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とあるセカイの恋物語  作者: 自粛城男
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僕だからできる三角形①

一樹いつき。それで、あきらの奴がさあ。私が写真撮り終わっていないのにそのパンケーキにフォーク刺して・・・」


僕と向かい合って座っているその女子は、早口でよくしゃべる。

会話の流れは常に彼女が作っていて、僕は、相槌うったり、よくわからないところを聞き返したりするだけ。

そんな彼女の名前は、天王洲絵里てんのうず えり

僕の通う高校の一つ上の高2の先輩だ。

といっても僕は普通科で彼女は定時制なので学校で会う機会は殆どないんだけどね。

で、彼女の容姿はと言うと、うん、相当かわいい。

栗色の大きな瞳。可愛らしい唇。暗めアッシュの髪は、肩の長さのボブにしている。

そして彼女は自撮りのSNSをやっていって、結構人気があってフォロワーも多い。

だけれど、今、僕の前にいる女子は、眉毛と目を吊り上げ、攻撃的な口調で、気が強い面倒くさい奴だ。

SNSの中の物憂げな美少女とは程遠い。

だけど、だからこそ、そうでない彼女の素顔を、彼女の素の姿をこうして眺めることができる自分の立場にちょっとした優越感を抱いてしまう。


「一樹さ、そしたら章の奴、なんていったと思う。章のやつさ」

章というのは、絵里の一つ下の高一の弟。

僕の同級生だ。

絵里は、暇さえあれば弟の章をカフェ巡りだの買い物の荷物持ちなどに連れ回しているみたい。

ちなみに僕は、彼の事を「弟くん」と呼んでいる。

弟くんは、その呼び名をめちゃくちゃ嫌がるんだけどね。

そういえば、僕自身の紹介がまだだったね。

僕の名前は、星山一樹ほしやま いつき

渋谷中央高校という共学の高校に通っている女子高生、、かな?、、、

うん、とりあえず、いまはそういうことにしておこう。


・・・しかしえりりんの話すことと言ったら・・・


・・・弟くんのことばかり・・・


・・・まるで恋人じゃん・・・


「しかし、ほんとえりりんは、弟くんの事好きだよね」

「あのねえ!一樹」

えりりんは、怒りに満ちた瞳で僕のこと睨みつけている。


・・・あっ、やば、これ、一番言っちゃいけないことだった・・・


「あたしが、章の事を好きなわけないでしょ!弟だよ!実の弟だよ!」


いつもならここで、へらへらと謝って話題を変える僕なんだけどさ。

今日は、ちょっと、えりりんに突っ込んでいきたい気持ちだった。

もう、そろそろいいでしょ。えりりん。

本音をぶつけあってもいい頃でしょ。


「だってさ、えりりんは、口をあければ、章、章って。そればっか」

「はあ?そんな事ないでしょ?一樹の事も話してるわよ」

「僕の事も?誰に?」

「それは、その・・」えりりんは口ごもった

「それ、弟くんにでしょ」

「身内に話をするのって普通じゃん、身内に・・」

そういうとえりりんは俯いた。

唇をぎゅっと噛み、目を潤ませている。


・・・ちょっといじりすぎたか・・・


「えりりん、ごめん。これ上げる」僕は謝りながら、自分の前のフルーツタルトの皿をえりりんのほうに押しやる。

「やったー!、ラッキー!」顔を上げてほほ笑むえりりん。


・・・立ち直りはええな、じゃあ・・・


「あのさあ、天王洲絵里さんに彼氏さんとかいないんですか?」僕は畏まって尋ねる

「はい、星山さん、絵里さんには、そんな人いませんよ」タルトのキウイをほうばりながら答えるえりりん。

「絵里さんは、彼氏さんは作らないのですか?」

「周りにいい男がいないですからね」


・・・やっぱ、おとうと君よりいい男がいないから?・・・


そう言うのはやめた。

同じことの繰り返しになるしね


「じゃあ、僕とかどうですか?」


「はあ?私、百合とかそういう趣味ないわよ。一樹知ってるじゃん」


「僕は優しいし、えりりんの事もよくわかっているよ」


「あっそ、じゃあ、いいわ。一樹が、男の姿になるなら考えてもいいわ」


・・・うわっ、デリカシーないなあ・・・


・・・LGBTにはもっと繊細に関わらないとだめでしょ・・・


・・・でも、そういうあけすけな所が好きなんだけどね・・・


はい。そうです。


僕はトランスジェンダーです。


戸籍上の性別は、今んとこ男性ですが、身なりは女性で、可愛いものが大好き。

身体は小柄で・小顔で、自分で言うのもあれですが、どうみても美少女です。


恋愛対象は・・


うん、普通に男の人も女の人も好き。



「いいよ。流石に学校ではこのままにさせて頂きたいけど、今度、男の姿でえりりんとデートしますよ。自分で言うのもなんですけど、彼氏としての僕も、かなり映えますよ」

この言葉は自分で意外だった。

ちょっと悪ふざけすぎるか?自分に対して


「えっ、一樹、そんな事できるの?トランスジェンダーってすごい!」

僕の言葉にえりりんも驚き、大きな声を上げる。

「ちょっと、えりりん。声が大きい。さすがにちょっと恥ずかしいよ。」

「あ、一樹ごめん」

「まあ。そんなに気にしないけどね。」

「でもなんで?」

「それは、えりりんの彼氏になりたいからでしょ」

「あ、あ、そう・・」

意外そうな顔のえりりん。

そして僕は、自分の言葉が冗談なのか本気なのか分からなくなっている。


そんな事を考えながらも、僕は、えりりんとデートの日程を決めた。

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