chapter3_2 彼との日常
もっと聞きたいことはあったが、夜も遅いということで明日以降にすることになった。
「おやすみ、ライラ」
「おやすみ、シグレ」
.......ナギ、明日もう一回ちゃんと話をしよう。
それで解決できるかどうかは分からないけど、納得いくまでお互いの気持ちを伝え合いたい。
それは突然夜の静寂を破った。
「――――――――――――――――――――!!!!!!」
「!?」
形容しがたい音、奇声? 咆吼?のようなものが耳に刺さる。
「何!?」
外からだ。
「ライラ!ナギ!」
ライラも起きたはず、ナギは帰ってきただろうか。
隣の部屋、ライラが寝ているはずだ、の扉が開いていた。
中をのぞくと、そこはもぬけの殻だった。
「ライラ!?」
窓が開いている。
窓?
窓から出て行ったのか?
「ナギも戻ってきてないし、なんなの?」
叫び声のようなものはずっと続いてる。
しかも、はじめて聞いたはずなのに聞き覚えがある.......?
「二人を探しにいく.......?」
でも夜出かけるのはルール違反だ。
破れば島を出なければならない。
「おとなしく待つことしかできないの?」
嫌だ。
「せめて手がかりがないかだけでも探そう.......」
ベッド周りを確認する。
寝ていた形跡はあるから、少なくとも部屋を分かれた時にはライラはいたのだろう。
窓に背を向けて他に何か痕跡はないか探そうとしたとき、窓から入る月明かりに影が差した。
「え?」
後ろに誰かいる?
振り向こうとしたとき、急に目の前が真っ暗になった。
「.......?」
なんで、突然。
からだから力が抜け、意識が遠のく。
そこに、いるのは.......?
「.......!」
次に意識を取り戻したとき、外にはもう太陽が昇っていた。
最後にいたのはライラたちの部屋だったはずなのに、今いるのは自室のベッドの上だった。
「え!?どうなってるの? 音は?二人は?」
「おや、声をかける前に起きてるなんて珍しいですね」
「ナギ!?どこにいたの!?」
いつも通りにナギが起こしに来た。
「どこって、夜には戻ってきましたよ?シグレはぐっすり寝てましたが」
「嘘! 夜起きたときはいなかったじゃない」
「?」
何を言ってるのか分からないという顔をされた。
「ライラもいないし、ナギも帰ってこないしで大変だったんだよ!」
「俺がどうかしたか?」
見覚えのある赤髪の青年がナギの後ろから顔をのぞかせる。
「ライラ!どこに行ってたの!」
「どこって昨日はずっと家にいただろう?」
.......どういうこと?
「夢でも見てたんじゃないか?」
「そんなあ.......」
夢なはずがない。でも、証拠はない。
「ううう、確かに見たんだけどなあ」
「まあまあ、現実っぽい夢をみることはたまにありますからね」
しれっとナギに流されてしまった。
「そういえばシグレ、クズハさんのところにいったときカヤに伝言を預かりましたよ」
「カヤが?なんだろう?」
「『明日収穫したいので手伝ってほしい。迎えに行く』らしいです」
「わー!カヤの家庭菜園、もうそんな時期かあ!行く行く!伝言ありがとう!」
最近個人的に暗い話しかなかったので、のどかなニュースがとにかく嬉しい。
ドンドン
「あ、噂をすれば.......」
『むかえにきた』
「カヤ~!わざわざ来てくれてありがとう~!」
『やぼようがあったからだいじょうぶ』
「?」
『きにしないで』
カヤがそう言い(見せ)ながら周りを見て、ライラと目が合って固まる。
「.......」
「.......」
「二人とも.......?」
「.......」
「コイツが俺にも来いって言ってるんだが」
「え?!喋ってた今?!」
「なんとなく分かる」
「すご!」
「日中に終わるならいいですよ」
「ほんと!」
ということで今回は便利屋特別バージョンで仕事を請け負うことになった。