chapter2_7夢の中
.......ん。
一面の黒。
またここか。
クズハの元から帰ってきた後、睡魔に襲われてそのまま2人の帰りを待たずに就寝した。
そこまでは覚えている。
つまりここは。
解決していない謎の1つ。
私に問いかける謎の人物がいる夢である。
ここにいるということは―。
「やあ、こんにちは」
やっぱり。
「あなたは、誰?」
この前と同じ声が聞こえる。
姿は今回も見えない。
「私は誰か。
ふむ、それは些細なことだし、今それほど大事ではないよ。
いずれわかる事さ、気にしないでくれ」
はあ、私の周りにはどうしてはぐらかして教えてくれない人ばかりいるのだろうか。
「せめて顔を姿を現してくれないかな。
みえない相手と真剣な話をしたくないのだけど」
「そんなものなのかい?」
「そういうものなの」
「そうだね。君が困るというなら用意しようじゃないか」
声はそう言って何もない空間から黒ずくめのフードを被った人物が現れた。
「いや、顔見えないじゃん!」
「申し訳ない。まだ正体を明かすときではないんだ」
えええ。人の夢に勝手に出ておきながら正体を明かせないって.......。
「タイミングが大事なのさ、こういったものは」
「さて、君は迷っているみたいだね」
「君が迷っているのは過去の自分を思い出すのが恐ろしいからかい?
それとも、思い出すことで誰かに影響を与えることが不安だからかい?」
黒フードは私に問いかける。
記憶が戻るなら思い出したい。
でも、どうしてもナギの顔がよぎってしまう。
私をこの島に連れてきて、ずっとそばにいてくれた人。
そんな彼が私のためにならないという、私の過去。
怖くないと言ったら嘘になる。
でも。
それならどうしてナギは、私を助けてくれたんだろうか。
それと。
黒フードが前に言ってた言葉を思い出す。
誰かを不幸にしてでも、手に入れる覚悟があるのか。
私は誰かの悲しみと引き替えてまで手に入れたいものなんてない。
たとえそれが自分の過去だったとしても。
だけど。
ヨゾラが言っていた、彼以外に私の記憶を呼び起こしたい人って誰なんだろう。
「そうか、それが君の考えなんだね。シグレ」
「あなたはどこまで知っているの?
あなたなら、私に何が起きているのか、それと記憶の取り戻し方について、知ってるんじゃないの?」
「その問いに答えるのは簡単だが、君はまだ知らなければならないことがあるようだ」
「話をそらさないで!」
「そらしてはいないさ。
物事には順序というものがある、間違えると解釈が変わる。
解釈が変われば出力される結末が変わる。
それは私にとって都合が悪いんでね」
「何を言っているのか分からない!これ以上私に何をしてほしいの!?」
「うん、君には真実を見つけてほしい。そして私たちを導いてほしい」
「真実?導く?そんなこと、過去も自分もない私にできるわけない!」
「できるさ、さて、そろそろ目を覚まして貰おう。
君に見てほしいことが起きるよ 」
そう言って黒フードはいなくなった。
声も聞こえない。
意識が遠のく。
現実に引き戻される。
全てから自由になれる日はくるのだろうか。