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Valkyrie of Moonlight~月明りの剣と魔法の杖~   作者: 剣世炸
Episode8「聖遺物を求めて」
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第29話~セレスタ5世~

 俺たちがそれぞれの得物に手をかけようとするのを、セレスタ兵は見逃さなかった。

“カチャリ…”

「さぁ、余の問いかけに答えるのだ。お前たちは一体何者なのだ………ん!?そこの黄色い髪の娘。そなたが身に着けている冠は………まさか!!!」

“スタッ………コツコツコツコツ……”

 国王と思しき人物は白馬から降りると、アルモの元へと向かい、両手で月明りの冠をアルモから外そうとする。

“!!!ヌヌヌヌヌヌヌヌ…”

 だが、いくらその人物が力を入れても、アルモの頭から冠が外れることはなかった。

「ハァハァハァ………」

「陛下!!大丈夫でございますか!?」

「ああ、大丈夫だ。心配ない。この冠の姿形に、この重さ………間違いない!!全員、剣を納めよ。この者どもは、我が敵ではない!!」

 陛下と呼ばれた人物の鶴の一声で、兵士たちは全員俺たちに向けていた切っ先を鞘へと納めた。

「英雄クレスの末裔であるとお見受けする。余はセレスタ国王セレスタ5世である」

「国王陛下!」

“スタッ”

 俺たち3人はアルモの言葉に、同時に片膝をついた。

「お初にお目にかかります。私はクレスの子孫でアルモと申す者」

「俺は、フォーレスタ村の村長の息子で、アコードと申します」

「私の名はレイスと申します」

「クレスだけでなく、教団の祖の子孫までいるとは…そなたらは一体…」

「国王陛下。失礼なことを承知でお尋ねいたします。セレスタ王国は、三日月同盟(Crescent Alliance)と対峙しているはず。そして、私たちはその同盟員です。それでも、陛下は私たちを敵ではないとおっしゃるのですか?」

 アルモの問に、間髪入れずにセレスタ王が答える。

「確かに、先王の時代にはさまざまな出来事があり、我が王国は教団と手を組んだ。だが、時代は変わった。余は、この呪われたセレスタ全土に、再び平穏を取り戻したいのだ」

 これから対峙しようとしていた人物の思いがけない言葉に、俺たちは自分の耳を疑った。

「そう困った顔をするでない。ここでは、そなたらとゆっくり話はできそうもないな。近くに我々の幕舎がある。そこで話をするとしよう。そなたたちの、その乗り物も今は使えないと見えるしな」

「…どうする?アコード」

「もし俺たちを敵とするなら、この場で打ち首にしても問題ないはず。それを、俺たちが三日月同盟のメンバーだと明かしても、はっきり敵ではないと宣言した。これは、国王の話を聞く方が良いのではないだろうか?」

「私もそう思うわ。どうせ車は燃料の補給に時間がかかるだろうし、その間にセレスタの幕舎で王様と話をして、状況を一度整理しましょう」

「…話はまとまったようだな」

「はい、国王陛下。お願いいたします」

「あい分かった!……この者たちに馬を用意せい!」

「御意」

 こうして俺たちは、湿地帯の一角に設けられた、セレスタ軍の幕舎へと案内された。




 幕舎についた俺たちは、これまでの旅の経緯についてセレスタ王に話した。

「…つまり、そなたらは教団が支配するこの世界を解放するために旅をしているというのだな」

「はい。その通りでございます。しかしながら………」

「………アルモ殿の言いたいことは察しがついておる」

「教団に、月明りの鎧を差し出してしまわれたのですよね………」

「……表向きは、な!」

「表向きは!?」

 セレスタ王の言葉に、俺たち3人の表情が一気に明るくなる。

「逆に問おう。君たちは、余がなぜザパート連合公国に戦争を仕掛けるようなことをしたと思う?」

「それは………最初は月明りの鎧の管理を独占するため、と思っておりました………」

「だが、協力を申し出た教団を欺き、教団には月明りの鎧のレプリカを差し出した…」

「国王陛下のご意思は、私たちには理解しかねます」

「…君たちは、バルデワの領事、ランデスから狙われたのだったな…」

「ええ、確かにそうですが…」

「元来、バルデワはザパート連合公国の玄関口で商業都市だ。そして、公国は三日月同盟の援助を受けているはず。つまり、君たちの味方なはずだ」

「なのに、俺たちは狙われた…」

「あまり深くは考えていなかったけれども、確かに辻褄つじつまの合わない話だわね」

「もう1つ。ザパートの北部にあるエプールマウンテンの近くに、ターパという都市がある。そこの領事が、ザパート連合公国の盟主であることを知っておるか?」

「いえ、その話は初耳です」

「そこの領事は、アンティムという女性なのだが、アンティムがランデスにより幽閉されておるのだ!」

「盟主を幽閉………つまり、ランデスはクーデターを起こそうとしていたということなのですね」

「そういうことだ」

「お言葉ですが………それは公国内での話であって、本来国王陛下の御身には何の関係もないはず」

「ああ、普通に考えれば、そういうことになろう。だが、ターパの領事アンティムの幽閉を、余は見過ごす訳にはいかないのだ!!」

「…それは、なぜですか?」

「ターパの領事は………アンティムは………将来、我が妃となるものだからだ!」

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