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Valkyrie of Moonlight~月明りの剣と魔法の杖~   作者: 剣世炸
Episode8「聖遺物を求めて」
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第24話~幽閉~

“ギギギギギ………”

「さぁ、大人しく入るんだ!!」

 重い鉄格子の扉が、鈍い音を響かせながら開き、俺たち5人はそこに入るよう促された。

「…」

 この場では言われた通り大人しくした方がよいと判断した俺は、全員にアイコンタクトを送り、抵抗せず中に入るよう促す。

“ギギギギギ………ガチャン!”

 全員中に入ると、鉄格子の扉が閉まり、鍵がかかる。

「お前たちの審議は、領事様が直々に行うそうだ。それまで、その中で大人しくしていることだ」

“コツコツコツコツ………”

 俺たちを連行してきた連中の足音が少し、また少しと小さくなっていく。

「………まったく、なんであの時、口に出しちゃったかなぁ…まぁ、気持ちは分からなくもないけど…」

「サリット…それにみんな、本当に面目ない…」

「私も軽率だったわ…みんな、ごめんなさい…」

 平謝りをする俺とアルモ。

「まぁ、起こってしまったものは仕方ない。領事の審議が始まる前に、ここから脱出することを考えないと…」

「…」

“ガチャガチャガチャ…”

“コンコンコン…”

“ドスドス…”

“キョロキョロキョロ…”

 それぞれが、思い思いの方法で周囲を確認する。

「この鉄格子は、武器を取り上げられた私たちに破ることは難しそうだな…」

「アコード、アルモ、レイスの魔法で破るとかは?」

「この鉄格子は、魔法を跳ね返す金属でできているわ。牢の内側から魔法なんか放ったら…」

「中にいる人間は、もれなくその魔法の恩恵を受ける、という訳だな」

「壁や地面は、硬いレンガでできているようだから、それを壊しての脱出は、一朝一夕でどうにかなるものじゃないだろう…」

「天井に空気穴やボロくなっている場所もないし………」

「………」

 周囲に重い空気が流れる。

「とにかく、くまなくこの中を調べてみよう。何か、脱出のヒント位はつかめるかも知れないし…」

 それから十数分後…

「…ダメだな………」

「……ダメね……」

 俺とアルモはそう言い合うと、その場にへたり込んでしまう。

 それに倣うように、他の3人もその場に腰を落とした。

「シティシーフを擁する都市だけあって、裏切り者が出た場合の対処も抜かりがない、ということなんだろうな」

「………ねぇ、ここに来てから、ここを脱出することしか考えていなかったけど……」

「…けど?」

「確か、バルデワは三日月同盟に所属するザパート連合公国の一員のはず。ということは、本来は私たちの味方、ということよね…」

「…確かに、その通りだが………なるほど!!」

「アコード、何がなるほどなんだ!?」

「三日月同盟の正史には、英雄クレスの容姿についても詳細が残されてる。しかも、図解付きでだ。ということは、没収されたクレスの剣や、アルモが装備している兜を見て…」

「私たちが三日月同盟の人間だと分かってもらえれば、協力してもらえるかも知れない、ということね」

「………これは、元盗賊の勘だが、ことはそううまくいくとは思えないんだ…」

「レイスの勘は、嫌という程当たるからなぁ…」

「どのみち、この牢獄を自力で突破するのは難しそうな訳だから、領事が審議を行う時にすべてを賭けるしかない、ということだな」

「そういうことになるわね」

「じたばたしても仕方ない。ここは体力を温存させておくとしよう」


***


”トントントン…”

 重厚感のある木製の扉の向こう側から、入室の許可を求める音が木霊する。

”カチャ”

 口にしていた陶磁器製のティーカップをソーサーに戻したその人物は、すかさず入室を許可する。

「鍵は開いている。入るがよい」

「失礼いたします」

「…連中はどうした?」

「地下の牢獄に幽閉しております」

「分かった。それでよいだろう」

「ところで、連中の一人が、このようなものを持っておりまして…」

「!!!こっ………これは…」

 刀身から、月明りのような温かい光を放つ剣を見たバルデワの領事が感嘆する。

「ここの紋章が、わがザパート公国の紋章に少し似ていたもので気になりまして…」

「そりゃ、似ているはずさ……ああ!!似ているはずだとも!!!」

「領事……様!?」

「連中は、クレスの鎧が奪われたことを城門前でたまたま知り、それに対して驚いていたところを、衛兵が捕らえたのだったな!?」

「はい、その通りですが……それがどうかなさいましたか?」

「その連中の一人がこの剣の持ち主だとすれば、クレスの鎧が王国によって奪われたことに驚いたことが説明できるのだよ!」

「はぁ………そうなのですか」

「その連中の処遇は…」

「領事様がお決めになるとおっしゃっておいででしたので、牢獄に幽閉しているだけです」

「そうであったな………よし、その連中のところに、さっそく足を運ぶとしよう!」

「(…どうやら、公国にも………いや、私にも運が向いてきたようだ…)」

 領事は不敵な笑みを浮かべながら、アコード達が捕らわれている牢獄へと足を踏み入れたのだつた。

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