一章 物語
基本は恋愛ですので、バトルはあまり無いと思います
恋愛といっても不適切な表現や描写は一切ありませんので御安心下さい。
「昔昔ある所にとても愛くるしいお姫様がおりました。お姫様は誰からも愛される存在で、気品と美貌の持ち主でしたが、人間嫌いという変わったお方でもありました。そんなある日お姫様は気分転換でもしようと幾人かの者を引き連れて、森へとやってきました。その森は古来より魔物などが住む土地とされ、人があまり立ち入らない場所です。人間嫌いのお姫様にはこれ以上居心地の良い場所はありませんでした。お姫様と一緒に森へやってきた者達は恐ろしくて堪りませんでしたが、お姫様の落ち着いた様子に心を癒されてもおりました」
数十人の子供達の前でしわくちゃの口を動かすのは一人の老人。名をナロクと言うその老人はまたゆっくりとしたペースで話を続ける
「気疲れしていたのでしょうか、お姫様と共に森へとやってきた者達は一人また一人と寝入ってしまいました。お姫様はそれを見てもう少し奥に行ってもばれないだろうと思いました。
森の奥は暗く、時たま何かが動くような音がしますが、お姫様は少しも怖くはなくどんどん奥深く入っていきます、ふと後ろを見ると自分がどうやって此処まで来たのか分からない程に来てしまっています。戻ろうにも方向が分からず、心細くなってしまったお姫様は声を上げて泣いてしまいました」
「お姫様可哀想」
子供達が自分のことのように声を上げる。それをナロクは優しげな瞳で見つめている
「どうしたのですか?若い男の声がお姫様の耳に届きました、心配して誰かが助けに来たのかと顔を上げると奇妙な仮面をつけた男が立って居ます。不思議と不気味ではなく、むしろ優しげな雰囲気を男が持っているからか、先ほどまでの心細さが嘘のように無くなっていました」
「お姫様良かったね」
「うん」
安心したようにはしゃぐ子供達にナロクは微笑む。
「実は迷子になってしまって・・。お姫様が此処までやってきた理由を話すと、男は安心させるように頭を撫で、付いておいでと声をかけました。お姫様が男に付いて行くと、しばらくしてだんだんと暖かな日差しが見えてきました。ようやく森から抜け出すとお姫様の住むお城が見えました。ありがとう助かりましたお名前を教えていただけませんか?すると男は困った様に微笑んで、魔物に名前はないのだと答えました」
「魔物ってなぁに?」
子供達の中には魔物を知らない子も居るようで、近くの子に聞いている。教えられると泣きそうな表情になるのは、この国では魔物が人を襲うだけの化け物という考えが定着しているからだろう
「お姫様は自分は人間が嫌いだが、魔物は嫌いでないと言うと。魔物の男は驚いているようだった。そうしてお姫様と魔物の奇妙な日々が始まったのだった。二人は時間の空く時は何時でも会い語らった、それは当然許されぬ事だったが二人にとって何よりも大切な事だったのだ」
「ある日二人が一緒にいるところを兵士が目にしてしまう、王は怒りその男を捕らえ二度と森から出ぬように、森の奥深くへと男を縄で縛り置き去りにした。男はお姫様が最後まで助けに来てくれると信じていたが、結局お姫様は来る事が無かった」
「どうしてお姫様来ないんだろう?」
魔物への同情の声がナロクへと降り注ぐが、それを流して老人は結末を語りだす
「数日後、魔物の男は苦労のすえ縄を解き、きっと一人では助けに来られなかっただけだろうと、お姫様の居る城へと向かった。王に見つからぬようにフードを被った男が城で目にしたのは、お姫様と遠くの国の王子の結婚式だった。あまりの怒りと喪失感に男は仮面を取り、その醜い顔を憤怒に染めて誓いの言葉をお姫様が言うとき言い放った。俺はこの国を王を人間を姫を恨み続けてやる!と・・・・。」
固唾を飲む子供達、異様に静まり返った中でナロクは悲しそうに話す
「その後お姫様は前以上に人間嫌いになり、ようやく王子との間に出来た子供も抱き上げる事すらしなかった。そう魔物はお姫様の心を完全に壊してしまったのだ、自分の心と同様に粉々になるまで・・・・・。」
「終わり?」
「ああそうだよ」
ナロクは子供達の続きを懇願する眼差しを見返し、一回手を叩くと物語の終わりを告げた、その様子を最後まで見ていた俺は声をかける
「ナロクじいさん、何でよりによってその話なんかしたんだよ?」
「おおレイグルか、何時からそこに居った?」
「あんたが辛気臭い話しを始めだした頃からだよ、たく子供の夢壊すようなことして楽しいのかよ?」
ナロクは俺を意味深な目で見ると、頭を掻いて遠くで子供達が深く考えている様子を見る
「この物語はな、人を考えさせられる本当に特別なお話しなのじゃよ。レイグルお主もこの話の後、頭を抱えて考えておったな。何故幸せな形で終わらないのかと、続きがあるのではないかと・・・。」
「まあな」
今となってはたかが物語に何でそこまで考えさせられたのか分からないが、子供の時一番深く考えたのがあの時だったのかもしれないと思う
「わしはな子供達にこの物語を幸せな形に直して欲しいのかもしれん、お主がこの物語の続きを書いてきたときのような形で」
「あれはただの出来心でやった事だろ、いちいち人の恥ずかしい過去を掘り返すなよ!」
恥ずかしい過去を思い出し、自分でも羞恥から顔が赤くなっていることが分かる
「そうじゃな、ところで急がんでいいのか?またアリーナ様に怒られるぞ?」
「あっやべ!!じゃあなナロクじいさん」
「うむ、またな」
ナロクを残し俺は城へと急ぐ、魔物のように恨みの言葉を言いに行くのではなく、我らが姫様のご機嫌取りの為にだ
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拙い文章だったと思いますが、読んでいただいて感謝の気持ちでいっぱいです。機会がありましたらぜひ続きも読んでくださると嬉しいです。




