Prologue1 届くことはないけれど Soliloquy of bystander
これは独り言だ。誰にも届かず、届ける必要はない。
君にとって世界は、理不尽で、苦痛を伴い、歩き続けることが難しい場所かもしれない。
だけどこれだけは断言できる。
いつか残酷な世界に立ち向かう力を手にしたとき、私の声はきっと君に届くはずだ。
どうか、君の未来が、君にとって意味のあるものでありますように。
なに、私は待つのは得意なんだ。
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シグレは1年前とある小さな島の砂浜に打ち上げられていた。
着の身着のまま、そして自分に関する全ての記憶を失っていた。
いつか記憶が戻ると信じて、彼女は島の何でも屋をしながら、同居人であるナギに衣食住をお世話されつつのんびり離島ライフを楽しんでいた。
若者しかいなかったり、学校がなかったり、不思議なところはたくさんあるけど、まるで楽園のような島での平穏な日々がいつまでも続きますようにと願いながら。
いつものように仕事を終え、ナギの働き先に迎えに行くと誰もいない。
帰ろうとしたところどこからか物音が聞こえる。
物音を頼りに隠し部屋を見つけると、そこには謎の男が幽閉されていた・・・。
この島にはいくつかのルールがある。
夜は外に出てはいけない。
他者に過度に干渉してはいけない。
島の裏側には立ち入ってはいけない。
この島は、ただの楽園ではないのかもしれない。