかの方が大変だったな」

「確かに、すごかったね」


 アルフはオルクが木刀を振り降ろす力を利用し、木刀同士が触れあった時にオルクの手から木刀が飛んでいくようにしたのだが、おかげで周りの生徒たちは力みすぎたオルクの手が汗か何かで滑ったようにしか見えなかっただろう。私も何も知らなければそう思ったに違いない。

 が、急にアルフは真顔になる。


「さて、これでこっちの件は解決したと思う。問題はシルヴィアの件だ」


 アルフの言葉に私はごくりと唾を飲み込む。

 正直なところオルクの件はシルヴィアに比べれば枝葉末節に過ぎない。


「二年生になって以来、シルヴィアを見る周囲の視線は冷たいし、中には公然と悪口を言う者もいて、おそらく彼女は結構気にしているらしい。そのため、休みの日は最近あまり行ってなかった裏路地の店にも足を伸ばしているらしい」


 春休みが明けて、今度はレミリアが嫌がらせの標的になっていることを私は薄々であるが知っていた。ざまあ見ろという気持ちも多少はあったが、どちらかというとひたすらこんなことが繰り返されているという事実に嫌気が差していた。


 とはいえ、そのおかげでシルヴィアが尻尾を出しそうというのは皮肉な話である。


「ということはつまり」

「そうだ。彼女は再び闇魔術の力に頼って現状を変えようと思っている。黒幕が彼女と再び接触するかは分からないが。だから僕は放課後や休みは彼女の監視を重視しようと思っている」

「分かった」


 いよいよ泳がせていたシルヴィアが尻尾を出すかもしれない。そう思うと私も緊張する。


「しばらく学園以外ではあまり会えなくなると思ってね」

「いいの。アルフのおかげで多分もう私にちょっかいをかけてくる人はいなくなると思うし。むしろ私に何か手伝えることがあれば言って欲しい」

「分かった。進展があればまた伝える。だから今日は最後にレミリアと休日を過ごしたいと思ってね」

「ありがとう。でもこうしている間にもシルヴィアは黒幕と会っているかもしれない。だからそれは後にして今は仕事を優先して」


 私としてもアルフと会える機会が減るのは嫌だけど、だからといってシルヴィアが怪しい動きをしているのを放っておくわけにはいかない。それに事件が解決すればまたいつでも会える。

 だから断腸の思いでそう告げた。

 私の言葉にアルフは少し驚いたが、やがて苦笑する。


「それはその通りだ。レミリアのためと言いつつも、一緒にいたかったのは僕の方だったのかもしれない」


 その言葉に思わず私の方も嬉しくなってしまう。


「そう言ってくれてありがとう。でも、シルヴィアさえどうにかなれば私たちはいくらでも一緒にいられるから」

「それもそうだな。ならば行ってくる」

「気を付けて」


 こうして私たちは席を立ったのだった。

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