chapter2_9日が昇る砂浜にて
海岸。
.......勢いで出てきてしまった。
.......どうすればいいのかな。
色んなことが一度に起きすぎて、頭が全然追いつかない。
大事なことは、全然教えてもらえない。
なのに状況はどんどん変化して、私はずっと置いてけぼりだ。
寂しい、怖い、悲しい。
ヨゾラとナギ。
2人は本当に信用できるのか。
そもそも私は、記憶を取り戻しても大丈夫な人間なのだろうか。
.......今まではのどかな暮らしがずっと続けばいいやって思っていたけど。
『確かに俺は俺のためにアイツには全部思い出してほしい。でもそれだけじゃない。俺以外にも本当は思い出してほしいやつがいるだろうよ』
記憶を取り戻さないことで、誰かに迷惑をかけてるなら、取り戻さないといけない。
でも。
『私の考えを述べると、『思い出さない方があなたのため』という感じですかね』
本当に記憶を取り戻して大丈夫なのかな。
記憶を取り戻すか、諦めるか。
私に課せられた二者択一。
どちらかを選んだら、どちらかを見捨てることになる。
.......本当に?
本当に、どちらかしか選べないの?
ふと浮かんだが疑問が、解決の糸口があるような気がした。
これを逃してはいけない。
考えるんだ。
もっとシンプルに。
問いは1つ。
私は、どうしたい。
.......私は、みんなと笑顔で、幸せに暮らしたい。
そのためには、どうすればいい?
過去を思い出すことは、私がやりたいことに本当に必要?
今までの自分を知らずに、私の願いは叶えることはできる?
ここ数日で見た、聞いた出来事が脳裏に浮かぶ。
砂浜に仰向けに寝転んで、目を閉じる。
深呼吸、気持ちを整える。
いつまでそうしていただろうか。
ゆっくりと瞼を開ける。
目の前の霧が晴れたような気がする。
これがあっているのかはわからない。
でも、私が悩んで、苦しんで導いた結論だ。
「帰ろう」
みんなが待っている家に。