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バーベナなんていらない  作者: ゆうま
2/15

第1話 始まり

第3回戦「リアル人狼ゲーム」開始です

「それでは、「リアル人狼ゲーム」お楽しみ下さいませ」


毎度姿を現す運営側の人間は「ゲームマスター」を名乗る

だけど今回はそうじゃなかった

このゲームに司会役がいては秩序が生まれてしまうためだろう


僕は一番最初にこの会場に来て、全員の入ってくる様子を見ていた

同じタイミングで来た人は同じゲームに参加したと仮定するのが無難

となると、僕以外の人は最低1人の顔見知りがいることになる


現在時刻は18時

自己紹介なんて言っている余裕はない

なにより目立ちたくないので言いたくない

そんなことは他の誰かが言うだろう


「ひとつ聞きたいことがあります」


抑揚のない声が会場に響く


「みなさんが参加したゲームのタイトルです」


名前よりもどうでも良いことを聞きだした

一体なんの必要があって今なんだろう


「そんなことよりも今日処刑をする人物を決めなければ時間がないであります」

「それがそうでもないんです。例えば僕たちが参加していたゲームですが、花の名前がタイトルに必ず含まれています。花言葉が分からないとタイトルの意味が分かりません」

「自分はタイトルに意味を見出すことに意味がないと思うであります」

「そう言われると弱ります。僕たちもそれがどうしても必要なことだとは証明出来ないんです」


彼らは今日生き残る、このゲームをクリアする

そのために聞いているのではなく、ここから帰るために聞いている


どうして生きることに一生懸命なんだろう

僕には分からない

少し、ほんの少し、興味がある


それに、これは僕も聞きたかった

前回と違うことは今回の鍵になる場合が多い

「ギャンブルの塔」で嫌味たっぷりな紹介文と共に言われたタイトル

紹介すらなかったのには理由があるはず


「3人の中で花言葉が分かる人物が1人しかいない。他のグループもそうであれば、今日処刑される人や人狼に襲われる人が唯一知っている人物なら困る。そういうこと?」

「…そうなります」


わざと嫌な言い方をしたのが分かったのか、苦い顔をしながらも頷く


「そんなことで処刑されるかどうか決められるかもしれないってことじゃん!冗談じゃない!ほら、アンタもなんか言ってよ!」

「…実は、あたしも少し思ってた。なにに関係するかは分かんないけど、意味のないタイトルなんかじゃない」

「は?アンタなに言って…」

「片瀬は黙ってて」


ゆっくり息を吸うと、真っ直ぐどこかを見つめた


「あたしは喜多。タイトルは「悔いないペテロ」。このタイトルを見たときに、背筋が凍った。ペテロはキリストに「今夜鶏が鳴く前に、お前は三度、わたしを知らないと言うだろう」そう予言されて、その通りになって、悔いた男」


