表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
バーベナなんていらない  作者: ゆうま
14/15

第13話 決意

生存者:佳賀里、金井、村田、多岐川、戸羽

死亡者:喜多、小野寺、片瀬、峯、畠中、園田、岸

生存者全員が広間の椅子に座った


金井さんは俯いていて、決心がつかない様子

どうすれば良いかなんて、本当は分かっているはずなのに

タイトルの意味がどうこうとか、そういうことじゃない

単に自分が生き残るにはって話し


このまま黙っていてもどうしよもない

あの話しをするしかないな


「…本当はどうすれば良いかなんて、分かっています。でも、自分のためではない理由がほしいんです」


あの話しは「自分のため」を補足するものでしかない

願いを叶えないことが相手のためにならない、という話し方をすればいけるか?



――――

話しをする←選択

話しをしない

―――――



「「名前当てゲーム」のゲームマスターがどうして僕らを「正しい終焉」に選んだんだと思う」

「分かりません」


少し経って誰も答えなかったからか、多岐川さんが無難な発言をしてくれる


「僕はタイトルの意味と関係すると思う。金井さんならテーマにしたのは花。花言葉が分かるのは7人の中で金井さんしかいなかった。だから金井さんが「正しい終焉」なんだ。どうかな」

「それならタイトルの意味が分からない人はいないと思います」


考えて聞いてほしいからわざと言った

わざと金井さんの名前を出した

だけど、それも分かっているかな


「こう考えれば良いんだ。第3回戦「リアル人狼ゲーム」で別れる陣営にひとりタイトルの意味が分かる人がいれば良い」

「人狼側は嘘を言っていないなら誰も分からないはずです」

「嘘なんだ」


じっと目を見られる


「どうしてそれを知っているんですか」

「峯さんと佳賀里さんに聞いたから。峯さんは「園田さんも少し分かっていて、自分も分かる」と言った。佳賀里さんにどのタイミングで知ったのか聞いたら1つ目のギャンブルが始まる前に全員がタイトルの意味が分かるか言ったらしい」


確認するように佳賀里さんを見る


「うむ、事実なのだ」

「佳賀里さんが嘘を吐く必要はありませんから、本当なんでしょう。それで、なにが言いたいんですか」


先の見えない話し方をしてしまっただろうか

でも、これは順を追って説明しないといけない


「タイトルの意味が分からない人は、タイトルの意味が分かる人と一緒でないと生き残れない」

「一緒でないと、ですか」

「例えば多岐川さん。3人で勝って次へ進めば自分に与えられたタイトルの意味が分かっている人がいる。でも、もしひとりで進むなら、多岐川さんは与えられるタイトルの意味が分からない」

「それなら多岐川さんは私が死んだ時点で死ぬことが決まるということですか」

「違う」


金井さんならすぐに分かってくれると思ったのに

僕の説明が下手なのか?


「僕も嘘を吐いた。本当は分かっているんだ。だから、僕と多岐川さんで進めば多岐川さんのタイトルは花から宝石になる。次で僕が死んで多岐川さんが生き残ったら他のテーマになる。そういう意味」

