第44話~ランデスの最期~
“ギィン!”
セレスタ王に向けられたランデスの触手を、俺とサリットがそれぞれの武器でどうにか受け止める。
「陛下…大丈夫ですか?」
「シュー…手が震えているわよ!」
「サリット…お前もな…」
「私は女の子だもん…仕方ないじゃない!」
“スタタタタタ…”
ここで出来た隙を、息を整え終わったレイスとリーサが見逃すはずもなく、二人は真逆の弧を描きながら、ランデスにあっという間に接近し、攻撃を仕掛けた。
“シュシュシュ…”
“フゥン…フゥン…”
レイスは懐から短刀を、リーサは忍者の武器である手裏剣を取り出し、それぞれ至近距離からランデスに向かって得物を放つ。
“キン…グサッ……キン……キン…グサッ…”
「ギィイャーーーーーー」
ランデスの体にほぼ同時に接触した二人の武器は、到達した5発の内の2発がランデスの体に食い込み、その痛みにランデスが断末魔を挙げる。
と同時に、俺とサリットに課せられていた触手の負荷が弱まった。
「シュー!!」
「ああ!!」
俺とサリットは同時に触手を難なく跳ね除けると、俺はセレスタ軍から支給を受けたロングソードで、サリットは短曲剣で、目の前の触手に攻撃を仕掛けた。
“ザシュ…ザシュ…ザシュ…”
「ギィエェェェェ…」
セレスタ王に向けられた触手を、俺とサリットは容赦なく切り刻んでいき、再びランデスが大きな断末魔を上げる。
“シュシュシュ…”
“ザシュ…ザシュ…”
“ピシャーーーーー”
さらに、最初の攻撃を成功させたレイスとリーサが、ランデスの本体に追い打ちをかけ、肥大したランデスの体のあちこちから、鮮血がほとばしる。
「グヌゥゥゥゥゥ…よくも…よくも我が体を……許さん……許さんぞ……おっ?」
“プシューーーーーーー”
ランデスが俺たち4人の攻撃に怒りを示した次の瞬間、ランデスの体全体から、まるで煮えたぎる湯の入った巨釜から発せられていると言っても過言でない程の湯気が立ち上り、数秒後にはその体は変身前のランデスのそれへと変わっていた。
「そ…そんな………血を……血を出しすぎたせいで………」
“パカラッパカラッパカラッ…”
取り乱すランデスの元へ、人を乗せた一頭の馬が近づく。
“タッタッタッタッ………スタッ”
“フゥン………ガシャ…”
その人物は、人へと戻ったランデスに近づくと降馬し、ランデスに向かって一振りの剣を投げてよこした。
「陛下!!」
「危険です!!離れてください!!!」
「クレスの子孫の、仲間の皆よ……余は大丈夫だ。悪魔に魂を売り渡した者に、遅れは取らぬ!!……ランデスよ!!騎士の情けだ。その剣を取れ。最期の勝負と行こうぞ!!」
“カチャリ……シャーーー…”
ようやく平静を取り戻したランデスが、セレスタ王が投げた剣を手に取ると、鞘から刀身を抜き出し、セレスタ王に向けて構える。
「セレスタ…よくも我をコケにしてくれたな!!その罪、その命をもって償え」
「その言葉、そっくりそのままお主に返してくれよう!」
「ほざけ!!!!」
“スタッ”“ザザッ”
二人は同時に地面を蹴ると、その間合いを一気に縮める。
“ギィン…”
剣と剣がぶつかり合い、火花が飛び散る。
「ランデス………なぜ道を踏み外したのだ…そなたのことを、アンティムは高くかっておった。バルデワの領事は、才覚あふれる人物であると………私は、新生セレスタ王国が誕生した暁には、そなたを高官へと取り立てるつもりであったのに…」
“ブゥン…”
ランデスが、セレスタ王の剣を跳ね除け、二人の間合いが遠ざかる。
「セレスタ王よ…お前にはわかるまい。どんなに知力に優れ、街の統治をうまくやっていようとも、武力に優れ、数万の兵を意のままに操ることができようとも、変えようもない卑しい生まれ、そして愛する者の心が王にしか向いておらず、自らの手にすることができない者の気持ちなど…」
「ランデスよ…お主は……」
「戯言はここまでだ。セレスタ王!!!」
「ランデス!!!」
“スタッ”“ザザッ”
二人の騎士が、再び地面を蹴り、間合いを詰める。
そして…
“ギィン”“ブゥン”
二人は擦れ違いざまにそれぞれの剣を振るい、2歩ほど進んだところでその体を停止させた。
“ピシャー…”
「……アンティムを……どうか幸せに………」
“バタン…”
「…そなたの想い、しかと受け止めた。安らかに眠るがよい」
“ブゥン…カチャリ…”
刀身についた血糊を地面に叩き付け、セレスタ王はそれを鞘へと収めた。
「こやつは余に敵対した者だが、最期は騎士として余と闘い、そして散った。反逆者としてでなく、他の兵と同様、この戦場で散った一人の騎士として、弔ってやってくれ」
「陛下………御意にございます」
こうして、ランデスはセレスタ王により討ち取られ、公国軍とセレスタ軍との闘いに終止符が打たれたのだった。




