chapter2_6TB 予測と脅威 side K
先ほど懸念していた「何か」に思いをはせる。
相手に対する予想がもし当たっているのなら、ただの雑魚を払う戦いにはならないかもしれない。
狩人単体でも未知数な部分が多く、結末はあやふやなものが多かった。
だが。
私はそれ以外もあり得ると考える。
狩人には協力者がいる。
アド・メルム
災いの方へ。
自らを浄化装置と謳い、主の名の下に、ドメインノヴァに対して、殲滅・駆逐・撲滅を掲げる組織。
私たちを災厄と憎悪し、根絶を理想とする野蛮な集団だ。
シグレを襲った時は姿が見えなかったようだが.......。
なぜ彼らが、討伐対象であるはずの狩人と手を組んでいるのかは分からない。
いや、あの頭のいかれた集団のことだ。
使えるものなら憎むべき敵さえ利用するのだろう。
矛盾の極みのような組織だ。
私は相対したことはないが、ここ100年くらいで動きが派手になった印象がある。
ナギとシグレから、研究所の顛末を聞いたとき、彼らの仕業だと思った。
彼らにとってシグレたちがいた施設はまさに「異端」だったに違いない。
拡張ドメインの存在を認めず、自分の目に映る世界が全てだと疑わない。
現代の魔女狩りの様を呈しているが、その実魔女狩りと同等か、それ以上に悪質といえる。
自分たちと異なる姿の存在を滅ぼし、自分たちと考えを分かつ存在を弾圧する。
奴らもそうだが、なぜ人間は自分の思考体系が正しいと確信することができるのだろうか。
所詮数十年の知識と経験しか反映していない価値観に意義を見いだせる図太さはむしろ尊敬の念すら抱かせる。
アド・メルムはそれを肥大化した集団に過ぎない。
理解し得ないから脅威であり、脅威であるから排除しなければ気が済まないという考えが最早偏執病の類いにしか思えない。
そんな奴らにこの島を荒らさせる訳にはいかない。
これ以上私に、可能性を潰える様を見させるつもりはない。
私の庭を標的にしたことを、死の瞬間まで後悔させてやろう。