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Valkyrie of Moonlight~月明りの剣と魔法の杖~   作者: 剣世炸
Episode8「聖遺物を求めて」
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第22話~新大陸へ~

”アルモ様。間もなくセレスタ大陸付近に到着します”

 月明りの冠を手に入れた俺たちは、月明りの丘を後にし漆黒の翼に戻った後、すぐに月明りの鎧が眠るというセレスタ大陸へと移動を開始。それから数日の後、大陸上空へと差し掛かっていた。

「ステラ。セレスタ大陸の拡大図を表示してもらえる?」

”はい!”

”ピピピ”

 高い機械音と共に、コックピットのモニターが、ステラの姿からセレスタ大陸の拡大図へと変化する。

”セレスタ大陸は、タマーン大陸の陸地の約2倍の広さがあり、東西で国が二分されています”

「タマーン大陸の北部は教団本部がある山岳地帯だから、陸地は確かに少ないよな…」

「ステラ。その東西の国の情報は?」

”はい。同盟本部から情報が送られてきています。今、その情報を反映させますね”

”ピピピ”

「…東には……元々セレスタ大陸全土を支配していたセレスタ王国が、西には………セレスタ王家から分離した、ザパート連合公国があるようね」

”セレスタ王国は、元々三日月同盟の支援国で、クレス様の鎧を管理しておりました。ですが、セレスタの王族から、教団側に着いた裏切り者が現れ、クレス様の鎧の管理を独占しようとしたようです”

「教団が、セレスタへの布教のために、王族をそそのかしたって訳か…だが、聖遺物アーティファクトって、クレスか、クレスの血を引く者しか使えない筈では!?」

”確かにその通りなのですが、アーティファクトを所有・管理していることが、彼の国では権威の象徴として扱われるようになったようです”

「いつの時代も、人間って生き物は変わらない訳ね…」

”その裏切り者は、家族兄弟を全てその手で殺め、王家を継承しようとしました。ですが、それに対し西側に領地を有していた諸侯が反発し、ザパート連合公国として独立。数十年の戦いを経て、領国の境界線上に鎧の保管場所を設け、互いの兵を派遣し、鎧の監視を続けているとのことです”

”ザパート連合公国が成立した際、クレス様の鎧を私利私欲のために利用しようとしたセレスタ王国と三日月同盟は手を切り、支援対象をザパート連合公国と定めました。故に、連合公国の首都で、大陸の最西端にある都市バルデワに行き、情報収集を行うのがよろしいかと思います”

「バルデワ……私が主様にお会いする前、盗賊家業に憂き身をやつしていた頃に聞いた名だ」

「盗賊時代のレイスが……一体、どんな都市なんだ?」

「ザパート連合公国は、その名の通り多くの公国………領主がそれぞれに自治権を持つ小さな国が集まって作られた国だ。その中で、連合公国の首都となっているバルデワは、シティシーフ、つまりバルデワが公式に雇っている盗賊が存在する国だ」

「国が盗賊を雇う………その目的は?」

「情報収集だよ。通常、多くの国には諜報機関があり、その活動で周囲の国々の情報を掴むことが多い」

「でも、公国は小さな国だし、ましてや旧セレスタ王家から独立した国だから…」

「大国のような体制を作るのが難しい、ということだな」

「その通り。バルデワは、盗賊を雇い入れることで、連合公国の諜報活動を行っている、ということさ」

「それなら、情報を収集するにはちょうど良いってことだな」

「ああ。幸い、バルデワには私の旧知の友人も居る。まずは、そこを頼りにするのはどうだろうか?」

「…決まりだな」

”皆さま、セレスタ大陸に到着しました。都市バルデワから少し離れたところに、本艦は停泊致します”

「ステラ、頼んだわね」

”かしこまりました”


***


“ヒュゥゥゥゥゥゥゥ…”

 吹き飛ばされない程度の、それでも爽やかに感じる風が私を包み込んでいる。

 ステルスの機能を維持したままの安定航行に入った漆黒の翼の船内で、私たちは安全ベルトから解放され、目的地である都市バルデワ付近に到着するまでの間、自由時間となり、私は風を浴びようと甲板へと足を運んだ。

 季節は夏を迎えようとしていて、南部に位置するセレスタ大陸は、青々とした木々に覆われていた。

「…タマーンに行こうとしていた時のことを、思い出すな…」

 気づくと、隣には私の愛する人がたたずんでいた。

「…君がもし敵だったら、私の命は今ないわね」

「そうだな…それだけ、俺の気配を受け入れてくれているってことだろ!?」

 私は月明りの冠をおもむろに頭から外すと、彼の肩に寄りかかった。

「…私、もう君がいないと、ダメなのかも知れないわね」

「英雄クレスの子孫である貴女にそこまで言われるとは、光栄の至りであります」

 右手を腰の左あたりに置き、軽く会釈をする彼。

「私は、本気で言っているんだからね!!」

「冗談だよ、アルモ!」

 そう言って遠くを見る彼の横顔は、『俺もお前と同じ気持ちだ』と言っているように見えた。

「残る聖遺物アーティファクトは、鎧と靴、そしてワイギヤの杖だな」

「これまで以上に、厳しい戦いになるわ。私、君のこと、絶対に守ってみせるから!」

「それは、俺も同じだよ。きっとアルモのことを、守り切ってみせる!」

 突然、視界が暗くなると、唇に心地よい暖かさが伝わってくる。

「ありがとう!アコード!!」




 翌日、漆黒の翼は都市バルデワから徒歩で1時間程度の場所に停泊した。

 そして私たちは、月明りの鎧を求めて、セレスタの地に足を踏み入れたのだった。

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