「…今言った日本語は理解しました。でも仮説の域を」


言葉を切って俯く

悪いけど考え込んでいる時間はない

核心に行かせてもらう


「人狼側は園田さんが死んだ時点で次のゲームに行っても負けるだけだと、僕は思う」

「だから村田さんと佳賀里さんを殺せって言うんですか」

「そうだよ」


金井さんの目を見てきっぱりと言う


「死にたくないだけで、僕には目的がない。だからここで負けて死んでも問題はない。だけど、金井さんにはなにかあるんじゃない。だから多岐川さんを救った。違う?」

「話したんですか」

「はい、駄目でしたか?」

「いいえ…それは自由です。ただ驚いただけです」


佳賀里さんは首を傾げているが、話しの腰を折って質問しようとはしていない


「これは仮説だから村田さんと佳賀里さんが進んでも次も勝つかもしれない。だけど、畠中さんが妖狐だったことを考慮してほしい」


これで勝たないことが村田さんのためにならないと言えただろうか

元々どうすべきかは分かっているわけだし、ここで僕に投票することはないだろう

ただ、この迷いをなんとか断ち切らせてあげたい


「…分かりました。投票しましょう」


表情は相変わらず無だけど、僕には決心したような顔をしているようにも見えた


「せーの」


村田さんが3票

僕が2票


「おめでとうございます。村人側の勝利です」


どこから出て来たのか、男の声が広間の中で聞こえた

村田さんの背後に立つゲームマスターの恰好をした男は、ナイフを手に笑っている

その表情のまま村田さん、続けて佳賀里さんの首元をナイフで切る


2人とも一瞬苦しそうにして倒れるけど、すぐに動かなくなる

男は笑顔で血に汚れたナイフを持っている

当然服も顔も血塗れだ

でも、男は笑顔を崩さない


「…また、死にたくないという理由で生き残ってしまった」

「戸羽さんの言ったことが本当なら、戸羽さんが残っていることには必ず意味があるはずです」


本当にそうだろうか

この仮説を立証する術はない


「戸羽様は右の扉から、金井様と多岐川様は左の扉から、第4回戦へとお進み下さい」


別れるということは、やはりそういうことなのか?


「戸羽さんの主張が正しそうです」

「そうなのかもね」

「はい、きっとそうです」


これは自分に言い聞かせているのだろう


「…どうして別れてしまったんだと思いますか」

「金井さんの苦しむ姿が、金井さんのために足掻く2人が、見たかったからじゃないかな」

「馬鹿げています」

「このゲーム自体が馬鹿げているから今更」

「――確かに、そうですね」


…今、笑った?

瞬きをした間に表情は戻っている


「うん。それじゃあ、また」

「はい、また会えたら良いですね」


多岐川さんは一度僕を見て優しく微笑むと金井さんの手を引いて左の扉へと入って行った

…僕も行こう


どこまでも続く、長い長い廊下

もしかしてここから一生出られないじゃないかって思うくらい

10分くらい歩いてようやく扉が見え始めた


扉を開けた先にはひとりの男と沢山の画面

画面の中では無秩序にギャンブルをしている映像が流れている


『いやー、そういう仕掛けだったとはね』

『なんにしろ、村人側に賭けておいて正解でした。これからはボロ儲けですね』


…いや、ありがちな台詞だ

気にする必要はない


『それにしたってまさか「スフェーンは叶わない」が鍵を握るとは…』

『確かに、最初の方に人狼に襲われそうな特徴のないキャラでしたからね』


失礼だな

最初に思うべきはそこじゃないとは思うけど、失礼だな


あんなタイトルそうそうあるものじゃないだろう

僕の、僕らの話しをしている

誰かがどこかで見ているとは思った

まさか賭けの対象にされていたとはね

誰かの復讐に巻き込まれたとかの方がマシだった


「戸羽様が仰ったことは9割以上10割未満で正しいです」

「全員見たってことは、もう勝負にならない。だから」

「ですので「この会場にいる」ギャンブラーには次で大きく負けていただきます」


他にも賭場があるのか

一体何人が参加しているんだ


「戸羽様が参加された「リアル人狼ゲーム」のタイトルは「ソーダライトを忘れないで」です」

「…金井さんと多岐川さんはどんなタイトルなの」

「「バーベナなんていらない」です」


同じゲームなのにタイトルが違う

やはり村田さんと佳賀里さんが進んだら第4回戦で死んでいた…


「今から質問しますので、ご自由にお答え下さい。これが第4回戦です」

「えっ」

「この賭場に行くとしたら、戸羽様はいくら持っていかれますか」


…どういう意味だ

賭け事なんて金があればある程有利に決まっている

でも、そんなことを聞いているとは思えない

100億円と言ったらそれだけ用意されるのだろうか



―――――

出鱈目に適当な金額を言う

具体的な金額を言う

具体的な金額と賭場に行く意志がないことを言う←選択

―――――



僕は誰が勝つか知っているようなものだ

だからこの賭場の人は次で大きく負けされられると言って――そうか


「7,520万円。でも、行かない」

「何故ですか」

「金額は「ギャンブルの塔」の最終的な所持金だから。行かない理由は、必ず負けるから」

「少し簡単過ぎましたかね」


男が小さく笑う


「正解です。金井様と多岐川様の第4回戦を見届けたら、帰っていただけます」

「帰るって…家に…?」

「はい、ですがここでの出来事は秘密ですよ」

「言ったら殺されるだろうし、そもそも誰も信じない」

「よくお分かりで」


男がニヤリと笑う


「始まりますよ」

役職

村人:小野寺、片瀬、、金井、戸羽、峯

占い師:多岐川(占い先:峯、畠中、村田)

霊能者:岸

用心棒:喜多

人狼:園田、村田

狂人:佳賀里

妖狐:畠中

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