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バーベナなんていらない  作者: ゆうま
12/15

第11話 知らなかったこと

生存者:佳賀里、金井、村田、多岐川、戸羽

死亡者:喜多、小野寺、片瀬、峯、畠中、園田、岸

朝の話し合いはあのまま解散になった

屋上へ行かず1時間ほど自室で待ち、ある人物の部屋のドアをノックした


「戸羽です。少し話しがしたい」

「来ると思っていたのだ」


中の造りはどの部屋も同じみたいだ

小さなテーブルをはさんで向かい合わせに座る


「戸羽さんの本題の前に我からよいか」

「もちろん」


来ると思っていて、待っていた

自分にも用があると言っているようなものだ


「昨日園田さんからなにかを聞いたのだな」



―――――

正直に答える←選択

嘘を吐く

―――――



「…聞いたよ。どうしてそう思うの」

「「ギャンブルの塔」で見た園田さんはあんなことを言うようには思えないのだ。だからなにか伝えたのではと思ったのだ」

「多分もうひとりの人狼の目的は勝利ではないから気を付けて。そう言われた」

「やはりそうなのだな」


やはり、ということは昨日の処刑の時点で佳賀里さん視点では園田さんの人狼は確定だったのだろうか

理由が分からない


「戸羽さんを呼んだ時点で気付いたのだ。やはり園田さんとは例え死ななくともゲームをしたくない」

「峯さんも園田さんを少し怖がっているように思った。園田さんが知らないフリをしたから自分もタイトルの意味を知らないと言ったって言っていたんだ。どうして」


優し気に微笑む

印象とは違って、少しドキッとした


「峯さんは戸羽さんのことを信頼していたのだな」

「どうかな。誰かに言いたかったところ偶然会ったのが無害そうな僕だからっていうだけの理由かもしれない」

「無害そうな者ほど厄介な者はいない、と言っていた。峯さんは間違いなく戸羽さんを信頼していた」

「特になにかした覚えはないけど、そうなんだね。佳賀里さんは僕を信頼して園田さんのことを教えてくれる?」

「うむ。言葉にすれば簡単なことなのだ。「ギャンブルの塔」での勝利条件については当然、理解しているのだな」

「ごめん、分からない」


そう、僕は本来あるはずの勝利条件を知らない

全員の共通認識であるはずのことを知らない

でも自分がなにを知らないのかが分からなくて、迂闊に質問出来ないでいた

今ならもう言っても大丈夫だろう


「ではどうやって生き残ったのだ」

「僕にギャンブルを仕掛けて来た4人全員に勝って、ギャンブルを仕掛ける相手がいなくなった。それだけ」

「特例というやつであるな。…よかろう。我が教えてやるのだ」


なにかのキャラのものであろう決めポーズをされた

残念ながらなんのキャラなのか僕には分からない

…それがかっこいいのかすら


「ギャンブルに一度でも勝利しており、所持金が最初よりも増えていること。これが参加者の勝利条件なのだ」


片瀬さんが喜多さんに言った「言ってたらアイツ死ななくても良かったんじゃん」ってこのことだったのか

道理で誰もなにも言わないわけだ

僕以外の全員はそれだけで片瀬さんがなにを言っているのか分かったから


そしてもうひとつ重要なこと

参加者の勝利条件、ということはゲームマスターにも勝利条件があったということになる

ゲームマスターの勝利条件は「名前当てゲーム」にはなかった


「「ギャンブルの塔」にはゲームマスターにも勝利条件があったってこと」

「次のゲームに進む参加者が決定したとき、3名であること。そう「声」は言っていたのだ」

「それなら生き残りが3人以外のところがあってもおかしくはないはず。なのにどうして村田さんは驚いたんだろう…」


村田さんが振り向くことを分かって顔を伏せていたのなら、金井さんもそれなりに驚いていたことになる

3人で生き残った「アケルナーの向こう側」がその説明を聞いているということは、「オダマキは救えない」も聞いているはず


「そんなことを我が知るはずもない」

「そうだね。教えてくれてありがとう。話しを戻そう。園田さんは勝利条件があると気付いたとき、勝利条件を満たしていなかったんだね」

「うむ。その理由は、所持金が少ない参加者に勝利を譲っていたからなのだ」