瞳から涙が零れ落ちる


「今頃っ、昔の約束を思い出したって、意味なんてない…っ」

「話してくれてありがとうございます」


優しく微笑んで背中をさする

その様子を見てさっき反論した女の子はぐっと手を握った


「自分は園田であります。タイトルは「アケルナーの向こう側」でありますが、意味は分からないであります。2人はどうでありますか」

「峯っていいます。俺も分からないです。すみません…」

「我は佳賀里。残念ながら我も知らんな」


それなら何故威張る


「あのっ、小野寺です。タイトルの意味は分からないです」

「俺様は分かるぞ。インゲルとは自身の靴を汚したくないがために土産のパンを泥に落として踏んで渡ろうとした少女の名だ」

「か、彼は畠中さんで、タイトルは「インゲルとは呼ばないで」。ぼ、僕は岸」


なににしても物語があって、そこからなにを学ぶのかってことだと思う

でも2人には関わりたくない

目立つのも嫌だから質問はしないでおこう


「金井です。タイトルは「オダマキは救えない」で、オダマキの花言葉は「愚か者」です」

「村田ですけど…」

「多岐川です」

「「悔いないペテロ」片瀬」


視線が僕に集まる

そうか、もう自己紹介をしていないのは僕だけか

役職カードと一緒に封筒に入っていた紙を再度確認する


『あなたが参加した「ギャンブルの塔」のタイトルは』――――


変わっているはずもない

それなのに確認したのは、変わっていてほしかったから



―――――

タイトルのみを言う←選択

タイトルと意味を言う

―――――



「戸羽です。タイトルは「スフェーンは叶わない」だけど、意味は分からない」


村田さんがちらりと金井さんを見る

当の金井さんは俯いていて気付いていない

それか、僕がなにかを言った瞬間そうなると分かって俯いたか

この場合タイトル以外に考えられない


「それで、どうするのでありますか。残り時間は30分でありますぞ」

「アタシ、タイトルの意味が分かる人が危ないと思う」


この「リアル人狼ゲーム」のことだけを考えないならその可能性がないとは言えない

でも、勝たなければ意味を成さない


「は…?片瀬なに言ってんの…?」

「アンタ、本当はあのこと知ってたんじゃないの。ちゃんと言ってたらアイツ死ななくて良かったんじゃん」

「そんなわけないっしょ」


「あのこと」がなにを指すのか

それも気にはなる

でも、それよりも気になるのは喜多さんの態度


「反応薄くない?分かった、アンタ人狼だから目立ちたくないんだ」


人狼という言葉に全員が反応し、喜多さんに注目が集まる


「そういうこと言うの止めてよ」


僕が気になるんだから片瀬さんが気にならないはずがない

だけど、この流れは困る

話しが僕に振られる可能性が…


「戸羽だっけ?アンタ見てたじゃん、気になるでしょ」


仕方なく口を開く


「僕は最初にこの会場に一人で来た。次に入って来たのが「悔いないペテロ」組。そのときは互いにどうでも良いことでぎゃーぎゃー言い争っていたけど、今喜多さんは片瀬さんを軽くあしらっている。僕も気にならないと言えば、嘘になる」

「ほら、」

「でも村人側の役職かもしれないことも忘れちゃいけない。これ以上かき回すなら片瀬さんを選ぶことになると思わないかな」


この時点で騒いでいる片瀬さんが役職持ちだとは思わない

人狼で喜多さんを嵌めようとしているのなら愚策

後先考えない馬鹿だ

リスクに対してリターンが少ない

これで静かになってくれないと、話し合いが出来ないままになってしまう


「そうだ。そうやって人に押し付けようとして、片瀬が人狼っしょ」

「はぁ?アンタ本気で言ってるわけ?アタシが人狼なわけないじゃん!」

「それなにを根拠に言ってんの?」


もう僕知らない


「時間がないであります。今日は2人のどちらかを処刑すれば良いであります」

「は?」

「え?」


人狼なら良い作戦

この発言は誰がしてもおかしくない

タイトルのことで少し注目を集めた園田さんが買って出るのは必然

占い師か霊能者に名乗りを上げるなら、園田さんは怪しい


「話し合いを無茶苦茶にしておいて殺される勇気はありません、そう言うのでありますか」

「いや、でも…」

「あたしは反論しただけ。突っかかって来たのは片瀬だから」

「どちらが悪いか、どちらが人狼か、全員で決めれば良いであります」


タイトルの意味が分かっている金井さん、畠中さんはだんまりを決め込んでいる

村田さん、峯さん、岸さんは気弱そうだし発言はしないだろう

小野寺さんと佳賀里さんも動く気配はない

どちらにしても残り5分でなにか解決出来るとは思えない


「せーのの掛け声で人狼だと思う人物を指すであります」


無言のまま残り1分になり、園田さんが静かに言う


「せーの」


喜多さんを指しているのが7人

村田さん、峯さん、佳賀里さん、園田さん、畠中さん、小野寺さん、片瀬さん


片瀬さんを指しているのが4人

金井さん、多岐川さん、岸さん、喜多さん


僕は、園田さんを指している


「違う!あたしじゃない!」


部屋の隅にあった箱が大きな音を立てて開いた

園田さんが見に行こうとするのを制止して多岐川さんが行く

苦し気な表情の多岐川さんが持っているのは注射器


「嫌!止めて!」


その言葉が意味を持たないことを分かっていても、涙を零して喜多さんは叫ぶ


「渡してほしいであります」

「意味を分かっていますか」

「当然であります。提案したときから覚悟していたであります」

「分かりました」


暴れる喜多さんを峯さんと佳賀里さんが押さえる

意外な人物が動いている

しかも2人は園田さんと同じ「アケルナーの向こう側」だ

気になるな…


注射を打たれた喜多さんは苦しそうに喉に手を当てる

でもそれも少しの間だけで、すぐに動かなくなる

喜多さんに割り当てられていた個室のベッドに寝かせると、解散になった


僕も僕に割り当てられた部屋に入り、ベッドに身体を預けた

もし明日が僕にもあるのなら、気を付けるべき点は3つ

展開によってはもっと増える

不干渉とはいかなくなるかもしれない


全て明日があればの話しだ

生存者:園田、峯、佳賀里、小野寺、畠中、岸、金井、村田、多岐川、片瀬、戸羽

死亡者:喜多

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