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domain Nova ーcrank in/crank upー  作者: つぐみ
domainNova routeA 僕は君を知った
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chapter2_5葛藤と恐怖


-状況を整理しよう。




私。


私の名前はシグレ。


ナギが付けてくれた名前。


本名は不明。




1年前、通り雨の降る中浜辺に打ち上げられていたのを島の住人に発見された。


自分が誰で、どこで生まれ、どうやって育ち、そしてなぜ記憶を失ったのか。




何一つとして覚えていない。




この1年はナギという人物と同居し、世話をして貰っていた。




健康状態は良好。


ただ、1年前発見されたときは大怪我を負っていたらしい。


大怪我?




「いまはお昼前、ナギもヨゾラも用事でいない」




一方私は今日はなんとお仕事0、依頼は何も無かった。




いつもなら散歩やらカヤとおしゃべりなどしたりしているが、さすがにそんな気分にはなれなかった。




つまり今は家に一人。




一応確認をとったので、服を脱いで体を確かめる。




鏡とかないからいまいち分からないが.......。




みえる範囲に傷跡らしきものはない。




そう、傷一つ無いのだ。




「謎が一つ増えてしまった.......」




ため息しかでないが、状況整理の続きをしないと。




私は今二つの選択を迫られている。




記憶を取り戻したいか、記憶を取り戻したくないのか。




前者を選べば、ナギの願いを踏みにじることになる。


後者を選べば、ヨゾラはこの島を出て行く。


期限は1週間。


うーん、どちらもしんどい。そして時間が無い。




判断材料が少なすぎるので、決断は一旦保留することにした。


次に謎の整理。


量が多いから一個ずつ整理しよう。




まずは、記憶を失ったのはなぜなのか?


最大の謎なのだが、手がかりはほぼ無い。




島に流れついていた、そして大怪我を負っていたという情報から、外傷による記憶喪失の可能性が一番高いような気もする。




これに関連する問いは、「私は記憶を思い出せるのか?または思い出せないままでいられるのか?」である。




1年間島で暮らしていた中で、自分に関することを何一つ思い出すことはなかった。


正直このまま死ぬまで記憶は戻らないんじゃないかとさえ思っていた。




だが昨日のナギとヨゾラが話していたことを加味すると、記憶を取り戻すあるいは取り戻さない方法がある可能性が浮上した。




とすると私の記憶が無いのは不慮の事故以外の原因もあるのか?




.......。





「だめだ、これ以上は私が考えても何も浮かばない。次に行こう」




次は私、シグレ(仮)についてだ。


私は記憶を失う前はどんな人物だったのだろうか?何を思い何をして生きていたのだろうか?




-私の考えを述べると、『思い出そうとしない方があなたのため』という感じですかね。




「思い出そうとしない方が私のため.......」




思い出さない方がいい記憶というのはどういったものなのだろうか。





「壮絶な過去がある、とか?後は、ものすごい悪人だった、とか.......」




.......考えれば考えるほど暗くなってきた。




確かに過去に罪を犯していたり、トラウマになり得る出来事があったりしたら、思い出さない方がいいと言われるのも理解できる。できるが.......。





「そうなるとヨゾラの言動と矛盾するんだよなあ」




-確かに俺は俺のためにアイツには全部思い出してほしい。でもそれだけじゃない。俺以外にも本当は思い出してほしいやつがいるだろうよ。




ヨゾラと誰か分からないけど思い出してほしい人がいる。




それは誰?




「誰か分からないといえば、あの変な夢何だったんだろう」




-誰かを不幸せにしてでも、手に入れる覚悟はある?





「なんで私が思い出したら不幸になるひとがいるんだよ.......」




自分のことが何も分からないのは正直かなり不安だ。


取り戻せるものなら取り戻したい。




でも。




それで誰かを不幸にすると言われるとためらってしまう。




この島での平和な日常を失いたくないという気持ちもある。





「自分に関することはここまでかな。というか本当に手がかりがなさ過ぎるんだけど.......」




もうちょっとヒントがほしい。





「最後はナギとヨゾラか」




正直この二人に関する謎が多すぎて現時点では何も考察できないのだが、疑問点はまとめておくか。




まずはナギ。


完全無欠のすてきなおにーさんだと思っていたのだが、ここ数日で一気に謎の人物になってしまった。




そもそもナギはいつからこの島にいるのだろうか。


私はてっきりこの島に昔からいる住人だと思っていた。




しかし地下室で出会った男、便宜上ヨゾラと私が呼んでいる、とのやりとりを見ているとよく分からなくなってくる。




あの二人の関係性は、島の住人同士とはどうしても思えない。




それに、多分あの二人は記憶がなくなる前の私を知っている。




知っているのに、ナギはそのことを私に隠し、何も伝えないまま1年間そばにいた。




加えていつ頃からかは不明だが、ヨゾラを診療所の地下に幽閉していた。理由はまだ不明。




そしてヨゾラ曰くナギは私に過去のことを思い出してほしくないらしい。





「状況証拠から言うと真っ黒ですよ、ナギさん.......」




もちろん、ヨゾラの発言を全て信じれば、の話だが。




ヨゾラ。




この男も正直ナギとどっこいどっこいで怪しい。


なぜ彼は地下に閉じ込められていたのか。


どうして記憶を取り戻してほしいのか。




あとは。





「そういえば、ヨゾラって呼んだとき、どうしてあんなに驚いていたのかな」




彼と私に何か関係あるのだろうか。





「あ、すっかり忘れてたけど」




記憶喪失に関係があるかは分からない謎が残っていた。


体に、少なくとも目にみえる範囲に傷一つ見当たらなかった。




可能性としては2つ、誰かが嘘をついているか、私の体で何かが起こっているか。


嘘をつく必要性を感じないとすると、後者なのだろうか?




.......。




「私って、何にも知らないんだな」




今まで脳天気に暮らしていた自分に嫌気がさす。


そのツケが一気に回ってきたみたいだ。





「あらかた頭の整理はできたけど、これからどうすればいいんだろう」




ナギは記憶に関することは教えようとしないだろうし、ヨゾラも記憶を取り戻す意思を見せなければ情報提供は期待できない。




とすると。




発見された当時のことを知っていて、ナギとヨゾラとの関係や、記憶喪失についてもなにか助言をしてくれそうな人物。




「.......クズハに会いに行くか」




太陽が高い。日が暮れる前に行動しなければ。

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