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第2話

「ねぇ、熊ちゃん。東雲君の取り巻きなんてやめて、僕の取り巻きになってよ」


 頭が真っ白になっていた私を救ったのは、同じく東雲君の取り巻きの鹿野メグミだった。


「あ、ヒカリ!東雲君は?」

「・・・メグミ。先にミサトと歩いてるよ」

「じゃあ、早く行こ」

「そうだね。北条君、また明日」


 とりあえず、今は不機嫌な東雲君が優先だ。北条君の言葉を深く考えず、私はメグミと東雲君を追いかけた。

 その後ろ姿を北条君が見つめていたのなんて、まったく気が付かなかった。


 速足で歩いて、やっと東雲君とミサトに追いついた。


「二人とも足速い~」

「やっと追いついた」

「ゴメンゴメン。今、東雲君と転校生の話してたんだ」

「ああ、みんなのクラスに来た?」

「そう」

「私、まだ見てないんだよね。すごい噂だけど」


 どうやらメグミには北条君と話しているところを見られてなかったようだ。


「ちょっと、顔が整いすぎてて引いちゃうよね」

「そうそう。博物館に居そう」

「そうなんだ~」


 恰好悪いとは言えないから、遠回しに東雲君の方が良いと煽てる。私たちの会話を聞いて、東雲君の機嫌も何とか直ってきたようだった。駅で別れるころには「バイバイ」と手を振る私たちに手を振り返してくれた。


 普段ならそのまま女子三人も解散するのだが、先ほどの北条君の言葉を思い出した私は二人を引き留め、ファーストフード店に入った。そして、「取り巻き」発言も含めて二人に話した。


「うわぁ。すごい台詞を言われたね」

「うんうん。超美形なんでしょ?」

「ヤバいくらいカッコいいよ」

「で、本当に心当たりは無いの?」

「あんな美形、忘れるはず無いって」


 ポテトを摘まみながら話す。これも前世では出来なかった事。


「で、どうするの?」

「何が?」

「北条君の取り巻きになるの?」

「まっさか~。私は東雲君推しだから」

「おお、ブレないじゃん」

「二人は?」

「目の保養が増えただけ」

「目の保養にしたい」


 三人とも東雲君の取り巻きではあるが、恋愛感情が無いことをお互い知っている。だから、仲良くして居られるのかもしれない。


「すごーい昔に会ってるのかもよ?幼稚園前とか」

「そうかな?」


 前世の記憶が戻ってから、記憶力は良い方なのだが・・・。


「親に聞いてみたら?」

「そうする。ありがと」


 その日は解散となった。


 ちなみに、家に帰ってから母親に聞いてみたが「北条さんって知り合いは居なかった」と言われた。


「本当に会ったことあるのかな?北条レオン君・・・」


 私は明日からの学校生活が変わっていくなんて思いもせず眠ったのだった。


 翌日も、いつもの様に駅で東雲君を待って、学校へ向かった。登校中、周りの生徒たちがする噂話はやっぱり北条君の事だった。


「転校生って珍しいから噂になるよね」

「季節外れだしね」


 東雲君が不機嫌にならないように話を持っていく。学校に着くと、メグミは自分の教室に向かった。私たちも教室に入る。「おはよう」と声をかけられる。そこまでは昨日までと同じだった。


「あ、熊ちゃん!おはよう。ねぇ、思い出してくれた?」


 そう。北条君に声をかけられるまでは昨日までと同じだったのだ。


 北条君の言葉によって、クラス中の視線が自分に集まるのを感じる。そう、東雲君からの視線も・・・。


「北条君、昨日も言ったけど人違いじゃない?私、全然覚えが無いんだよね」

「人違いじゃない。僕が熊ちゃんを見間違えるはずが無いよ」

「でも、本当に覚えて無くて・・・」

「小さい頃だったしね・・・」


 その小さい頃はいつなんだ!?教えて欲しいくらいだ。


「まあ、覚えてなくても良いよ。熊ちゃんは熊ちゃんだし」

「ええと・・・」

「そうだ、考えてくれた?昨日の・・・」

「あーと、それなんだけど、私は今のままで居ようかなって・・・」

「ええ~。あ、もしかして東雲君に遠慮してる?」


 今度は東雲君にみんなの視線が注がれる。なんのことか分からない東雲君は、若干不機嫌になりかけている。


「遠慮とかじゃなくて・・・」

「大丈夫。僕から言うから」

「いや、そう言う事じゃなくて・・・」


 北条君は東雲君に近寄って行った。


「東雲君」

「・・・なんだよ」

「熊ちゃんのこと、僕に頂戴ね」

「は?」

「熊ちゃんて東雲君の取り巻きなんでしょ?僕の取り巻きに頂戴」


 クラス中が呆然としているのが分かった。一番虚を突かれているのは東雲君だが・・・。


「・・・勝手にしろ」

「ありがとう!熊ちゃん今日からお昼、一緒に食べようね」

「え?ちょっと・・・」


 こうして、私の意志に関係なく、私はクラス公認の北条君の取り巻きになったのだった。

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