「優しいね…では終わらないんだよね、2人が怖がっているってことは」


大きく頷く

その顔は悔しそうで、悲しそうで、寂しそうだ


「一番所持金が多い参加者と勝負をした、そして、その参加者は園田さんに負け、所持金がマイナスになり死んだのだ」

「3人じゃないといけないのはゲームマスターだけなんだよね。どうして園田さんがわざわざ…」

「それは答え合わせとして「声」が言っただけなのだ。そのときはゲームマスターだけかどうか分からなかったから、と人数のことを伏せて話していたのだ」


それは「リアル人狼ゲーム」で見た園田さんとは印象が違う

勝利への道が厳しいとは言え、まだ可能性はあった

それなのに人のために命を投げた園田さんが…なにか他に理由があるんじゃないか


「峯さんと園田さんがタイトルの意味を分かっていたことはいつ誰が把握したの」

「「ギャンブルの塔」の最初に「名前当てゲーム」のタイトルと共に嫌味な紹介をされたのは同じであるな?あのあとすぐに5人全員が言ったのだ」


ハッとなにかに気付いた表情になる

やっぱりそういうことか…


「そのとき意味が分かるかだけで、星に詳しいかどうかは話さなかったのだ。我は獅子座なのだが、タイトルに含まれていたレグルスは獅子座の心臓部分に当たる一等星なのだ。それで偶然知っていただけで、他は全く知らないのだ」

「多分峯さんが「園田さんも少し知っている」って言ったのは、星の説明かなにかが少し違う、情報が古い、とかを指摘しなかったから。他の2人は知らなかった」

「なにかと理由をつけて仕掛ける相手を…」

「うん、その人にしたんだろうね」


タイトルの意味が分かっているか、分かっていないか

僕自身はそこまで重要だと考えていなかったけど、改める必要があるかもしれない


「だから3人で、他のゲームは人数が違った。それなら辻褄も合う。いや、それなら「オダマキは救えない」だけが驚いた理由にはならない」

「3人である理由はどこも同じはずなのだ」

「どういうこと」

「全く聞いていないのであるな」

「多分そうだね。ゲームの続行が不可能だが全てのギャンブルに勝利しているため第3回戦への参加を認める。としか言われていない」


多分「悔いないペテロ」が3人でクリアしていたら殺されていた


「「名前当てゲーム」の最後広間に行く前に小さな部屋に入ったのは同じであるな?」

「うん」

「我の場合そこに星の本が8冊あったのだ。その中には同じ星の本が3冊あったらしいのだ。だから3人なのだ、と」

「どうして他も同じだと?もしかしたら2冊の人も4冊の人もいるかもしれない」

「岸さん、片瀬さん、村田さん、我で食事の時間が被ったのだ。そのとき片瀬さんがインゲルについて聞いたのだ。結局なんなのか分からない、と」


それは誰もが思っただろうね

同じゲームの岸さんなら分かるかもしれないと思って聞いたんだろう

…多分、沈黙に耐えられず


「どこのかは分からないが、童話だと答えたのだ。その理由は「名前当てゲーム」の最後、童話っぽい絵本があったからだ、と」

「片瀬さんもキリスト関係の本か絵かなにかを見たと言ったんだね」

「うむ。最後の晩餐と十字架にかけられた絵があったから全てキリスト関係なのだろうと言っていたのだ」

「村田さんは?花だったよね」

「1つの花瓶に8輪の花が生けてあったと言ったのだ。そこで全員が自分も8つだった、と言い出す。そして同じものが3つあった、とな」

「確かにそれだと条件は変わらない」


タイトルの意味

それが分かる人、分からない人

3人と次のゲームに進む人数を半ば固定したにも関わらず、それとは関係ないグループ分け

8対3対1


1である畠中さんはタイトルの意味を正確に理解していた

峯さんが指摘しなかったということは、園田さんも大きく意味の外れる解釈をしていない

大方分かると考えて良いだろう

村人側には僕と金井さん、峯さん


自分のしなくちゃいけないことが分かった

でも、分からないことが増えた


「―――どうして、村田さんにあんなことを聞いたの」

生存者:佳賀里、金井、村田、多岐川、戸羽

死亡者:喜多、小野寺、片瀬、峯、畠中、園田、岸

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